「ワークス」とは自動車メーカー系のレーシングチームなどを指す言葉。カスタム&チューニングに世界で「ワークス」というと自動車メーカー系のパーツメーカーを指し、今回紹介するTRDやSTI、NISMOというわけである。
◆あえての先代86に最新パーツを開発して楽しさを広げていく
TRDはモータースポーツファンを増やすべく、競技パーツを中心にリリースしている。そこで今回は『ヤリス』と先代『86』のチューニングカーを持ち込む。86は後期型のGTグレード。TRDのエアロパーツをまとい、TRDの車高調を装着する。あえて先代とするのは中古車市場でリーズナブルに買えることと、GR 86に比べるとアンダーパワーだからこそエンジンをブン回す楽しみがあるから。そこでその楽しさを伸ばすべく、機械式LSDをセット。ボディはTRDのモーションコントロールビームで、固めるのではなく剛性バランス最適化している。
エアロパーツからパフォーマンス向上まで! 無限のN-BOXカスタム革命
クローズドコースで走ると痛快そのもの。アクセルをしっかりと踏めばリアタイアはスライドし、そのコントロールを楽しむことができる。まもなく発売となるオリジナルバケットシートは滑りにくい表皮こだわり、TRDらしい赤いラインを入れたもの。サベルト製6点式シートベルトとともにセットされている。
ヤリスはワンメイクレースにも使われている1.5Lの6MT車。そこにジムカーナスペックダンパーを装着。こちらは50mm車高が下がっていて、それなりに引き締められている。そこに組み合わせるエンジンは基本ノーマルだが、フライホイールをTRDの試作軽量品に交換。約35%軽くなっていることで発進から気持ちの良いレスポンスを実現。クローズドコースでは全開で飛び込んでから奥で曲げるようなジムカーナ的なキビキビした動きを感じることができた。ややおとなしい印象のヤリスには軽量フライホイールは刺激が高まりピッタリに感じられた。
◆普段乗りのフィーリングを大きく高めるNISMO SPORTS PARTS
NISMOは『スカイラインNISMO』にNISMO SPORTS PARTS装着車両を持ち込んだ。装着パーツは機械式LSD、車高調サスペンション、チタンマフラー、ブレーキパッドとアルミホイールだ。
スカイラインという車の特性上、サーキットを走って遊ぼうというわけではない。しかし、400psの強大なパワーをしっかりと路面に伝えるにはLSDがあった等が適当と考え、機械式をチョイスしたという。そのスペックはメタルプレートでON20度/OFF20度。機械式としてはかなりカム角が緩めで、なめらかに効くタイプ。減速側も効くのでコーナリング時にリアの安定感を高めてくれる。
クローズドコースで多めにアクセルを踏んでみるとしっかりと駆動が掛かっていることが確認できる。それでいて普段乗りではその装着感はほぼない。いわゆる昔ながらの機械式LSDのようなバキバキとした作動音や、曲がりにくくなるようなきついセッティングではない。
組み合わせられるサスペンションはオーリンズ製をベースにオリジナルセッティングを施したもの。これが車高調とはいえ、ノーマルのようなしなやかさを実現。車高はプロパイロットの絡みもあって車高ダウン量は10mm。減衰力は手動調整となり、取り付けもパフォーマンスセンターや大森ファクトリーのみとなる。
これが素晴らしくしなやかに仕上げられている。オーリンズらしいフリクションの少ないスムーズな動きながら、適度に減衰力が効いているので快適にコーナリングもできるし、段差なども快適に超えることができる。
そして、その動きは軽量なチタンマフラーと鍛造アルミ製のホイールによって作られる。マフラーはノーマルの約半分の10kg。ホイールは1台分で15kgの軽量化が可能で、合計で25kgも軽くなっている。しかも、15kg分はバネ下部分なのでよりその効果は大きい。そんなトータルで味付けされたスカイラインNISMOはより痛快度が増している。
◆ドライバーの意思が的確に伝わるSTIのパーツ群
STIは「運転が上手くなるクルマ」を目指す。とは言っても大リーグボール養成ギブスのようなものではなく、クルマをもっと扱いやすくすることでドライバーの意思が的確に伝わるクルマにしようという狙いだ。
そこでポイントになるのが微小操舵時の内輪の使い方だという。文字にするだけだとわけがわからないが、要約するとステアリングの切り始めからのクルマの動きにこだわるということ。
これは古くからSTIが取り組んでいるテーマで、ステアリングを切ってからクルマの反応が遅れると「曲がらない、もっと切らなきゃ」とステアリングを切ってしまい、クルマがグランと動いてから「あ、切りすぎた」とステアリングを戻してしまう。これを繰り返すことで、クルマは安定せずについフラフラとしてしまう。ところがステアリングを切った瞬間からスムーズに反応してくれれば自然と必要な量だけ切ることができる。すなわちクルマはなめらかに走るようになり、運転が上手くなったと感じられるのだ。
そこでその微小な操舵時にクルマを反応させるために大切なのが内輪だという。コーナリングや交差点を曲がるときに外側のタイヤである外輪が先行して動く、そこだけが潰れてギクシャクした動きになる。そこで内輪が先行して動くことで遅れのない素直な挙動になるという。
その内輪の力は一瞬しか発生せず、その一瞬の力を効率良く使うには車体剛性の均一化が欠かせないという。つまり、タワーバーや補強プレートなどで一部を固めるのではなく、ボディ全体のバランスが必要になるのだという。そこで提案するのがフレキシブルタワーバーと、フレキシブルドロースティフナーなのだ。
タワーバーは左右をつなぐ中心部がボールジョイントになっている。ストラットタワーの左右をつないで剛性をアップさせるのではなく、必要な力だけを伝えてそれ以外はボールジョイントが逃がすようになっている。フレキシブルドロースティフナーは今回のクロストレックではリアフレームの後端を左右に引っ張っている。フレームに力を掛けておくことで、曲がろうとしたときにボディがよじれてからリアタイヤのグリップが発生して曲がり始めるが、それまでのタイムラグを無くそうという狙いなのだ。
今回は比較車両がなかったのが残念だが、ステアリングの切り始めた初期からクルマが自然に曲がり始めるフィーリングは感じられ、乗りやすさとスムーズさが高まっていると感じた。
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