504kmの航続距離を持つタイカンGTSの発表と同時に、タイカン、タイカンクロスツーリスモに続く第3のボディバリエーション、タイカン スポーツツーリスモの存在が明らかになった。まだ詳細は公開されていないが、その素顔をレポートする。(Motor Magazine 2022年2月号より)
0→100km/h加速は3.7秒のポテンシャルを発揮
ポルシェは、2021年にタイカンのバリエーションとして、シューティングブレークのクロスツーリスモを追加したが、今回、新たにスポーツツーリスモGTSを発表した。これは2021年11月に開催されたLAオートショーでデビューした3番目のバリエーションで、基本的にクロスツーリスモと同じボディを持っているが、オフロード向けのトリムは外され、スポーティにローダウンもされている。
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パワーはGTSの名前から想像できるようにスタンダードとターボの中間で最高出力は517ps、最大トルクは850Nmとなる。フロントとリアに搭載されるモーターによるダイナミック性能は0→100km/hは3.7秒、最高速度はリミッターによって250km/hに制御される。また搭載されるバッテリーの容量は93.4kWhで航続距離は424~490kmと発表されている。
エクステリアはクロスツーリスモで見慣れたスポーツワゴンで、フロントはもちろん、リアドアがルーフに合わせて高くなっているためにリアの居住性はセダンよりも優れている。また530~1296Lのラケッジルーム容量も変わらない。
新しいオプションとしては巨大なパノラマガラスルーフが用意され、明るさを場所に合わせて自由に調節できる機能を持っている。これはとくに日光に晒される後部座席のパッセンジャーにはありがたい装置だと思う。
高速走行性能に優れるスポーツツアラーBEV
1963年から続くポルシェの伝統GTSの特徴であるブラックフィニッシュはネームプレートとトリム、そしてダークヘッドライトなどがある。アグレッシブなブラックカラーのホイールに組み込まれる標準タイヤは20インチだが、テスト車にはオプションの265/35R21、305/30R21が装着されていた。またフロントブレーキは390mmのディスクにアップグレードされている。
インテリアもエクステリアと同様に黒ずくめで、ブラックレザーとマイクロファイバーが採用されており、さらにブラックコーティングのアルミライニングが、GTSオーナーにエクスクルーシブ性を訴えている。もちろん豊富なオプションから明るい色調のトリムやレザーフリー(人工皮革)を選択することも可能だ。
スポーツツーリスモGTSはスタート直後からその名前に恥じない洗練されたダイナミズムを見せてくれた。ターボと変わらないトルクからも想像できるように、アクセルペダルを踏み込んだ瞬間からの加速力は圧倒的で、メーターの数字はあっという間に法定速度のマイルを表示する。
ハイウェイにおけるこの巡行スピードでの安定感は抜群でLKA+オートクルーズをセットしての移動はまるで新幹線並みの気楽さだ。一方でポルシェが用意してくれたマウンティングロードではGTSの本質を垣間見ることができた。
このセッションではスタンダードよりもおよそ20%ハードにセットされたスタビライザーとPDCCによって、これまでのタイカンより一層、高いロードホールディングを見せてくれた。またフロントよりも出力の高いリアの電気モーターのお陰で後輪駆動重視のハンドリングが楽しめたのに加えて、コーナーではトルクベクタリングの働きで安定した姿勢と高い速度を保つこともできた。
こうしたスポーツドライビングを楽しめた一方で、BEVスポーツモデルが得意ではない報告もしておこう。それは航続距離である。このGTSも例外ではなく、カタログではWLTPサイクルで424~490kmの航続距離と記載されているが、このテストでも300kmをカバーすることができなかった。
これでは私もよく利用するフランクフルトからミュンヘンのおよそ400kmのルートを充電なしで走行することができない。この問題こそが現在、多くのEVが持っている未解決な領域であることは明らかで、このGTSも残念ながら例外ではなかった。
それにもかかわらず、現状のEVの中で、タイカンスポーツツーリスモGTSは最も魅力のある1台であることは間違いがない。その理由は、たとえ絶対的に少ないとは言え、現状では十分な航続距離と800Vの優れた充電能力、実用的なカーゴスペース、そしてポルシェの伝統を受け継いだスポーティな装いとそれに見合ったダイナミック性能である。
ポルシェジャパンではすでにタイカンGTSの予約注文を受け付けており、価格は1807万円と発表されているが、このスポーツツーリスモGTSに関してはまだ詳細は公表されていない。(文:木村好宏/写真:ポルシェAG)
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