以前に連載した「昭和の名車」では、紹介しきれなかったクルマはまだ数多くある。そこで、1960年代以降の隠れた名車を順次紹介していこう。今回は「いすゞ フローリアン」だ。
いすゞ フローリアン(PA20型):昭和42年(1967年)11月発売
三菱 デボネアと同じく「走るシーラカンス」という異名をとるほど長年に渡っていすゞの顔となったフローリアン。プロトタイプは、1966年(昭和41年)の東京モーターショーに展示された117サルーンだった。このときは、117スポーツとして117クーペのプロトタイプも展示されていた関係で、あまり目立たない存在だった。ただし、スタイリングは117スポーツと同様、イタリアのギア社によるオリジナル。一見、異なるように見えても姉妹車だけあって全体のフォルム、とくにセミファストバックに処理されているテールラインは、ほぼ同印象のデザインだ。
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約1年後の1967年12月、モーターショー展示車とほぼ同じスタイルで発売された。はっきり変わったと判断できる部分はフロントグリルと、ヘッドライトが丸型4灯から角型2灯に変更されたところ。フロントウインドーはラップアラウンド気味のカーブを持ち、ドライバーの視界を広くしているのも当時としては斬新だった。リアクオーターにリムジンのような三角窓がついているのも、このクラスでは珍しい。全体的なフォルムはヨーロッパ車の血を引くが、随所にアメリカ車的なデザインを持っていた。
搭載されているエンジンは1.6Lの直4 OHVでG161型と呼ばれる。シリンダーブロック、クランクシャフトなど主要な部分については、ベレット1500/1600GTのものをほぼそのまま流用しており、ボア×ストロークは82×75mmのショートストロークタイプとなっている。排気量は1584cc、圧縮比は8.7で、最高出力84ps/5200rpm、最大トルク12.4kgm/2600rpmを発生。出力特性は2600rpmという極めて低い回転域でトルクピークを得ており、それが4500rpmまでほぼフラットなフレキシブルな特性がうかがえる。クランクシャフトは5ベアリングで、シリンダーヘッドをはじめとするアルミ合金の使用により、冷却水、潤滑油を含んだエンジン本体の重要は141kgと軽量となっている。
トランスミッションは、1600デラックスではコラム式3速MT、1600オーナーズデラックスではフロア式4速MT、1600オートマチックでは3速ATとグレードによって分けられていた。MTはワーナータイプのフルシンクロを採用している。
ボディ構造を見てみると角断面のサイドメンバー付きのユニタリーコンストラクションとなっている。フロアパネルと一体化されたアンダーフレームは、前後に通る2本のサイドメンバーと、サイドを横断する5本のクロスメンバーで構成されている。ボディのフロントおよびリアのパネルには薄鋼板が使われ、衝突時のエネルギーを吸収するクラッシャブル構造となっているのも当時としては先進的だった。
サスペンションは、フロント:ダブルウイッシュボーン/リア:リーフリジッド。ブレーキはマスターバック付きのパワーブレーキで、フロントがツーリーディング式、リアがリーディングトレーリング式のドラムとなっている。カタログデータによると制動距離は初速50km/hで12mとなっているが、モーターマガジン誌のテストではカタログデータを上回る8m前後だった。マスターバック付きのブレーキをこのクラスで標準装備としたのはフローリアンが最初となっている。その他、フロントシートに国産車で初めてシートベルトが標準装備されたなど、安全意識の高いクルマとなった。
発売以来、各所に改良を加えながら、1983年にアスカに引き継ぐカタチでその使命を終えるが、それだけの長期にわたって製造されたのは、基本設計の優秀さがあってのことだろう。
いすゞ フローリアン 1600オーナーズデラックス 主要諸元
●全長×全幅×全高:4250×1600×1445mm
●ホイールベース:2500mm
●重量:945kg
●エンジン型式・種類:G161型・直4 OHV
●排気量:1584cc
●最高出力:84ps/5200rpm
●最大トルク:12.4kgm/2600rpm
●トランスミッション:4速MT
●タイヤサイズ:5.60-13 4P
●価格:66万8000円
[ アルバム : いすゞ フローリアン はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
懐かしいですね。