積算1万1844km スポーツカー界のゴルフGTI
text:Mark Tisshaw(マーク・ティショー)
【画像】ポルシェ911 シンプルなカレラとターボS 全81枚
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
ポルシェ911を運転して最初に驚くことの1つに、使い勝手の良さがある。誤解を招くかもしれないが、スポーツカー界のフォルクスワーゲン・ゴルフGTIといえるかもしれない。長距離を安楽に移動できる、オン・オフのスイッチが付いているようだ。
これまで1600kmを走行しているが、ポルシェ911には適さないな、と思う場面は一度もなかった。ロードノイズは小さくないものの、ステレオの音量を上げれば気にならなくなる。
積算1万1941km 血のつながりを感じるタイカン
まもなく発表となるが、2020年の英国ベスト・ドライバーズカー選手権(BBDC)では、ポルシェ911ターボSが上位にランクインしている。水で覆われた難関サーキットを、四輪駆動のポルシェも駆け回った。
そのドライバーズカー選手権の審査会場へ、長期テストの911カレラで向かった。成長した古い職場に久しぶりにやって来た、そんな気持ちに少しなった。周りはすっかり変化している、そんな感じだ。
多くが500psを超えている中で、カレラは後輪駆動で控えめな385ps。今年のポルシェ911は四輪駆動で650psですよ、と。でも実際に運転してみて、安心もした。
ドライバーズカー選手権には、新しいポルシェ・タイカン・ターボSもノミネートしていた。4ドアの電気自動車だ。筆者にとっては初めてのタイカンへの試乗で、多くの点で911とは異なっていたが、血のつながりも感じさせてくれた。
シンプルな方がドライビング体験は濃密
タイカンの扱いやすさや安定性の高さ、シンプルな運転する喜びでは、911カレラと明らかに共通している。同時に、ターボSとの違いを体験することもできた。サーキットを走る前でも。
一般道では、911ターボSは正直パワフルすぎる。ポテンシャルの50%も出せば、法外な走りに到達してしまう。カレラの方が、ずっと自由に振り回しやすい。ターボSは、少々やりすぎのように感じてしまった。
素のカレラの加速力でも、運転免許証を奪われない範囲で、充分な爽快感を引き出せる。8速ツインクラッチ・オートマティック(PDK)のキックダウンも好感触。アクセルペダルの操作に対し、ATと同様に丁度いいタイミングでシフトダウンする。
シャシーはドライバーとの一体感を生み、深い対話が許される。運転の本気度が50%でも100%でも、ロードカーとしては、シンプルな911の方がより濃密なドライビング体験が得られると思う。
一方、サーキットでは逆のようだ。911ターボSは四輪駆動のトラクションで、見事なスタビリティを備えている。650psの猛烈なパワーを秘めていても、安全に素早く周回させられる自信があった。
ラップタイムでは、ターボSに並べるドライバーズカー選手権のノミネート車両はなかっただろう。しかしラップタイムが遅くても、より運転にのめり込ませてくれるクルマは存在していた。ターボSが、BBDCのベストに選ばれなかった理由でもある。
ポルシェ911というクルマの多様性
長期テストの911カレラは、びしょ濡れのサーキットに少し手を焼いていた。コーナーの入り口ではアンダーステアで、出口ではオーバーステアになる。
あの雨の天気が、コーナリングに大きな影響を与えていたことは間違いない。同時にターボSとの明確な違いは、まるで別のモデルのようですらあった。
ポルシェ911カレラは、クルマと一体になれる密なスポーツカーとしての能力に優れる。かたやターボSは、路面や天候を問わないスーパーカーとして能力に優れている。ポルシェ911というクルマの振り幅の大きさ、多様性を示すものだと思う。
今回の比較は、確かに極端ではある。でもカレラとカレラSとの間でも、体感できるほどの違いは間違いなくある。それがポルシェ911だといえるだろう。
テストデータ
気に入っているトコロ
リアシート:小さくても、過小評価はしないでほしい。使える荷物置き場となるから、911の日常性を高めている大きな要素だと思う。
気に入らないトコロ
メーターパネル:ステアリングのリムによって、両サイドの計器が見にくい。さらに幅が広すぎ、表示される情報量も多すぎると思う。
テスト車について
モデル名:ポルシェ911カレラ(英国仕様)
新車価格:8万2793ポンド(1117万円)
テスト車の価格:9万891ポンド(1227万円)
テストの記録
燃費:9.1km/L
故障:なし
出費:なし
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みんなのコメント
ポルシェらしさ、を感じる設計に驚き。明らかに以前借りたQ7と全く違う味付け。
タイカンも非常に人気で都内でも毎日見ます。うちもそろそろ街乗りはEVにしてもいいかなと考えてる次第。
当方もリッターバイクはGSが有る限り手放さないつもり。電車が普及してもSLに郷愁を誘われるのと同じかも知れないが。