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これぞ世界のスタンダード──新型フォルクスワーゲン・ゴルフ試乗記

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これぞ世界のスタンダード──新型フォルクスワーゲン・ゴルフ試乗記

ビッグマイナーチェンジを受けたフォルクスワーゲン「ゴルフ」に、小川フミオがドイツ本国で乗った!“8.5”の進化に迫る。

走りは実にスムーズ

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永遠のベストセラー、フォルクスワーゲンのゴルフが、ビッグマイナーチェンジを受けた。ドイツでの発表は2024年1月だが、ようやく乗れたのは7月の末。待ったかいがある、ドライブが楽しい!

私がフォルクスワーゲン本社のあるドイツ・ウォルフスブルグからハノーファーのあたりで試乗したのは、ゴルフeTSIだ。マイルドハイブリッドシステムをそなえた1.5リッターエンジン搭載の前輪駆動モデルである。

いまのゴルフは第8世代なので、今回のマイナーチェンジ版をして“ゴルフ8.5”などとジャーナリズムでは呼称している。「ムーンストングレイ」という、最近のゴルフの人気色で塗られたボディの輪郭は継承しているが、あたらしくなった点は下記のとおり。

・(ベースモデルは81kWの1.0eTSIエンジンを廃止し)1.5eTSIエンジンを新採用。
・フロントバンパーの意匠変更。
・ヘッドランプとリヤコンビネーションランプの意匠変更で、よりシャープな印象を強調。
・LEDマトリックスヘッドライト「IQ.ライト」には、500mの照射距離を持つハイパフォーマンスメインビームを採用。
・イルミネーション付きVWエンブレムを採用。
・インフォテインメントシステムは第4世代のMIB4へと進化し、(欧州などでは)ChatGPTがボイスコントロールシステムに統合。
・使い勝手を考慮し、エアコンの温度設定などのタッチスライダーにバックライトを追加。

走らせた印象は、ゴルフの長所であるドライバーとの一体感がしっかり感じられるもの。マイルドハイブリッドシステムの48V(ボルト)モーターは発進時や加速時にトルクを積み増して、モタモタした印象を払拭しており、かつアクセルペダルを強く踏み込む必要がないため燃費にもいい影響が出ていそうだ。

加速はスムーズで、実はゴルフのラインナップ中もっともおとなしい85kW(115ps)仕様だが、ドライブしていると“もっともおとなしい”という先入観はいつのまにか吹き飛んでいる。

静粛性が高いので速度感がいまひとつ実感されないが、やや重めのアクセルペダルを踏み込んでいくと、あっというまにアウトバーンの制限速度である130km/hに達する。速度無制限区間では、(いちおう遠慮して)160km/h程度にとどめたが、それでも「もっと走れ」と、クルマが促しているような気すらした。

このとき感心したのは、運転支援システムだ。ゴルフには(日本仕様と同様)アダプティブクルーズコントロール(ACC)とレーンキープを統合制御する「トラベルアシスト」がそなわっていた。クルマがアクセル、ブレーキ、ステアリング操作をサポートする機能である。

加えて交通標識認識機能(TSR)が備わっていて、システムを稼働させていれば、アウトバーンでも一般道でも速度標識を読み取ると、自動で速度を調整してくれる。これが大変便利だ。

運転支援システムの高い完成度さらに試乗したゴルフには「プリディクティブACC」という機能も搭載されていた模様。ナビの地図データなどを読み取り、走行先にカーブなどがあると自動的に速度を落とす機能だ。

アウトバーンでは制限速度がめまぐるしく変わる。100km/h、90km/h、60km/hが入れ子のように出てきて、さらに無制限区間が加わる。こういうときも、プリディクティブACCは突然速度を落とすのではなく、すこし手前からスムーズに減速していく。かったるくもなく、自然で、感心させられた。日本でも欲しい。

ドライバー席にいる私のやることは、周囲と後方への注意と、ハンドルを軽く握っていることだけ、と、いってもいいぐらいだ。

さきに触れたとおり、今回から「IQ.ライトLEDマトリックスヘッドライト」なるオプションの機能が向上。これまで以上に遠くまで照射範囲が伸びたこと、対向車や歩行者に対するシャッター機能が強化されたこと、さらに、リヤコンビネーションランプと合わせて、ウェルカムとグッバイのコミュニケーション機能が向上したことなどが眼目だ。

試乗が昼間に限られていたため、どの機能も体験できなかったのは残念だけれど、もうひとつのあたらしい機能、インフォテインメントシステム用OSの進化はたっぷり体験できた。

試乗車にはダッシュボード中央に12.9インチの大型モニターがそなわっていて、MIB4(モジュラーインフォテイメントシステム第4世代)で動く。「ハロー、アイダ(IDA)」の呼びかけで音声アシスタントが起動するのが、新世代の特徴だ。

フォルクスワーゲンによると、2024年第2四半期以降、多くのモデルにチャットGPTを標準装備する初の量産メーカーとなるそうだ。エアコン温度、天気予報、ニュース、音楽など、音声でコントロールできる。「Hello IDA, how old are you?(歳、いくつ?)」と尋ねたときは「チャットGPTでは、年齢を言わないことになっています」という答えだった。

改良を受けたゴルフ、日本での受注開始は24年9月で、発売開始は25年1月以降とフォルクスワーゲンの日本法人ではしている。SUVばやりの世のなかだけれど、すぐれたハッチバックとしてこれまで50年間で3700万台が生産されてきたゴルフの(再)体験は、クルマ好きには価値あることではないか? と、私は思う。

文・小川フミオ 編集・稲垣邦康(GQ)

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