アメリカンスポーツカーのシンボル的存在でもあるコルベットの8世代目が、いよいよ路上を走り始めた。シリーズ初のミッドシップレイアウトや、完全新設計のシャシー、シボレー初の8速DCTの搭載などトピックスにはこと欠かないが、ニッポンのカスタマーにとってもっとも嬉しいニュースは、やはり右ハンドル仕様の導入になろうか。早速、第一報をお伝えしよう。
最高速度は320km/h、0→60マイルは2.9秒
【スクープ】ついにプラグインHV仕様が? 謎の新型「シボレー・コルベット」開発車両をキャッチ!
初代=C1の登場から数えて66年、8代目=C8となる新型コルベットがこの2月より、いよいよアメリカでデリバリーが開始された。市販モデルとしてはトヨタ・クラウンより、スポーツカーとしてはポルシェ911よりも長い歴史を同じ名前で紡いできたこのモデルが今回採ったのは、史上最も革命的なフルモデルチェンジだ。
すでにご存じの方も多いだろう、伝統のフロントエンジン・リアドライブからリアミッドシップへとパッケージを改めたその最大の理由は、昨今のスーパーカーリーグを中心としたパワー競争にまつわる駆動性能確保が限界に達していたこと、並行してGTEやGT3カテゴリーのレーシングモデルでも同様の悩みを抱えていたことにある。5代目以降はトランスアクスルを採用して対処したものの、いよいよ抜本的な変更が求められるに至った、性能要件からいえばFRはもう究めきったということでもあるだろう。
長き歴史の中でも常にミッドシップへの模索を繰り返してきたコルベットは、先代C7が登場した2014年にはすでにホールデンのライトトラックの荷台を活かしたミッドシップのテストベッドを作り上げ、その検討を開始したという。そして2016年には基本寸法をすべてフィックスした試作車を完成、2017年には量産試作に準じた試作車にスイッチしていたというから、5年余の開発期間の大半は走り込みに費やされている。
シャシーアーキテクチャーはC1からの伝統だったフルフレーム構造から、多くのスーパースポーツが採用するアルミスペースフレーム構造となり、単体比でC7に対して約20%の剛性向上を果たしている。また、サスペンションではC2以降採用されていたリアのコンポジットリーフスプリングを横置きする独特の構成を改め、オーソドックスなコイルオーバー式となる4輪ダブルウイッシュボーンが採用された。
一方でグレードや装備についてはコルベットの伝統が踏襲されており、運動性能を高めるZ51パッケージでは電子制御メカニカルLSDや強化されたコイル&スタビライザー、第四世代のマグネティックライドダンパー、大径ディスク&ブレンボブレーキシステムなどが配される。日本仕様については全グレードにこのZ51パッケージが標準装着される予定だ。
C8に搭載されるエンジンは従来からのOHV V8を継承。LT2のコードを持つ6.2L自然吸気のスモールブロックユニットは、当然ながら中身はC8に合わせて各部が徹底的にリファインされたものだ。潤滑はグレードを問わずドライサンプに統一され、1.25Gの横加速力が定常的に加わっても油膜切れを起こさないようにスカベンジポンプを3基配するなど冷却系も入念に手が加えられている。その最高出力は495hp、最大トルクは637Nmと、C7世代のLT1に対して若干ながらパフォーマンスも向上した。
トランスミッションはGM傘下のトレメックとの新規共同開発となる8速DCTを採用。ローンチモードも備えるこのギアボックスとの組み合わせで最高速度は約320km/h、0→60マイルは2.9秒の動力性能をみせる。これは650hpを発揮するスーパーチャージドV8を搭載したC7のZ06に比べても同等以上の数値だ。ちなみに、Z51パッケージを装着したC8はすでにノルドシュライフェを走っており、非公式ながら7分29秒台のラップタイムをマークしているという。すなわち日本仕様は全量このスペックでデリバリーされるということになる。
新しいシャシーはまさに余裕綽々
右ハンドル仕様も用意されるというC8は、乗降性にも一切の癖はない。ただしサイドインテークとノブを兼ねた造形のドアの厚みが、狭い場所でのアクセスに影響しそうという懸念はある。
特徴的なスイッチレイアウトの内装ではあるが、操作自体にトリッキーなことはなく、収まってしまえば慣れるのは早かった。上下をフラットにデザインしたステアリングによってHUDの視認性は大きく向上、計器類やインフォテインメントのグラフィックも明快で直感性も高い。何より、キャブフォワード&ローカウル化によって得られた前方視界の良さ、フェンダーの峰が示す車幅感覚の掴みやすさはこのデザインの美点だろう。ただし、後方の直接視界は見た目の通りで相当に厳しい。
C8のタウンライドでともあれ驚かされるのは乗り心地の良さだ。とりわけスポーティなZ51パッケージでさえ、凹凸や段差などのアタリは至って丸く、轍や大きなうねりなどに遭遇しても進路を乱されることもない。懸架方式の変更もあって、コルベットの癖ともいえたロール方向の小さな揺れも激減しフラットなライド感をみせてくれる。ドライブモードがツアーであれば、スポーツサルーンもかくやの柔軟性をみせてくれるという印象だ。
まったく新しいパッケージ、そしてシャシーはエンジンパワーを余裕綽々で受け止め、件のトラクション不足を感じる場面はほとんどない。仮に駆動輪がブレークする状況でもESCが素早く介入し、先代とはレベルの違うボディコントロールをみせてくれる。
あまりにも安定しているがゆえに遅くさえ感じるが、Gメーターを確認すれば1.3G程度の旋回でも後輪側はどっしりと粘っていて破綻の兆候も伺わせない。そこからの滑り出しもミッドシップとしてはかなり穏やかで、修正の応答も優しい。ムービングパーツを下方に置いたコンパクトなOHVをドライサンプで積めば、ここまで低重心なパッケージに仕上げられるものかと感心させられる。
そしてコルベットらしさを思い切り感じさせるのもまた、このスモールブロックV8が奏でる独特のメカニカルサウンドやエキゾーストノートだ。高回転域だけではなく低回転域にも十分な旨味がある、このエンジンがあってこそ、C8が自らの出自や個性を鮮明に示せるのだと実感させられた。
【Specification】シボレー・コルベット
■全長×全幅×全高=4630×1934×1234mm
■ホイールベース=2722mm
■トレッド(前/後)前1648、後1586mm
■車両重量=1530kg
■エンジン型式/種類=LT2/V8DOHC32V
■内径×行程=103.25×92.0mm
■総排気量=6200cc
■圧縮比=11.5
■最高出力=495 hp(369kW)/6450rpm
■最大トルク=637Nm(64.9kg-m)/5150rpm
■トランスミッション形式=8速DCT
■サスペンション形式=前後Wウイッシュボーン/コイル
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前245/35ZR19(8.5J)、後305/30ZR20(11J)
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みんなのコメント
買えはしないが欲しいなぁとは思った。