積算9314km 車載アラームの異常鳴動
普段より遅くまで起きていたある晩、ベッドへ身体を沈めた直後にけたたましいアラームが鳴って飛び起きた。時刻は午前1時。自宅の駐車場に停めていた、長期テストのBMW iXだった。
【画像】BMWの最新フラッグシップBEV SUV iX 小さなiX1とiX3 サルーンのi4とi7も 全125枚
窓から見る限り、敷地内には誰もいない様子。クルマもちゃんと停まっている。BMWのスマートフォン・アプリを介して、アラームの前後に車載カメラで撮影された映像を確認できるのだが、目立った異変もない様子。賢い機能を備えたアプリだ。
念のためiXを確認して、すぐに眠りへ落ちた筆者だったが、数日後に再び鳴った。海辺でのんびり過ごしていた週末の午前6時半と、その直後の2回。さらに午後にもう1度。
何かのエラーに違いないということで、iX xドライブ50 Mスポーツは英国BMWの本部へ一旦お戻しすることにした。このようなトラブルは、長期テストでは珍しいことではない。代わりにカギを預けられたのが、これまでより高性能なiX M60だった。
このiX M60は、本気のMモデルではない、Mパフォーマンスと呼ばれるモデル。それでも、リアの駆動用モーターがアップグレードされており、最高出力はiX xドライブ50の523psから619psへ2割弱引き上げられている。
若干鋭い加速力 郊外の道を自然に飛ばせる
シャシーにも手が加えられており、サスペンション・ダンパーのレートが引き締められ、リアには硬いアンチロールバーが与えられている。エアサスペンションとステアリングの特性も、より正確な操縦性を求めたチューニングが施されている。
控えめだが、ボディは専用のスタイリングキットで飾られる。ボディカラーは、ブルーリッジ・マウンテンという青みがかかったグリーン。メタリック塗装で、筆者が目にしたiXでは最もデザインに似合った色味だと思う。インテリアもアップグレードされている。
実際に運転してみた印象には、そこまで明確な違いはない。比較すると、iX M60の方が発進加速で若干鋭く、中間加速も一層速い。相当にエネルギッシュなバッテリーEV(BEV)といえるが、iX xドライブ50が遅く感じていたわけではない。
乗り心地は、サスペンションへ与えられたチューニング通り、iX M60の方が若干硬い。ステアリングの反応はシャープで、英国郊外の流れの速い区間との愛称は優れる。より自然に飛ばせる。
ハイパワーなぶん、電費効率は劣る。現実的な環境で4.1km/kWh前後となり、航続距離は480kmに届かないようだ。これまでのiX xドライブ50では、普段使いで560km以上走れることを確かめていたから、小さくない差といえる。
冬場にうれしいヒーター入りアームレスト
寒い朝でもドライバーを暖かく迎えてくれる、ヒーター入りのセンター・アームレストは、2台共通で備わっているうれしい機能。左の腕だけとはいえ、この季節はとてもありがたい。
iX M60の英国価格は、iX xドライブ50より約1万7000ポンド(約272万円)も高い。既に高性能なBEVのSUVを、一層ハイエンドな仕立てにするには、小さくないコストが必要なようだ。
2週間ほどiX M60を堪能しているが、今までのアベンチュリン・レッドIIIに塗られたiXが戻って来る日が待ち遠しい。このクルマには、スポーツカー勝りのシャープな操縦性やアグレッシブな加速力より、快適さや余裕のある走りといった特性が似合うと思う。
iX xドライブ50の方が、筆者好みだと確かめることができた。アラームの原因は不明なままだが、あのドライブトレインとシャシー、ボディカラーの組み合わせが気に入っている。
テストデータ
気に入っているトコロ
特徴的なサウンド:世界的な作曲家、ハンス・ジマー氏がデザインした走行中のサウンドは、M60の方が大きく聞こえる。パワフルなクルマに似合っていた。
気に入らないトコロ
MとBEVとの相性:M60は確かに速いが、スポーティというわけではない。MのコンセプトをBEVで展開することの難しさを感じた。
テスト車について
モデル名:BMW iX xドライブ50 Mスポーツ(英国仕様)
新車価格:9万9965ポンド(約1659万円)
テスト車の価格:11万6965ポンド(約1941万円)
テストの記録
航続距離:540km
電費:5.1km/kWh
故障:アラームの異常鳴動
出費:なし
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