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試乗 メルセデス・ベンツVクラス・マルコポーロ タイヤの付いた高級ホテル

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試乗 メルセデス・ベンツVクラス・マルコポーロ タイヤの付いた高級ホテル

もくじ

どんなクルマ?
ー もはやタイヤの付いた高級ホテル
どんな感じ?
ー 魅惑的な2ベッドルーム兼LDK
ー 上質さを飛躍的に高めた新エンジン
ー 商用車ベースを隠せない乗り心地
「買い」か?
ー 割高感はあるものの、訴求力も低くはない
スペック
ー メルセデス・ベンツVクラス300dマルコポーロのスペック

回顧録 550ps級サルーン対決 CLS63AMG vs パナメーラ・ターボS

どんなクルマ?

もはやタイヤの付いた高級ホテル

もはやクルマの紹介という内容だけでは済まない。ふたつのベッドルームに設備の整ったキッチン、耐水性の有るフローリングが施されたダイニングエリアが整い、小さな家と呼べそうなほど。しかも、ドライバーの好きなところへ移動し、駐車することができる。メルセデス・ベンツVクラス・マルコポーロは、タイヤの付いた小さな高級ホテルなのかもしれない。

この度、Vクラス全体でフェイスリフトを受けたことに合わせて、マルコポーロもアップデートされた。その中でも主役となるのが、エンジンとトランスミッションの刷新。EクラスやGLE、CLSにも搭載されているOM654型と呼ばれる4気筒ディーゼルが採用され、220dと300dの2グレード展開となっている。トランスミッションはメルセデス・ベンツ製の9速ATだ。

加えて衝突被害軽減ブレーキも標準装備され、エクステリアデザイン、インテリアデザインともにリフレッシュされている。2019年の夏休みを過ごすベストな相棒になってくれるのか、確かめてみよう。

どんな感じ?

魅惑的な2ベッドルーム兼LDK

車内は広々で、狭いと感じることはまずないだろう。全長は5m以上もあり、ホイールベースは3.2mに達する。高めのドライバーズシートへよじ登ると、その背後に広がる豊富な装備類に、思わずため息が出るはず。

シートは4名分が確保されているが、リアシートを折りたためばダブルベッドへと変化する。さらにポップアップルーフを持ち上げることで、2階としてもう1室、ダブルベッドの備わるベッドルームが生まれる。キッチンもフルサイズと呼べる内容で、2口のガスコンロにシンク、冷蔵庫に不足のない食器棚や収納スペースが用意されている。大食漢でも心配はいらなそうだ。

リビングルームとしても極めて快適で、正直下手なホテルや寄宿舎などより遥かに魅惑的な空間が設えられている。しかも窓からの借景はクルマを停めた場所次第。クルマとのライフスタイルを視覚化する手法も無限大と呼べる可能性を秘めているから、広報の写真にはブロンドヘアのカップルがギターやサーフボードを抱えて登場している。

といっても、この内容はフェイスリフト前のマルコポーロでもほぼ同じではある。新しくなったといっても、元が凄いから、それほど大きな変化はない。新しいデザインが施された内装に、フロントマスクのスタイリングが変更を受け、ボディカラーのバリエーションが増えた程度。

上質さを飛躍的に高めた新エンジン

ただ、ダッシュボードは最新のAクラスやGLEのように、大きなモニターが備わっているわけではなく、メルセデス・ベンツとしては、若干時代遅れ。インスツルメント・パネルも、全面モニターのデジタルメーターというわけではない。むしろ、ポップアップルーフや補助ヒーターの操作パネルは、どちらかというとレトロな感じさえする。何となくノキアの携帯電話のようだ。

そのルーフだが、前方が持ち上がるかたちで開閉するものの、通常閉じた状態でなら全高は2mを切っている。恐らく、多くのガレージや地下駐車場に入ることができるだろう。

内外のスタイリングは大きな変化を受けていなくても、エンジンとトランスミッションは一新されている。フェイスリフト前に搭載されていた、ガラガラとうるさかった2.1ℓディーゼルエンジンとは別れを告げ、ずっと上質な2.0ℓの4気筒ディーゼルにスイッチ。メルセデス・ベンツ製のG9トロニックと呼ばれるオートマティックと組み合わされることになった。

明らかに力強くレスポンスも良いエンジンで、走行ペース自体が向上していることに加えて、飛躍的に高級感も増している。ノイズやバイブレーションなどは全面的に改善し、アイドリングもぐっと静かになった。2.1ℓディーゼルとの惜別は正解だったといえる。

9速ATも滑らかで、滅多なことでは変速タイミングに戸惑うこともない。従来よりも2段増えたおかげで、クルージング時の洗練性も高まっている。

商用車ベースを隠せない乗り心地

ただし、マルコポーロのベースとなっているのは商用車のヴィート。どこか土臭いところがある。突き詰めていくと、大幅に手を加えたとしても商用車が土台となると、垢抜けたプレミアムなクルマを構築させることには、無理が生じてくるのだろう。くたびれた家に新しいデザイナーズ・キッチン付きの内装を施すようなものというのは、いい過ぎだろうか。

細かな凹凸が出ているような路面を超えると、クルマはしっかりと振動してしまうし、サスペンションからのノイズも耳についてしまう。英国仕様の場合は、アダプティブ・サスペンションが標準装備されているのだけれど。

ブレーキペダルのフィーリングも完璧とは呼べない。効き始めるまでのトラベル量が大きすぎるうえ、2487kgにも達する巨体を静止させるのは、容易なことではないことを実感させられてしまう。

ステアリングは軽くスムーズで正確だが、高速コーナーでは想像通り大きくボディはロールする。そもそも、リアシート前のテーブルから料理が飛んでインテリアを汚してしまうから、開放的な道を積極的に飛ばすことは止めておいた方が良いと思う。せっかくの朝食も台無しだ。

もっとも、オートキャンプ場を転々と穏やかに移動している限り、ダイナミクス性能に不満を感じることはないはず。乗り心地の面で、商用車ベースであるということは、常に意識させられるとしても。

「買い」か?

割高感はあるものの、訴求力も低くはない

最後に価格について。英国価格はまだ確定してはいないそうだが、従来どおりVクラスはお買い得とは呼べないはず。中古車としての価格も堅調とはいえ、イニシャルコストもそれなりに必要となる。月払いのリースで購入した場合、同じ広さのアパートをロンドンで借りるより、幾分安いかもしれないが。

価格を少しでも安くしたい向きには、オプションの選択で調整はできる。例えば、ポップアップルーフは標準装備だが、キッチンはオプションとなっている。フォルクスワーゲン・カリフォルニアの方が、明らかにお手頃なワンボックス・キャンパーとして、同等のアウトドア・ライフスタイルの門戸を開いてくれていると思う。

しかし、フロントマスクに付くスリーポインテッドスターと、上質なインテリアに惹かれるのなら、マルコポーロという選択も悪くはないだろう。訴求力は決して低くはない。

メルセデス・ベンツVクラス300dマルコポーロのスペック

■価格 6万2100ポンド(900万円・予想)
■全長×全幅×全高 5140✕1928✕1995mm
■最高速度 215km/h
0-100km/h加速 8.6秒
■燃費 -
■CO2排出量 -
■乾燥重量 2487kg
■パワートレイン 直列4気筒1950ccターボ
■使用燃料 軽油
■最高出力 239ps/4200rpm
■最大トルク 50.9kg-m/1600-4200rpm
■ギアボックス 9速オートマティック

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