日本市場では商標の関係で「ルーテシア」と呼ばれるルノー「クリオ」(以下、ルーテシアと記す)は、フランス本国ではつねに販売台数トップを走るベストセラーだ。
8時間時差のある日本から、カルロス・ゴーン元会長の保釈が決定したという報せは、ちょうどプレス・コンファレンス直前のタイミングで入ってきただけに、ルノー幹部の耳にも入っていただろう。
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しかし元会長の疑惑が、黒い影としてルノーにつきまとうことはない、とまるで言外に仄めかすように、ティエリー・ボロレ代表取締役は新型ルーテシアのプレゼンに淡々と集中していた。「すべての乗員が快適に、容易に過ごせる良質のコンパクトとして、今だかつてないレベルを実現した」と。
プレゼンは、これまでとおなじくBセグメント・コンパクトのベストセラーたらんという意志を表明しつつ、ルノーの歴史がすでに新しいページに入ったのを象徴するかのようだった。
新しいルーテシアは全幅こそ約70mm拡大されたが、全長と全高はすこし短くなり、車重は従来比で50kgほどのダイエットに成功している。横幅以外はほぼキープといえるディメンションながら「アスリート・スポーツ」をテーマとしたエクステリアのデザインは、よくいえば先代からの正常進化、悪くいえばどう変わったのか分かりづらい。とはいえルノーによれば、新しいクリオのエクステリアは100%新設計で、重心も下がっているという。
デザイン本部長のローレンス・ヴァン・デン・アッカー氏が強調した通り、新型ルーテシアのポイントは、インテリアの質感と快適性の向上にある。大型のタッチパネルは縦長にダッシュボード上部に配され、現行より高くなったセンターコンソールは、ドライバーズシートに座った際のパーソナル感を強める。
かくして手元の操作類のエルゴノミーを改善すると同時に、視覚面ではステアリング奧のメーターパネルが液晶化された。太いシフトレバーの手ごたえや握った感じもBセグメント・コンパクトとは思えない剛性感に満ちている。さらに、収納スペースは先代比で26%も増えた。シートも快適性方向で設計が見直されるなど、実用性と快適性は相当高められたように思う。
注目のパワートレーンは、同時に発表された新型プジョー208がピュアEVを用意してきたのとは対照的に、内燃機関のみの発表だった。新型ルーテシアは直列4気筒ターボエンジンの1.3リッター「TCe130」と7速EDC(エフィシェント・デュアル・クラッチ)を筆頭に、3種類の1.0リッターガソリンエンジン、2種類の1.5リッターディーゼルエンジンから選べる。ディーゼルエンジンはいずれもマニュアル6速のみの設定なので、日本仕様は1.3TCe 130ps・240Nmのみの展開が予想される。
なお、2020年にはプジョー208が手を出さなかったハイブリッド・バージョンの市販が予定されているそうだ。
「E-TECH」と名づけられたハイブリッド・システムは、ルノー日産アライアンス起源の1.6リッターガソリンエンジンに大小2つのモーターを組み合わせた、ルノー独自開発によるなかなかの野心作だ。シリーズ式とパラレル式、どちらも機能し、1.2kWhの控えめな容量かつ軽量バッテリーにもかかわらず、市街地走行の約80%をフルEVモードでこなせるという。メカニズムも制御も完成の域にあり、現在は耐久性や型式認証対策の段階だそうだ。
パッと見では新しさに気づきにくい新型ルーテシアであるものの、確実に変化への舵を切ったルノーの今後を担う、注目モデルであった。
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