輸入車7ブランドで構成されているステランティス。そのステランティスの中で2021年の販売台数で最も多いのがジープブランド。この好調さを支えたのが、ラングラーとマイナーチェンジを行ったコンパスで、それぞれが過去最高を記録した。
その好調なジープブランドが満を持して2021年12月に日本市場に導入したのが、10年振りにフルモデルチェンジを行ったフラッグシップモデルのグランドチェロキーだ。
新型アウトランダー登場で勢力図に変化!!? 国産SUV3列目シートランキング! 快適なSUVと要注意のSUV
新型グランドチェロキーは3列シートモデルとなったのが特徴で、ようやくグランドチェロキーに試乗できた。ここではライバル車といえるキャデラックXT6も合わせてインプレッションを紹介する。
文、写真/萩原文博
新型グランドチェロキーは3列シートSUVに生まれ変わった
新型グランドチェロキーLサミットリザーブの走行シーン
現在、SUVというと欧州ブランドが主流となっているが、元々は1963年に誕生したワゴニアがラグジュアリーSUVのパイオニアだ。そして、日本市場においては、それまでハードなオフローダーが主流だった1993年に初代ジープグランドチェロキーの導入により、ラグジュアリーSUVが本格化する。
日本市場においてアメリカンラグニュアリーSUVのパイオニアと言えるグランドチェロキーが2021年12月にフルモデルチェンジを行い、5代目となる現行モデルが導入された。
ジープの卓越した悪路走破性と、ロングドライブも快適に移動できるラグジュアリー・グランドツアラーの特性が凝縮されている現行型グランドチェロキー。最大の特徴は、グランドチェロキーLというネーミングとなり、シリーズ初の3列シートモデルとなったことだ。
日本に導入されグレードは7人乗りのリミテッドと6人乗りのサミットリザーブの2グレードで、車両本体価格はリミテッドが788万円、サミットリザーブは999万円となっている。
現行型グランドチェロキーの外観はワゴニアにインスピレーションを得て、ロングノーズのプロモーションを採用。同時に特徴的な逆スラントノーズを受け継いでいる。ボディサイズは全長5,200mm×全幅1,980mm×全高1,795mm(リミテッドは1,815mm)とフラッグシップモデルに相応しい存在感あるサイズとなっている。
フロントエアインテークにはパワートレインの冷却状況に応じて開口部のフラップを自動制御するアクティブグリルシャッターを新たに採用し、実用燃費の向上を図っている。
インテリアは、インストルメントパネルは水平基調のデザインを採用し、横方向の広がりを強調。厳選された上質なマテリアルを重ね合わせたレイヤー状レイアウトにより、上質感が演出している。センターには10.1インチのデジタルタッチスクリーンが配置され、モダンかつ使い勝手に優れたインターフェイスを実現している。
搭載するエンジンは、最高出力286ps、最大トルク344Nmをレギュラーガソリンで発生する3.6L V型6気筒DOHC。組み合わされるトランスミッションは8速AT。
この8速ATのコントローラーにはジープ初となるロータリーシフトを採用。転式の金属製シフトコントローラーにより操作性が向上しており、ギアが切り替わったことが指先に伝わるフィードバック機能により、直感的な操作を可能している。
インフォテインメントシステムには、第5世代のUconnect オーディオシステムを採用。全車アイシン製ナビゲーションシステムを搭載し、Apple CarPlayならびにAndroid Autoに対応するほか、予め登録した最多5名分のユーザープロファイルが登録可能となっている。
運転支援機能には、車両周辺の障害物をモニター上で確認できるサラウンドビューカメラ、ヘッドアップディスプレイをはじめ、上級グレードのサミットリザーブには後席の乗員や荷物の有無に関わらず後方視界を確保できるデジタルリアビュールームミラー、車線中央を維持した走行をサポートするアクティブドライビングアシストなどを搭載しドライバーをサポートする。
試乗したのは上級グレードのサミットリザーブ。全長5,200mm、全幅1,980mmというボディサイズは駐車場で出し入れする際にかなり気を遣うが、道路に出てしまえば、その気遣いはわずかに軽減される。
試乗したサミットリザーブは275/45R21という大径タイヤを装着しているが、角の取れた緩やかな乗り味はアメリカンSUVそのもの。欧州ブランドのSUVに乗り慣れてしまうと、腰のない柔らかな乗り味と感じてしまうが、この緩やかな波形の乗り味こそアメリカンSUVの真骨頂だ。
ステアリングを握り、運転していると都内を走行しているにも関わらず、まるでアメリカのロス郊外の道路を走っているような感覚になる。このフワッとした乗り味がロングドライブをしても疲れにくいのだろう。
最小回転半径も6.3mと取り回しも良いとは言えないが、大人が乗っても大丈夫なスペースを確保した3列シートをもつSUVと考えれば、このサイズと取り回しは納得できるし、直点的なラインを多用した外観デザインは、現在のトレンドを考えると支持されそうだ。
エスカレードとは異なる芯のあるスッキリとした乗り味がXT6の魅力
キャデラックXT6の走行シーン
グランドチェロキーのライバル車としてピックアップしたのが、キャデラックXT6プラチナム。このクルマも3列シートを配するSUVで、車両本体価格は899万円だ。
キャデラックXT6は2019年12月に日本市場に導入された6人乗りの3列シートSUV。空力特性に優れた均整の取れたプロポーションと、昼夜を問わず遠くからでも一目でキャデラックと分かるスタイリングが特徴だ。
ボディサイズは全長5,060mm×全幅1,960mm×全高1,775mmでグランドチェロキーと比べると一回りコンパクトなサイズとなっている。しかし、インテリアはグメントでトップレベルの室内空間を実現。2列目、3列目のレッグスペースとヘッドクリアランスはゆとりのスペースを生み、6人の乗員全員が快適でゆったりとしたドライブを楽しめる。
またラグジュアリーな空間を追求し、トリム表皮、ルーフライナーのスウェード材、また、セミアニリン仕上げの本革シートやこだわりのクラフトマンシップから生まれたウッド装飾など、厳選された上質な素材を採用。オーディオにはキャデラック初のBOSEがチューニングした14スピーカーシステムを搭載する。
搭載するエンジンは最高出力314ps、最大トルク368Nmを発生するハイオク仕様の3.6L V6DOHC。トランスミッションは9速ATが組み合わされ、駆動方式は電子制御の4WDとなっている。
運転支援システムは、レーダーやカメラ、センサーを用いた高度な技術を採用。対向車を直接照らすことなく常に最適な夜間の視界を確保するインテリジェント・マトリックスLEDヘッドランプを標準装備するほか、アダプティブクルーズコントロール、サイドブラインドゾーンアラート、リアカメラミラー、歩行者対応リアブレーキなど20以上の最新安全装備を搭載している。
キャデラックXT6の乗り味は、インテリジェントAWDやリアルタイムダンピングサスペンションによって、ソフトな中にも芯のあるしっかりとした乗り味となっている。
グランドチェロキーと比べるとフワッとした感触が少なく。穏やかな中にも芯の通った印象。しかし欧州SUVのようなガチッとした硬さはなく、運転していると、アバンギャルドなニューヨークの街中を走行しているような感覚を覚える。
グランドチェロキーもキャデラックXT6もラグジュアリーな仕立てとなっているが、グランドチェロキーが郊外ならば、XT6は都会的な雰囲気が漂うなどキャラクターは分かれている。しかもXT6は左ハンドルしか用意されておらず、外観そして本革を多用したインテリアともにアメリカン濃度は相当高い。
欧州のSUVは高い走行性能を追求しているが、グランドチェロキーやキャデラックXT6といったアメリカンSUVは大らかな乗り味を追求しており、同じSUVでも文化の違いを感じることができる。個人的にはグランドチェロキーの、大らかでまさに大陸的な乗り味には非常に好感が持てる。
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