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富士スピードウェイ全開アタック! C7コルベットの潜在能力を解き放つ:シボレー コルベット編 【Playback GENROQ 2017】

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富士スピードウェイ全開アタック! C7コルベットの潜在能力を解き放つ:シボレー コルベット編 【Playback GENROQ 2017】

FSW ATTACK! シボレー コルベット編

GENROQのホームサーキットである富士スピードウェイに集った6台の雄。片や欧州のスーパースポーツを脅かすコルベット。此方、エキゾチックなライトウェイトオープン。ステアリングを握る田中哲也のドライブで、剥き身のポテンシャルが暴かれる。(後編はこちら)

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前編はシボレー コルベットのバリエーションモデルを徹底試乗。秘めたるポテンシャルを詳らかにした。なお、ラップタイム及びスプリットタイム、各コーナーのトップ&ボトムスピード、最大Gは「VBOX Sport」にて計測。Z06、グランスポーツ、Z51の各モデルが富士スピードウェイで示した挙動とパフォーマンスを数値でご確認いただきたい。

Chevrolet Corvette Z06

シボレー コルベット Z06

「991GT3RSより2秒も速い! 驚愕のタイムは1分52秒55をマーク」

シボレー コルベット最強の称号、Z06。親しみを込めて『ズィーオーシックス』と呼ばれるこのマシンが身に纏ったイエローは狂気じみた表情を湛えている。

スーパーチャージドでスープアップされたV8ユニットは、Z51やGS(グランスポーツ)と比べて193ps増の659psを発生する。毎分2万回転で回るイートン製スーパーチャージャーの高周波も、最狂モデルに相応しい不敵な効果音として響く。

「先代のZ06は7.0リッターの自然吸気ユニットを積んでいたけれど、今度はスーパーチャージドなんですね。とにかくエアロが速そう」

「GSからZ06への進化の核となるのはパワーユニットだが、シャシー面も忘れてはならない」

エンジン以外のスペックはほぼ外観に現れていると言っていい。田中哲也はZ06の周囲を観察しながら、アタックの瞬間に備えている。

Z51のシャシーをアップグレードしたモデルがGSだったわけだが、GSからZ06への進化の核となるのはパワーユニットである。だがシャシー面も忘れてはならない。ホイールの中に黒光りするローターはZ07パフォーマンスパッケージに含まれるカーボンセラミック製だし、エアロもGSのそれをさらに尖らせたものになっている。

フロントのカーボン製エアスプリッターの端に付くカナードは大型化され、リヤスポイラーはGSでは後方視界を得るために真ん中部分が凹んでいたのだが、その部分に調整可能なフラップが追加され、一枚岩のようにそそり立っているのである。

Z06のストレートスピードは明らかに伸びている。だがそれ以上に、大気を圧するようにして突き進む威圧感が凄い。Z06のスリップから抜け出して真横に並んだとしたら、乱流で弾き飛ばされてしまいそうな、そんな圧力に満ちているのである。

「最大量まで増やされたダウンフォースの恩恵で1分52秒55を記録」

ファーストラップでいきなり1分50秒台に入ってきたZ06は、最終的に1分52秒55までタイムを伸ばすことに成功した。これは驚愕のラップタイムである。

「加速がもう、圧倒的ですね。エンジンパワーがあるからコーナーではスロットル操作が少しシビアになるけれど、とにかくストレートの区間はあっと言う間に通過しちゃう。このクルマはスタビリティコントロールを全オフにしていたのに、それでも少し制御が入っていましたね」

Z51比で5秒近いラップタイムにも驚かされるが、データシートには図抜けた数字が並んでいる。ストレートスピードはZ51の約6km/h増し、各コーナーのボトムスピードも弟分の2台にはっきりと差をつけている。これはまさに最大量まで増やされたダウンフォースの恩恵だろう。100RでトップもボトムもGSに対して遅れを取ったのは、田中のコメント通りスロットル操作がシビアだったためだろう。

「ポルシェ 991 GT3 RSより2秒も速い驚異的なラップタイム」

「過給エンジンだから、スロットルオフのツキが少し悪い。走っていて気持ちがいいのはGSの方ですね。Z06の方は楽しさより緊張感の方が大きい。でもこれは本当にすごいタイムです。実は昨日もFSWで991のGT3 RSをドライブしていてそのデータがありますが、ラップタイムはZ06の方が2秒も速い。ストレートスピードはポルシェの方が9km/hも速いのにね。でも100Rはコルベットの方が速く抜けられる。もちろん周回数が多ければポルシェの良さが出てくるかもしれないけれど、今回のコルベットの結果には本当に驚かされましたね」

今回のテストでは国内に導入されているコルベットの全クーペモデルが用意された。装備もスペックも異なる3台は、FSWで果たしてどのような顔を見せてくれるのだろうか。

Lap Time:1分52秒55

VBOX Sport DATA

スプリット1:00:25.15秒
スプリット2:01:00.93秒
ラップタイム:01:52.55秒
瞬間最大G 横:1.773
瞬間最大G 加速:0.620
瞬間最大G 減速:1.220
最高速度:258.77km/h
1コーナー トップ:258.77km/h
1コーナー ボトム:65.81km/h
コカ・コーラ トップ:198.89km/h
コカ・コーラ ボトム:120.60km/h
100R トップ:165.48km/h
100R ボトム:133.34km/h
ヘアピン トップ:163.23km/h
ヘアピン ボトム:83.93km/h
ダンロップ トップ:221.09km/h
ダンロップ ボトム:50.38km/h
13コーナー トップ:132.68km/h
13コーナー ボトム:85.65km/h
プリウス トップ:130.88km/h
プリウス ボトム:75.77km/h
パナソニック トップ:143.77km/h
パナソニック ボトム:72.85km/h

Chevrolet Corvette Grand Sport

シボレー コルベット グランスポーツ

「強力な効きを発揮するエアロパーツ。コーナースピードはシリーズ随一!」

昨年末にラインナップに追加されたGS(グランスポーツ)は、Z06と同じく1960年代から継承されているコルベットのスペシャルグレードである。

6.2リッターエンジンはZ51と同スペックだが、違いはシャシーの側にある。ボディはフェンダーアーチに追加されたリップによってZ51比で90mmも拡幅されており、もちろん装着されるタイヤ幅も最上級モデルであるZ06と同じサイズまでアップグレードされている。Z51ではフロント245、リヤ285というタイヤ幅だったものが、GSでは285/335まで膨れ上がるのである。

エアロも全周に渡って変更されており、フロントエンドに追加されたリップスポイラーの左右端には小さなカナードも追加されている。さらにリヤエンドに聳え立つ大型のスポイラーはエアダムと呼ぶに相応しい急勾配で、空気抵抗という観点で言えばドラッグ以外の何物でもない。

「同じパワーユニットを搭載するZ51より、ベストラップは1.6秒上回る」

轟音を奏でてホームストレートを通過していくGSは、確かにZ51よりも若干スピードが乗っていないように見える。だがそれでも、ラップタイムは1分55秒55という興味深い結果が出た。同じパワーユニットを搭載するZ51と比べストレートスピードは7km近く落ちているにも拘らず、ベストラップでは1.6秒も上回ったことになる。

「このクルマ、ブレーキのタッチがすごくしっかりしていますね」田中哲也は開口一番、ブレーキを褒めた。タイヤ幅が増してグリップが向上していることもあるが、GSのブレーキキャリパーはZ51の対向4ポットから6ポットへとアップグレードされている。ちなみにブレーキの銘柄はどちらもブレンボ製である。

「Z51を正しくチューニングして、エンジン以外のすべてのポテンシャルをアップさせた感じですね。『ストレートスピードは伸びていないな、ドラッグは大きいな』っていうのはわかるけど、その分高速でも低速でもコーナーが速くて気持ちがいい。ダウンフォースがものすごいです」

「グランスポーツは究極のハンドリングをもつコルベットだ」

GTレーシング譲りのエアロパーツで武装したシャシーファスターなGSは、見た目通りのポテンシャルを見せつけたかたちになった。『究極のハンドリングを持ったコルベット』──意外な表現に聞こえるかもしれないがコルベットGSの素性は、数値が証明しているのである。

90年代頃まではちゃんと効果が実証されていない見掛け倒しのエアロパーツも少なくなかったが、しかしシミュレーションや風洞が発達し、ニュルのようなステージでそれを実感することができる昨今、スーパースポーツカーの性能はエアロによって決まる部分も大きいのである。とはいえドラッグになるとわかっている大型のエアロを装着してでもラップタイムを削りにいくというアプローチには、どこか旧き佳きアメリカ臭さが薫るのも事実である。

「GSはテールを滑らそうと思っていても出ないくらいグリップがある」

「100Rを通過する時はポルシェ911なんかだと奥まで突っ込んでからクルッと向きを変えてヘアピンに向かっていくようなイメージなんですが、GSはダウンフォースがあるからじっくりと(スロットルを)踏みながら脱出までキレイなラインで通過していける。ギヤボックスもトランスアクスルだから前後の重量バランスも相当にいいんだと思います。Z51と比べればGSはさらにテールが出ない。滑らそうと思っていても出ないくらいグリップがある」

新車価格においてZ51より200万円強高いGSだが、アグレッシヴな見た目と、それに比肩するポテンシャルはしっかりと確認することができたのである。

Lap Time:1分55秒55

VBOX Sport DATA

スプリット1:00:25.94秒
スプリット2:01:02.75秒
ラップタイム:01:55.55秒
瞬間最大G 横:1.717
瞬間最大G 加速:0.635
瞬間最大G 減速:1.275
最高速度:246.17km/h
1コーナー トップ:246.17km/h
1コーナー ボトム:63.96km/h
コカ・コーラ トップ:189.02km/h
コカ・コーラ ボトム:118.17km/h
100R トップ:167.05km/h
100R ボトム:133.59km/h
ヘアピン トップ:158.69km/h
ヘアピン ボトム:77.29km/h
ダンロップ トップ:211.55km/h
ダンロップ ボトム:46.70km/h
13コーナー トップ:127.72km/h
13コーナー ボトム:88.04km/h
プリウス トップ:128.90km/h
プリウス ボトム:71.61km/h
パナソニック トップ:138.54km/h
パナソニック ボトム:72.08km/h

Chevrolet Corvette Z51

シボレー コルベット Z51

「乗りやすくしっかり曲がってくれる。直線番長ではなくコーナリングマシン!」

アメリカを代表するスポーツカー、シボレー コルベットに対する走りのイメージは人それぞれにあるだろう。レーシングドライバー田中哲也の場合は、先代のZ06がターニングポイントになっていた。

「ル・マンなどのレースではけっこう活躍していましたけど、Z06にFSWで乗せてもらってから、コルベットとサーキットというイメージが繋がった感じです」

今回は7代目となるC7コルベットの3グレードすべてのポテンシャルを、田中哲也がFSWでチェックした。最初にタイムアタックを敢行したモデルはZ51だった。

「アタック2ラップ目で、Z51はあっさりと1分57秒16を記録した」

Z51はコルベットのベーシックモデルに位置づけられているが、自然吸気6.2リッターエンジンの最高出力は466ps、最大トルクに至っては64.2kgに達している。これほどの高出力を8速ATによってシームレスに路面へと伝えれば、FSWのラップタイムは容易に2分を切ってくるだろう。

ドライバーモードセレクターは「トラック」。もちろんスタビリティコントロールはカットされている。ファーストラップで2分を切り、アタック2ラップ目で、Z51はあっさりと1分57秒16を記録した。

「乗りやすい。トラクションがしっかりあるし、曲がってくれる」

田中哲也の第一印象は、古いアメリカン・スポーツカー観が残っている人にとっては意外なものだったかもしれない。アメリカン・マッスルと言えば聞こえはワイルドだが、その現実はスピードを出すと乗りにくく、リヤサスがプアーなFR故にトラクションが掛からず、そしてフロントに載せられた重たいV8エンジンによって曲がらないというパターンが大半だったからだ。サーキットとオートマチック・ギヤボックスの相性はどうなのだろうか?

「アメリカンスポーツ特有のピーキーさのようなものがなくてビックリ」

「トルコンなので変速がリニアという感じはしませんね。パドルでシフトアップさせていっても、タイムラグがある。だからレブリミット一杯までエンジンを引っ張ってからシフトアップさせようとすると、回り過ぎてリミッターに当たってしまう。まあ慣れれば問題ありませんけど。それよりアメリカンスポーツ特有のピーキーさのようなものがなくてビックリしました。いい意味でアメリカ車らしくない。ブレーキング中のABSの効き方も自然な感じだし、リヤが滑っても挙動がわかりやすいので危なっかしくない。それに滑るって言っても、思っていたよりはるかにグリップがあってなかなか滑らないんですけどね」

現行のコルベットはV8エンジンを載せているとはいえ、ただでさえ重心の低いOHVユニットを、さらにドライサンプ・システムによって限りなく低いフロントミッドに搭載している。スポーツカーとして素性が良いのも頷ける。

「ベーシックモデルのZ51が、いきなりコルベットの印象を塗り替える」

「あと意外なのは、アメリカ車は直線番長っていうイメージがあったんだけれど、速く走れているなって感じるのは100Rとか高速コーナーなんですよ。ストレートも252km/h出ているから相当なものだけれど、イメージとしてはコーナーのクルマという感じ。まあコルベットはけっこうニュルを走っていますからね。ニュルで開発していれば、そんなに印象の悪いスポーツカーなんてできるわけがないんですよね」

ベーシックモデルのZ51が、いきなりコルベットの印象を塗り替えた。アメリカを代表するスーパースポーツは、代替わりするごとに着実に進化し、レーシングトラックで磨き上げられ、全方位的に速いマシンへと生まれ変わっていたのである。

Lap Time:1分57秒16

VBOX Sport DATA

スプリット1:00:26.00秒
スプリット2:01:03.46秒
ラップタイム:01:57.16秒
瞬間最大G 横:1.743
瞬間最大G 加速:0.614
瞬間最大G 減速:1.170
最高速度:252.94km/h
1コーナー トップ:252.94km/h
1コーナー ボトム:62.38km/h
コカ・コーラ トップ:190.79km/h
コカ・コーラ ボトム:113.74km/h
100R トップ:162.73km/h
100R ボトム:131.43km/h
ヘアピン トップ:155.75km/h
ヘアピン ボトム:78.49km/h
ダンロップ トップ:213.14km/h
ダンロップ ボトム:45.21km/h
13コーナー トップ:121.97km/h
13コーナー ボトム:83.10km/h
プリウス トップ:126.93km/h
プリウス ボトム:73.52km/h
パナソニック トップ:137.41km/h
パナソニック ボトム:68.78km/h

TESTER/田中哲也(Tetsuya TANAKA)
TEXT/吉田拓生(Takuo YOSHIDA)
PHOTO/森山俊一(Toshikazu MORIYAMA)、田村 弥(Wataru TAMURA)

【SPECIFICATIONS】

シボレー コルベット Z06

ボディサイズ:全長4515 全幅1970 全高1230mm
ホイールベース:2710mm
車両重量:1610kg
エンジン:V型8気筒OHVスーパーチャージャー
ボア×ストローク:103.2×92mm
総排気量:6153cc
最高出力:485kW(659ps)/6400rpm
最大トルク:881Nm(89.8kgm)/3600rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前P285/30ZR19 後P335/25ZR20
車両本体価格:1485万円

シボレー コルベット グランスポーツ

ボディサイズ:全長4515 全幅1970 全高1230mm
ホイールベース:2710mm
車両重量:1600kg
エンジン:V型8気筒OHV
ボア×ストローク:103.2×92mm
総排気量:6153cc
最高出力:343kW(466ps)/6000rpm
最大トルク:630Nm(64.2kgm)/4600rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前P285/30ZR19 後P335/25ZR20
車両本体価格:1227万円

シボレー コルベット Z51

ボディサイズ:全長4510 全幅1880 全高1230mm
ホイールベース:2710mm
車両重量:1580kg
エンジン:V型8気筒OHV
ボア×ストローク:103.2×92mm
総排気量:6153cc
最高出力:343kW(466ps)/6000rpm
最大トルク:630Nm(64.2kgm)/4600rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前P245/35ZR19 後P285/30ZR20
車両本体価格:1011万円

※GENROQ 2017年 4月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

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