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“アップ&ダウン”が激しい2018年シーズン、後半戦の苦境脱出に必要なふたつの鍵【トロロッソ・ホンダF1 中間展望編】

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“アップ&ダウン”が激しい2018年シーズン、後半戦の苦境脱出に必要なふたつの鍵【トロロッソ・ホンダF1 中間展望編】

 2018年シーズン前半戦のトロロッソ・ホンダを一言で表わすとすれば、“アップ&ダウン”という言葉が最も相応しいのではないだろうか。

 第2戦バーレーンGPと第12戦ハンガリーGPでは中団トップの4位と6位でフィニッシュしたが、その一方で第4戦アゼルバイジャンGPや第11戦ドイツGPでは2台揃ってQ1敗退を喫するなど、良い時と悪い時の差が激しいのが前半戦のトロロッソ・ホンダだった。

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 コンマ数秒をマシンからきちんと引き出せるかどうかで中団グループの一番上から一番下まで一気に変動してしまうほどに2018年の中団グループの争いは激しく僅差だったということでもあるが、その中でもライバルたちに較べればトロロッソ・ホンダの“アップ&ダウン”は激しかったように見えた。

 その原因は、マシン特性とセットアップ能力にあったのではないだろうか。

 常に中団グループの上位につけていたハースのロマン・グロージャンは、中団での戦い方をこう語っていた。

「マシン特性とコース特性によって勢力図に変動はあるし、これだけ僅差の中では当然のことだ。そんな中で、僕たちはクルマのベストを引き出すことに集中するだけだ。それで(中団トップの)7位・8位になれれば良いし、そうでなかったとしても自分たちのベストを尽くした結果がそうなのだとしたら仕方がないと思える」

 中団グループの中で何位になれるかは、ライバルと較べて相対的に速いか遅いかで決まる。しかしライバルがどれだけ速いかは自分たちで決められるものではないのだから、重要なのはライバルと較べて何位になれるか考えることではなく、自分たちがマシンのポテンシャルを最大限に引き出すことだというわけだ。

 そういう意味で言えば、トロロッソ・ホンダがマシンのポテンシャルをフルに引き出せたのは前述の2つとモナコGPくらいのもので、それ以外のサーキットではマシン性能を引き出すことに苦戦していた。マシンバランスが悪かったり、グリップ不足であったり、新開発パーツが上手く機能させられなかったり、トラブルが起きたり、事故に巻き込まれたり、予選でトラフィックに引っかかったり、レース戦略が上手く行かなかったりと、様々な要因で実力を100%フルに発揮して結果に繋げることができなかった。

■ポイントが獲得できない最大の要因とは


 最大の要因は、セットアップ能力だ。バーレーンやハンガリーがそうだったように金曜の走りだしがスムーズな時は日曜まで良い流れでいけるものの、イニシャルセットアップが外れていると迷走してしまい、挽回することができない。

 車体の空力性能が不充分でなおかつ非力なパワーユニットを搭載していることが、セットアップを難しくしたのも事実だ。パワフルなエンジンがあればそれだけダウンフォースが付けられるが、非力なエンジンではウイングを立てることができず、セッティングの幅が狭くなってしまうからだ。

 車速の伸びを見ても、ルノー勢よりも劣っていたという。しかしそれはパワーやトルクの問題というよりも、空力セッティングによるところが大きかったとあるチーム関係者は語る。

「ウイングを立てていなければ、車速はスムーズに上がっていく。ということは車体本来の空力効率が悪いわけではないし、パワーもルノーに較べて劣っているわけではない。しかしウイングを立てなければクルマがまとまらないから、ああするしかない」

 前半戦は、マシン開発の停滞も苦戦の要因になった。オーストリアGPに投入した新型フロントウイングはデータ上ではダウンフォース増が確認できたにもかかわらず、コーナリング中のバランス変化が過敏で結局最後まで使いこなすことができなかった。パワーユニットもカナダGPにスペック2を投入してからの進歩は乏しく、フェラーリ勢飛躍の鍵となった予選スペシャルモードも未だに実用化できていない。

 その結果、トロロッソの車体はモナコGPから、そしてパワーユニットはカナダGPからほとんど進化がないままシーズン前半戦を終えてしまった。

 ある意味では、トロロッソ・ホンダはマクラーレンと似たような状況にあったと言えるだろう。マクラーレンもスペインGP以降のマシン開発が停滞し、中団グループの中で相対的なポジションをズルズルと下げていった。ホンダとルノーの出力はほぼ同じで、ウイングを立てなければ走れないのも似ていた。

 しかしトロロッソ・ホンダが12戦で5回しか入賞できなかったのに対し、マクラーレンは11回も入賞を果たしてトロロッソ・ホンダの倍近いポイントを稼いでいる(トロロッソ28点、マクラーレン52点)。

 それはマクラーレンがレース戦略も含めて自分たちの能力を最大限に引き出し、結果に繋げてきたからだ。その中で、8回の入賞を果たしているフェルナンド・アロンソのドライビングとレースをまとめ上げる力も大きな役割を果たしていることは揺るぎない事実だ。

 トロロッソ・ホンダは全てが上手くまとまれば中団トップに立てる力があったにもかかわらず、それを安定して発揮することができなかった。それが“アップ&ダウン”の激しさにつながった。常に実力をフルに引き出せていれば、マシンパッケージの特性的に苦手とするサーキットでも、中団トップとまでは言わずとも2台揃ってQ1敗退などということはなかったはずだ。

■後半戦からさらに激しくなるトロロッソ・ホンダの中団争い


 ランキング9位のザウバーでさえも、セットアップを見直しマシンバランスが改善した中盤戦以降の安定感ではトロロッソ・ホンダを上回り、入賞回数は8回を数えている。バーレーンとハンガリーという2度の大量得点がなければ、ザウバーに逆転されていてもおかしくなかった。

 最高位4位、ランキング8位でシーズン前半戦を終えたトロロッソ・ホンダだが、後半戦はさらなる苦境が待ち受けている。

 後半戦に向けて、ホンダはパワーユニットの開発方針をやや変更し、スペック3の投入はシーズン終盤になる見込みだ。細かなアイテムを夏休み明けに間に合わせるよりも、2019年を睨んでより本格的なものを完成させ、細かな一歩を刻むよりも大きな一歩で2019年に向けた基礎固めをしたいからだ。

 そのためしばらくは現状のパワーのままで戦わねばならず、特に夏休み明けの高速連戦では苦戦を強いられるだろう。だからこそ、できることならば予選スペシャルモードを実戦投入し、手持ちのRA618Hスペック2の実力を最大限まで引き出したいところだ。

 車体側でも、前半戦にセットアップが上手く行かなかった原因をきちんと究明してマシンに対する理解を深め、新型フロントウイングをきちんと機能させて持てるパッケージの性能をフルに引き出せるようにしなければならない。

 サーキット特性やライバルたちといの力関係に左右される結果の“アップ&ダウン”はともかく、自分たちが引き出す実力の“アップ&ダウン”をなくすこと。それがシーズン後半戦のトロロッソ・ホンダに課せられた使命になるだろう。

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