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【むしろSクラス以上?】メルセデス・ベンツEQS試乗 新世代の頂点を体感

掲載 更新 10
【むしろSクラス以上?】メルセデス・ベンツEQS試乗 新世代の頂点を体感

スイスで試乗 EQブランドのSクラス

text:Toshimi Takehana(竹花寿実)

【画像】メルセデスの2つの頂点【伝統のSと新世代のEQSを比較】 全167枚

editor:Taro Ueno(上野太朗)

2020年3月に世界中で新型コロナウイルスのパンデミックが起きてからというもの、国際試乗会はまったくおこなわれなくなった。

世界中の自動車メーカーは、それでも世界中のメディアに最新情報を届けようと、オンラインイベントを積極的におこなっているが、やはり限界がある事は明白。

なんとかフィジカルイベントを実施できないかと試行錯誤を続けていた。

メルセデス・ベンツもそんなメーカーの1つで、ついに7月に「コロナ後初」の国際試乗会をスイス・チューリッヒで開催。わたしは幸運にも日本から参加する機会に恵まれた。

今回試乗したのは、メルセデス・ベンツEQSである。

4月に上海オートショーで発表されたこのモデルは、メルセデス・ベンツのEVサブブランドである「EQ」が世に送り出す、初の純電動ラグジュアリーセダンだ。

その存在が明らかになったのは、2019年9月に開催されたフランクフルトモーターショーで、この時にお披露目されたコンセプトカーのヴィジョンEQSは、「ほぼこのままの姿で発売される」とアナウンスされたが、実際に市販バージョンはほぼ変わらない姿で登場した。

「EQブランドのSクラス」であるEQSだが、新型Sクラスとメカニズム面の共通点はほぼ無い。

「MB.EA」と呼ばれる新開発の電気自動車向けモジュラーアーキテクチャーを採用したBEV(バッテリー式EV)専用モデルである。

頂点の「S」名乗る 妥協なき専用設計

メルセデス・ベンツは、これまでにもEQCやEQV、EQA、EQBとBEVをリリースしているが、それらはGLCやVクラス、GLA、GLBの車体をベースにBEV化したモデルである。

もちろんこれらのBEVは、もともとBEV化を見越したプラットフォームを使用しているので、無理矢理作ったというワケではない。

だが専用設計でないため、BEVとして理想的とはいえない部分があるのは否めない。

ICEの搭載も考慮されたプラットフォームを採用したBEVは、まずバッテリー搭載方法の点で自由度が低い。

もちろんフロア下を中心に搭載されているモデルがほとんどだが、それだけではBEVとしては不十分なため、ラゲッジ容量や前席シート下などが犠牲になる事が大半だ。

衝突安全性についても、BEVはICE搭載車とは搭載するコンポーネントも重量配分も異なるので、クラッシャブルゾーンの作り方も変わってくる。

専用設計の方が望ましいのは明らかだ。

BEV専用プラットフォームであれば、車両重量の点でもICE搭載モデルのために必要とされた部分を省くことができ、最小限に抑えられる。

またエアロダイナミクスの点でもBEVとして最適な設計が可能となり、結果、エネルギー消費量削減に繋がり、BEVのネックとなっている航続距離の拡大が可能となるのである。

EQSの開発にあたり、メルセデス・ベンツは、BEV専用アーキテクチャーであるMB.EAを採用することで、ラグジュアリーEVとして性能、安全性、実用性、そして快適性の点で、妥協したくなかったのだ。そこはやはり「Sクラス」なのである。

今後の世界標準「MBUXハイパースクリーン」 

果たして量産仕様のEQSは、とても個性的で非常に新しさを感じさせるルックスである。

デザインの基本思想は、これまでどおり「センシュアル・ピュリティ(官能的純粋)」だが、「ワン・ボウ(ひと張りの弓)」ラインとキャブフォワードでファストバックのシルエットを持つEQSは、従来のICE車と明らかに異なる存在感を放っている。

インテリアは、まさにSクラスと呼ぶに相応しい高級感に溢れているが、インパネ全面が「MBUXハイパースクリーン」という巨大なディスプレイとなっている点がSクラスとの最大の違いだ。

オプションで選択できるこれは、ドライバー正面の12.3インチTFTディスプレイと、中央の17.7インチOLEDタッチディスプレイ、助手席正面の12.3インチOLEDタッチディスプレイを1枚のゴリラガラスで覆って一体化させたものである。

MBUXのシステム自体もAIによる高度な学習機能により、必要な機能が必要なときに表示される「ゼロレイヤー」を実現。

実際には完全にレイヤー(階層)がないわけではないが、とても直感的に使え、デジタル統合型のインフォテインメントシステムとして、抜群に使いやすいものに仕上がっていると感じた。

今後、世界の自動車メーカーやサプライヤーは、このMBUXハイパースクリーンをベンチマークにする事は間違いないだろう。

Sと変わらない? むしろ「S以上」実現?

今回は、2022年秋頃に日本市場に導入予定の後輪駆動モデル「EQS 450+」を中心に試乗したのだが、走りの上質感は新型Sクラス以上かもしれない。

加減速の滑らかさ、しっとり滑らかなステアリングフィール、しなやかな足まわりとフラットで優しい乗り心地、優れた静粛性と、何もかもが最上級ラグジュアリーサルーンに相応しいレベルにある。

とくに静粛性の高さはSクラスをこえていると感じた。

徹底的に遮音、防音が図られているのはもちろん、ドアミラーの形状を決めるためだけに200時間以上の風洞実験をおこなったというほど、ディテールを徹底的に詰めることで実現したCd値0.20という、量産車世界最高のエアロダイナミクスがもたらす風切り音の少なさは驚異的。

エンジニアは「Sクラスと変わらない」といっていたが、実際にはエンジン音もないので、まさに静寂が感じられる空間を実現していると思えた。

動力性能ももちろん非常に高い。EQS450+は、最高出力333ps、最大トルク58.0kg-mで、0-100km/h加速6.2秒、最高速度は210km/hに制限される。

その加速は、車両重量が2480kgもある事などまったく感じさせないほどパワフルで、しかもアクセルペダルの操作にリニアで唐突感がなく、とても自然だ。

ハンドリングも、全長5216mm、全幅1926mm、全高1532mm、ホイールベース3210mmと大柄なボディを意識させない軽快感と正確性を披露。

後輪が最大10°(標準仕様は4.5°)も切れるリアアクスルステアリングにより、取り回し性も良い。

後席の住人になるのも良いが、ドライバーズカーとしても十二分に楽しめるクルマに仕上がっているといっていいだろう。

しかも、107.8kWhもの大容量リチウムイオンバッテリーを搭載(充電は最大200kWに対応)し、WLTPで最大780kmもの航続距離を実現しているEQSは、BEVを所有できる環境にある人にとっては、ファーストカーとしてもまったく問題ないだろう。

メルセデス・ベンツは、ICE車で長く世界のベンチマークとされてきたが、BEVでも世界のベンチマークであり続ける事になりそうだ。

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