ホンダの軽スポーツカーであるS660は2021年3月に2022年3月をもっての生産終了が発表されると、想定外の早さでオーダーが生産可能台数に達し、2021年3月中にオーダーストップとなってしまった。
このことに対しホンダは11月1日(月)に650台の追加生産を発表。ただ、追加生産分への反響も大きく、追加生産分でS660の新車を手にするのも狭き門となっている。
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S660の追加生産を期に過去にあった「追加生産された、2回目があった限定車、最終限定車」を思い出すと意外にあり、ここではそんなクルマたちをピックアップしてみた。ないと思っていた「おかわり」があったクルマってこんなにもあったとは。
文/永田恵一、写真/MAZDA、FERRARI、MITSUBISHI、NISSAN、HONDA
[gallink]
■実はこんなにあった「おかわり」限定車
●サバンナRX-7アンフィニ
RX-7アンフィニ(2代目)
三世代に渡った全モデルが日本車においてもっともピュアなスポーツカーだったRX-7の2代目モデルとなるFC型には、5年間のモデルサイクルで4回さらにスパルタンなモデルとなるアンフィニがそれぞれ台数限定で設定された。
RX-7アンフィニはどのモデルも2シーター化、サスペンションの強化、外板パネルのアルミ化などによる軽量化、コーナー脱出時などのトラクション(駆動力)を高めるLSDの追加もしくは変更などが施され、RX-7のキャラクターが際立っていた。
RX-7アンフィニは1986年(300台限定)、1988年(300台限定)、1989年(600台限定)、1990年(600台限定)に設定されているのだが、それぞれ数ヶ月後に300台ないし600台が追加発売された。
最初のアンフィニはともかくとして、2回目以降も追加販売するならはじめから合計した台数を発売してもいい気もするが、それには何らかの理由があったのだろう。
●フェラーリF40
フェラーリ F40
1987年にフェラーリ社の創業40周年記念車として登場したF40のコンセプトは、ずばり「ル・マン24時間レースなどを走るレーシングカーのロードカー仕様」である。
具体的にはボディはパイプフレーム、外板パネルはカーボンと超軽量、ミッドに積まれるエンジンは478馬力の3リッターV8ツインターボ、インテリアはレーシングカーのように必要最低限の装備しかないスパルタンなもの、といった具合である。
そんなクルマだけに当時F1のフェラーリチームに在籍していたゲルハルト・ベルガー氏は「雨の日は、ガレージからF40を出してはいけない」という言葉を残したほどだった。
F40は当初200台、350台、400台などいくつかの説があるが、いずれにしても限定車として登場した。しかし、殺到するオーダーに対しフェラーリ社はF40が投機の対象となることを恐れ、結局カタログモデルのように1992年までの5年間に渡って1311台が生産されたと言われている。
それでもF40の中古車は新車が生産されている時代、現在ともに1億円を超える取引が続いている。
●ランサーエボリューション I
三菱 ランサーエボリューション
正式にはランサーエボリューション Iではなく、ランサーエボリューションという車名だった1992年に登場した最初のランサーエボリューションは、初代インプレッサWRXが大雑把に言えば当時WRCをはじめとしたラリーを戦っていた初代レガシィを小型化したのに近い、ランサーにギャランVR-4のパワートレーンを移植したモデルだった。
ランサーエボリューション Iは短期間で開発されたという事情もあり、全体的に乱暴なところが否めず、販売も当初は国際ラリー参戦に必要なホモロゲーション(認可)取得のために必要な2500台限定で、宣伝広告もなくヒッソリと登場した。
しかし、フタを開けてみるとはじめの2500台は3日で完売、反響に応え2500台を追加したもののそれも早期に完売し、結局最終的には7628台が販売されたと言われている。
ランサーエボリューションはエボ Iの商業的な成功に加え、モータースポーツ参戦における戦闘力の向上と維持の目的もあり、インプレッサWRX STi同様にIXまでは毎年のように登場し、結局最後となったXまで23年間に渡って継続された。
●R34スカイラインGT-Rニュル
日産 スカイラインGT-Rニュル(R34)
RB26DETT+アテーサET-Sというパワートレーンを搭載した第二世代のスカイラインGT-Rとしては最後となるR34型は、排ガス規制の強化などもあり、2002年で生産終了となった。
R34スカイラインGT-Rの生産終了発表の際には、最終限定車としてより強度の強いブロックを使ったN1エンジンをベースに、ピストンやコンロッドといったエンジン内部パーツの重量バランス合わせしたスペシャルエンジンを搭載するなどした「ニュル」をスパルタンなVスペックIIとラグジュアリーなキャラクターも持つMスペックに台数限定で設定した。
ニュルの限定台数は当初300台の予定だったのだが、「最終限定車となるニュルが加わる」という反響は大きく、限定台数は500台を経て、最終的に1000台に増やされた。
しかし、それでもあっという間にニュルは完売。現在ニュルの中古車はほとんど流通しておらず、あったとしても3000万円は超えるプライスとなるだろう。
●シビックタイプRユーロ
ホンダ シビックタイプR ユーロ
シビックはホンダにとってアコード同様の世界中で販売される基幹車種だけに、1990年代後半から今から数年前までの20年間ほどに渡ってイギリスで生産されていた欧州シビックもあった。
欧州シビックはフィットをベースにしたモデルだった時期もあり、そのスポーツモデルが3ドアハッチバックのタイプRユーロである。
シビックタイプRユーロは日本仕様のシビックタイプRに比べると、より扱いやすさに配慮した2リッターNAエンジンの搭載、しなやかなサスペンションなど公道向けというコンセプトで、ホンダのRシリーズで例えるならアコードユーロRに近いキャラクターを持っていた。
シビックタイプRユーロは日本でもイギリスからの輸入車という形で2009年に2010台、2010年にも小変更を受けた2010年モデルが1500台限定で導入された。
しかし、日本での販売は2012年6月まで続いていたことから見ると、日本への割り当てが合計3510台と十分な数あったせいもあるのか、限定車の割には大盛況とはならなかったようだ。
という背景もあり、シビックタイプRユーロは新車価格より高い中古車も珍しくはないホンダのタイプRの中では比較的買いやすい中古車相場となっている。
●RX-8スピリットR
マツダ RX-8スピリットR
RX-8はRX-7を引き継ぐ面もあるロータリーエンジン搭載車として2003年に登場した、観音ドアを採用するなどした4ドアのスポーツカーとも言えるモデルである。
筆者も短期間ながらRX-8をマイカーにしていた時期があるが、RX-8は環境対応のためもありターボからNAとなったロータリーエンジンの気持ちよさや、モアパワーを感じるほど高いシャーシ性能などにより、燃費だけは褒められたものではなかったものの楽しいクルマだった。
しかし、RX-8も環境対応などにより2012年6月で生産終了となり、2011年10月にそのメモリアルとなる特別仕様車としてスピリットRが当初1000台限定で加わった。
3代目RX-7の最終限定車と同じ名前となるスピリットRは、6速MT車はカタログモデルのトップグレードとなるタイプRS、6速ATはラグジュアリーなタイプEをベースに6速MTはブロンズ、6速ATはガンメタに塗装されたホイール、レッド塗装のブレーキキャリパーなど、内外装に手を加えたモデルだった。
スピリットRは2012年4月に好評に対応しさらに1000台が追加生産され、スピリットRの中古車もカタログモデルに比べればやはり高い中古車価格となっている。
■まとめ
ほしいと思ったときに新車で買っておく貯蓄があれば最高なのだが……
価値ある限定車の中にはここで挙げたモデルのように様々な形で二回目のチャンスがある場合もあり、一回目がダメでも諦めずに購入資金を確保するなどし、二回目のチャンスに備えることも欲しいクルマを自分のものにするために重要なことなのかもしれない。
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だからホモロゲ台数を満たすだけの限定車だったと