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【真のアメリカン・スポーツ】デュポン・モデルG スピードスター 5.3L直8でル・マン参戦 後編

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【真のアメリカン・スポーツ】デュポン・モデルG スピードスター 5.3L直8でル・マン参戦 後編

インディ500用に作られたデュポン

執筆:Mick Walsh(ミック・ウォルシュ)

【画像】デュポン・モデルG スピードスターと同時期のデューセンバーグ・モデルSJ 全56枚

撮影:James Mann(ジェームズ・マン)

翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)


1929年7月のアイリッシュ・グランプリに、モデルG スピードスターのトランスミッション修理は間に合わなかった。マシンはニューヨークへ送り返されると、公道用モデルGへリビルド。しばらくはポール・デュポンが愛用したが、その後売却された。

1930年、ブリッグス・ウィーバー社は別のデュポンでインディ500に向けたマシン製作を開始。インディアナポリス・スピードウェイを経営するエディ・リッケンバッカーが定めた、ジャンク・フォーミュラと通称されたレギュレーションに誘惑されたようだ。

モデルAのシャシーが強化され、モデルG用のエンジンをチューニングし、大きな吸気ポートと2バレル・キャブレターが組まれた。トランスミッションはボルグワーナー社製の3速だった。

軽量な2シーターボディが与えられ、イエローに塗られたデュポンは1519kgに収まった。モラン・ジュニアはドライバーとして参戦。ハンドリングに難はあったものの、144km/hを出し7列目からのスタートを掴んだ。

順調にスタートするが、22周目で先行マシンがオイル漏れ。彼は避けようとするものの、ターン3でクラッシュしリタイアしてしまう。「マシンは制御できなくなり、ガードレールにヒットしました」。後日、モラン・ジュニアが振り返っている。

レースを終えると、モデルAのインディ・レーサーも公道用へ作り直された。ニューヨークのショールームに届けられると、特徴的なヘッドライトとスペアタイヤ、クラクションが戻された。ディーラーの整備士、カーターが長く乗っていたようだ。

映画アニーにも出演しているモデルG

インディ・スピードウェイを戦ったレーサーは、デュポン一家によって保管されてきた。2005年、ポール・デュポンのいとこに当たるランモットが再起を決意。ヒストリックカー・レースへの準備を始める。

スピードスターはピッツバーグ・ヴィンテージ・グランプリやモントレー・ヒストリックなど、戦前のスポーツカーによるイベントへ頻繁に参加。2015年にはペブルビーチ・コンクール・デレガンスに出展されている。

1928年7月から倒産する1932年1月までに製造されたデュポン・モデルGは、スピードスターを含めて273台のみ。現存は約30台で、その多くがデュポン一家が所有する。アメリカでは、カーコレクターが長年探しているブランドでもある。

化粧品で大富豪となったネザーカットが新車で購入したデュポン・モデルGは1956年に発見され、500ドルで売られた。18か月に及ぶレストアを経て、1958年のペブルビーチではベスト・イン・ショーを受賞している。

そのクルマは1982年のミュージカル映画、アニーの大道具として登場。オリバー・ウォーバックスのガレージに収められていた。

アメリカ・フィラデルフィアに住むカーコレクター、フレッド・シメオネも2台のデュポンを所有している。2シーターのモデルG スピードスターと、もとル・マン用4シーターのモデルG スピードスターだ。保存状態は素晴らしい。

2シーターのデュポンは、チャールズ・リンドバーグとともに飛行士として活躍した、スタッフォード・ランバートがオーナーだったクルマ。ボンソワール・グレーに塗られ、これまで3オーナーだという。

ベントレー・スピードシックスに似た質感

シメオネは、マーサー・レースアバウトやシェルビー・コブラ・デイトナまで、多彩なスポーツカーコレクションを所有している。その中に2台のデュポンが含まれていることにも、明確な意味がある。

「加速は素晴らしく、コンチネンタル・モータース社製のエンジンもパワフル。速さでは劣りますが、ベントレー・スピードシックスに似たフィーリングです。ブレーキは力強く、リジッドアスクルのサスペンションは乗り心地も悪くありません」

「デュポンは優れた品質を求めていました。ブレーキにトランスミッション、エンジンなど、得意とするメーカーの製品を適切に組み合わせ、裕福な顧客へ提供されていました」。シメオネが続ける。

「スタッツが高性能モデルの製造を中止して以降は、アメリカでは唯一、スポーティなクルマだったといえます。匹敵したライバルは、オーバーン・スピードスターくらいでしょうね」

そして今回ご登場願ったモデルG スピードスターは、1929年にロサンゼルスへ納車された別の1台。当時の価格は5335ドルだったという。ピーターセン自動車博物館を創設したロバート・ピーターセンが買い取る1980年代後半までは、放置されていたようだ。

モデルG スピードスターは展示前にレストアを受けたが、2015年に博物館の改修を受けると、限定公開コレクションとして地下室にしまわれた。アルミニウム製のボディに、流れるような高い位置のフェンダーと、塗装されたラジエターカウルが特徴だ。

アメリカ製の真のスポーツカー

大規模な自動車博物館ですら、デュポンにお目にかかることは難しい。ロサンゼルスの路上で目撃するなど、一生に一度限りの体験だろう。

ピーターセンのコレクションを維持管理するダナ・ウィリアムソンが、ウィルシャー・ブールバードをデュポン・モデルGで流す。運転席の位置は高く、眺めは良い。現代のロサンゼルスの交通に混ざるのにも助かる。

アールデコ調の歴史的な建築を鑑賞するのにも、適切な交通手段だ。車重は2t近くあるが、直列8気筒エンジンは威勢が良い。0-97km/h加速は16秒、最高速度は160km/hだという。

4速MTは、ダブルクラッチなしでもきれいにシフトダウンできる。乗り心地は硬めで、舗装の剥がれやマンホールを通過すると、ビンテージな揺れが伝わる。

ステアリングは小回りが効かず、3.5回転のロックトゥロックで、操舵にはかなりの筋力が求められる。対象的に、軽く踏めるペダルの油圧ブレーキは強力。ロッキード社製で、この年代のモノとしてはお手本のよう。

博物館の展示コレクションとして、近場の渓谷まで走ることは許されていない。モデルG スピードスターのハンドリングを、充分に試すことは難しい。当時のレポートでは、フロントが重いにも関わらず、バランスは印象的に良かったと残されている。

ル・マンとインディ500を戦ったデュポン・モデルG スピードスター。カーティス・クラフトやブリッグス・カニンガムなど、アメリカン・スポーツが開花する直前、予兆を示す貴重なモデルだったことは明らか。

1920年代末に生まれた、アメリカ製の真のスポーツカーだ。

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