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【試乗】新型プジョー508は引き締まったフォルムとダイナミックな走行性能を有する新世代サルーン

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【試乗】新型プジョー508は引き締まったフォルムとダイナミックな走行性能を有する新世代サルーン

その魅力はエスプリに満ちたスタイルだけではない。独自の哲学に基づいた個性的なインターフェイスと、洗練されたダイナミック性能のコンビネーションは確かに、プジョーにしかないプレミアムサルーンの世界を確立していた。(Motor Magazine 2019年6月号より)

ゲートの存在を感じさせないファストバックスタイル
A、B、Cセグメントにあたる小型車に対して、とくにフランス車のラインナップで定番的モデルの確立が難しいと思われるのが、Dセグメント以上の大型サルーンだ。プジョーに限って見ても、一時は607でEセグメントにまで挑戦したもののセールスが伸びず、Dセグメント担当の407と統合されることになった。その結果、2011年に登場したのが初代508だった。

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その508のフルモデルチェンジが伝えられたのは、2018年3月のジュネーブモーターショーである(セダンのみ)。あまりにも大胆な変身ぶりで、私たちを驚かせてくれた。やがて日本でも18年11月から第2世代のデリバリーが始まった。

新型5088の最大の特徴は、ルーフラインがなだらかに引き落とされテールエンドまで続くファストバックスタイルを採用したことだ。リアのゲートを開けてラゲッジルームにアクセスする、5ドアハッチバックとなる。

ただし荷室まわりのパーティングラインが整理されてガラス部分から開くスッキリしたデザインになっているため、見た目ではリアゲートの存在をほとんど意識させない。この辺はいかにも、細部までスタイリッシュなイメージにこだわるプジョーらしいところだ。

ボディは先代がEセグメントに迫る巨体だったのに対し、新型は全長で80mm、全高は35mmダウン。全幅はわずか5mmだが拡大され、全長4750×全幅1860×全高1420mmとなった。

Dセグメントのサルーンとしては相変わらず大柄な部類だが、4ドアクーペ風でロー&ワイドのスポーティなアピアランスは、それを意識させない。どこか芒洋とした雰囲気をまとっていた先代と比べると、格段に引き締まったイメージがある。プジョーの狙いもまさに、そこにあったのだと思う。

サッシュレスドアを開けて乗り込んだキャビンは、前後席とも十分なスペースが取られている。ただリアシートはヒップポイントが下がっているため、太腿が少し浮く姿勢になりがち。頭上空間はルーフライニングを抉ってゆとりを作り出しているが、包まれ感はやはりそれなりに強い。

インテリアについても、雰囲気が一新された。大きなポイントは、近年のプジョーが展開を拡大している「コクピット」が採用されたことだ。メーターパネルに12.3インチの液晶デジタル式を配し、表示モードも3008などと同様に多彩なバリエーションから選ぶことができる。フラッグシップらしい進化を感じさせている。

もうひとつは、センターコンソールのディスプレイが8インチに拡大され、画面下に並んだスイッチでエアコン/メディア再生/ハンズフリーフォン/ADAS系の設定/SDナビなどを切り替えて操作するタッチスクリーンとなったことだ。

メニュー階層が深すぎてひと目ではわかりにくく、操作性をもう少し洗練させる必要は感じられたものの、機能的には格段にブラッシュアップされた。

さらに先代508で立ち遅れていた安全装備も、ようやく最新レベルに近づいた。アクティブセーフティブレーキは二輪車や夜間での検知精度を高めた第2世代に進化。アクティブクルーズコントロールには停止から3秒以内なら自動再発進するストップ&ゴー機能が備わったし、操舵制御により車線内走行をキープするレーンポジショニングアシストやレーンキープアシストも採用される。

さて、走りに話を移そう。新型508にはふたつのエンジンが用意されている。ひとつはピュアテックと呼ばれるガソリンの1.6L直噴ターボ。先代の初期モデルや、3008/5008にも搭載される息の長いユニットだが、新型508への搭載に当たって最高出力で15ps、最大トルクで10Nmがそれぞれプラスされ、180ps/250Nmを発生する。

もうひとつは、おなじみのクリーンディーゼル、ブルーHDi。新型508に搭載されるのは2Lで、先代に対してなぜか最高出力は3ps低い177psだが、400Nmの最大トルクは変わらない。パワートレーン系でさらに注目されるのは、トランスミッションがアイシンAW製の8速ATとなった点だろう。先代は6速AT。一気に多段化を図っている。

ピュアテックのフィールが絶品。長距離ならやはりディーゼル
走りに関して、僕が新型508を運転して感心したのが、ガソリンターボだった。6000rpmのトップエンドまで引っ張って持てる力をすべて使うような場面では、小排気量なりに力感がやや希薄に感じられることある。

しかし、最大トルクの発生回転が1650rpmと低く、8速ATが効率よくその回転帯を使ってくれるので、中間加速はそうとうダイナミックだ。回転フィールももちろん滑らか。スポーティなクーペ風に生まれ変わった508には、このピュアテックのパワーフィールがとても似合っていると思う。

もちろんブルーHDiもエンジンマナーは上々で、振動やノック音はよく抑えられている。それになんと言っても400Nmの強大なトルクが生み出す加速は実にワイルドだ。トルクフルで、たくましい加速感が楽しめた。

燃費はWLTCモードで16.9km/Lだが、高速巡航が主体の長距離なら20km/L以上の実用燃費が得られるのは確実だと思う。新型508を長距離ツアラーとして選ぶなら、こちらがより魅力的だ。

ただし8速に入るポイントが100km/hを少し上回っているようで、日本レベルの高速巡航では7速/1700rpmでことたりる。せっかくの8速めが存分に使いこなせないのは、残念だ。

足まわりに関しては全モデルに、モード設定や路面に応じてダンピングを自動調整するアクティブサスペンションを採用している。シフトレバー前のセレクターでスポーツ/コンフォート/エコ/ノーマルと切り替えるのだが、スポーツモードでも極端には硬くならず良好な乗り心地を保つところに、プジョーらしさを感じた。

ちなみにディーゼルとガソリンでは重量差があるため、それぞれ独自のサスチューニングを施しているという。それでもやはり鼻先が重いディーゼルは立ち上がりでのアンダー感が強い。その点ガソリンは、回頭性が実に軽やか。そういった面も今回、僕がピュアテックに魅力を感じた一因だ。

新型508がDセグメントで新しいポジションを作り出したのは確かだ。夏頃には荷室容積に妥協のないワゴンのSWが加わるし、プラグインハイブリッド導入の計画もあるという。これは、今後がますます楽しみな一台である。(文:石川芳雄)

■プジョー508 GTライン主要諸元
●全長×全幅×全高=4750×1860×1420mm
●ホイールベース=2800mm
●車両重量=1510g
●エンジン= 直4DOHCターボ
●排気量=1598cc●最高出力=180ps/5500rpm
●最大トルク=250Nm/1650rpm
●駆動方式=FF
●トランスミッション=8速AT
●価格=459万円(税込)

■プジョー508 GTブルーHDi主要諸元
●全長×全幅×全高=4750×1860×1420mm
●ホイールベース=2800mm
●車両重量=1630g
●エンジン= 直4DOHCディーゼルターボ
●排気量=1997cc
●最高出力=177ps/3750rpm
●最大トルク=400Nm/2000rpm
●駆動方式=FF
●トランスミッション=8速AT
●価格=492万円(税込)

[ アルバム : 新型プジョー508の世界 はオリジナルサイトでご覧ください ]

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