BMWの中核モデルに加わり話題となっているPHEV。最近、とくに欧州プレミアム・ブランドではプラグイン・ハイブリッドモデルをラインアップに加えることが増えており、メルセデス・ベンツ、BMW、ボルボが積極的に日本へも導入している。では、BMWのPHEV戦略を見ながら、最新PHEVモデルの試乗レポートをしよう。<レポート:高橋 明/Akira Takahashi>
■BMWのPHEV戦略BMWは2007年にサブブランド「BMW i」を起動し、次世代へ向けた新技術や考えかたなどの研究を進めている。背景には世界中で人口のシフトが起こり都市化が進んでいることが挙げられる。急速に進む都市化に対応するために電動化技術が必要と考え、2013年に「eDrive」技術を搭載したBMW i3、i8がデビューさせている。
こうした流れの中で「BMW」というコアブランドでも環境を意識しながらのドライビング・ファンを持ったEfficient Dynamics戦略を打ち立て、パワートレーンの変革を始めている。それがダウンサイジングターボ・ガソリンエンジン、クリーンディーゼルであり、そしてプラグイン・ハイブリッドの3種類のパワートレーンで揃えることだった。
2016年現在BMWのPHEVは4車種となった。2013年にi8が3気筒エンジンと組み合わされたプラグイン・ハイブリッドとしてデビューし、コアモデルでは2015年9月にX5 xDrive 40eがデビューする。そして2016年1月に3シリーズ、2シリーズにもそのエフィシェント・ダイナミクス戦略に則ったPHEVがデビューした。さらに2016年内にはトップグレードの7シリーズにもPHEVモデルが加わることが発表されている。
このように積極的にPHEVを展開しているBMW。今回は直近で追加された3シリーズの330eセダンとアクティブツアラーの225xeに試乗。2016年1月に同時発表され、両モデルともに3月から納車が始まったモデルだ。
■330eのモデル概要パワーユニットは2.0L直列4気筒直噴ターボエンジンにモーターが組み合わされたもので、エンジン単体で184ps(135kW)/290Nm、モーター単体で65kW(88ps)/250Nmというスペック。システムトータルでは、252ps(185kW)/420Nmで、ZF製の8速ATが組み込まれている。0-100km/hは6.1秒というパフォーマンスだ。電池容量は7.7kWhのリチウムイオンバッテリーで、EV走行は最大36.8km、最高速度は120km/hまでを「Max eDrive」モードを選択すると得られる。
モード切り替えは4種類あり、「Auto eDrive」は80km/hまでEV走行が可能で、EVとガソリンが最適にバランスするハイブリッド走行モードだ。通常はこのモードで走行するのがデフォルトとなる。そして「Max eDrive」モードがいわゆるEV走行モードだが、キックダウンさせればエンジンが稼働する。「Save Battery」モードでは、充電量50%以上の時は、残量を維持し、50%以下の時は50%まで増やしつつ、バッテリーを減らさないように走行するモードだ。そして「Charge Battery」モードはシフトレバーをM/S側に倒すことで、エンジンによる充電ができ、最大80%まで充電する。
こうしたパワートレーンを搭載する330eは、プラグイン・ハイブリッドに変更しながらも50:50の重量バンスを維持し、ドライバーズカーであることに変わりはない。ドライビングパフォーマンス・コントロールも他のBMWモデルと同様に、エンジンレスポンス、コンフォート、スポーツ、エコプロの切り替えがあり、エンジン、トランスミッション、ステアリングなどの制御マップが変更される。
重量物のバッテリーはラゲッジルーム下に収納することで370Lのトランク容量を確保し、40:20:40の後席3分割シートは他のモデルと同様に活かされている。バッテリーは200V充電で約3時間でフル受電でき、欧州のスタンダードであるように急速充電には対応していない。また、PHEV専用アイテムとしてBMWリモートAPPではスマートフォンとの連携で、各種サービスが受けられることもPHEVの特徴となっている。
■330eインプレッション
駆動はもちろん言うまでもなくFR方式で、モーターアシスト時も変更はない。走行モードとしてはモーター駆動、エンジン駆動、その両方で駆動というパターンで前述のAutoモードをチョイスしているとバッテリーの充電状況を自動で判断し、EV走行したりしなかったりを選択している。
330eの特徴としてはEV走行時とエンジン使用時に、走行の質感に変化がないことが挙げられる。いつでも3シリーズらしい、BMWらしい走行フィールが確保されていることだ。エンジンが稼働していないときは、確かに静かに走行しているがエンジンが稼働しても車内の音変化はあまり気にならない。
それはもともと3シリーズが持つしなやかさやしっとりとした乗り味は、パワートレーン由来ではなくシャシー由来であるためで、パワートレーンが変化してもそこには差異がないということだろう。
ちなみにJC08モード燃費は17.7km/Lで、電力消費率は5.13km/kWhとなっている。そして330eの魅力のひとつは価格にあると思う。それはPHEVをトップグレードには据えず、他のガソリン、ディーゼルモデルと同等の価格帯に設定していることだ。
価格は554万円から599万円で、ユーザーの利用状況、環境においてベストなパワートレーンがチョイスできるようにという意図が感じられる。都心部のようなゴー&ストップが多い使い人にはPHEVは有利だろうし、高速長距離移動が多い人にはクリーンディーゼルがベストチョイスである、というように選択肢を広く設定していることがユニークだ。
■225xeインプレッション一方2シリーズのPHEV「225xe アクティブツアラー」は、モーターとバッテリーはもとよりその搭載方式も330eとは異なる。エンジンは1.5L直列3気筒の横置きガソリンターボで、アイシンAW製の6速ATが組み合わされる。330eではZFの縦置きミッションにモーターを組み込むタイプを使用しているが、横置きであるため、このシステムとは異なるわけだ。
そのため、モーターはリヤアクスル上に配され、特徴的なのはエンジン駆動時はフロント駆動で走り、EV走行時はリヤ駆動で走行する。そしてハイブリッドモードであるエンジン+モーターで駆動の時はAWD走行するというユニークな面を持っている。
225xeのスペックを見ると、エンジン単体で136ps(100kW)/220Nm、モーターは65kW(88ps)/165Nmで、330eよりもトルク出力の小さいモーターを搭載していることが分かる。0-100km/h加速は6.7秒で、125km/hまでEV走行が可能だ。また、EVの航続距離は42.4kmでバッテリー容量は330eと同様の7.7kWhを積む。JC08モード燃費は17.6km/Lで電力消費率は5.80km/kWhとなっている。
また、こちらも330e同様モード切り替えが可能で、「Auto eDrive」、「Max eDrive」、「Save Battery」の3モードを用意。加えて、「コンフォート」、「スポーツ」、「ECO PRO」の3モードでエンジンレスポンスやシフトタイミング、エアコンの作動を制御する「ドライビング・パフォーマンス・コントロール」も装備している(これは通常のガソリンモデルも同様)。充電に関しても330eと同様で、200V電源を使用して約3時間で満充電が完了する。
さて、PHEVとなった225xeだが、ガソリン走行からハイブリッド走行への切り替えなど走行時に「ドライバビリティに変化があるのか?」と言えば、それは「大きく感じられなかった」というのが正直な答えだ。試乗は三浦半島の一般道路と高速道路だったが、つまり普通に乗っている限りハンドリングにその違いは感じられないということだ。
2シリーズ・アクティブツアラーは、そのキャラクターからファミリーカー的に使用されるケースが多いだろう。つまり、近距離の買い物や送り迎えが中心で、週末に少し遠くまでレジャーに出かけるという使用パターンだ。この点、40km以上のEV走行が可能な225xeなら、日常はガソリンを消費することなく走ることができ、ランニングコストを抑えられる。しかも、通常ガソリンモデルと比較しても走行性が劣っていることは全くない。
ただし、ネックとなるのは車両価格で、225xeは488万円から509万円。ガソリンモデルの218iが342万円から384万円、ディーゼルモデルの218dが363万円から405万円で、価格差は100万円以上にもなる。唯一、4WDの225i xDriveが同等の504万円。この価格差の壁を越えられるなら、225xeはオススメできる。
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