この記事をまとめると
■ドアの開き方が個性的なクルマたちを紹介
「ドアだらけ」に「左右でドア違い」に「ドアがどこった?」まで! デザイナーアッパレな「珍ドア車」3台
■個性的すぎるが故に使い勝手が犠牲になっているモデルもある
■国産車でも挑戦的な機構を取り入れたクルマがあったが、評判が分かれて廃止になった例も
ドアのクセが強すぎるクルマたち
クルマのドアは乗り降りをする際に必要なものですが、デザイン的にはなるべく開口部が目立たないほうが美しかったり、安全性や走行性能的には開口部が大きいほど不利になってしまうなど、自動車開発においてはなかなか頭の痛い存在でもあるようです。
開き方にもさまざまあり、主流となっているのはドアノブを引くと手前に開くヒンジタイプのドアや、押入れの襖のように横に滑らせて開けるスライドドア。でも、なかにはどうやって開けるのかわからないような珍しいタイプや、「どうしてここにつけたの?」と不思議になるようなドアもあります。今回はそんな、ちょっと変わった開き方をするドアを持つクルマをご紹介します。
1台目は、後にも先にもおそらくこんなドアはないだろう、BMW Z1の「下にさがって格納されていく」ドア。1987年に発表されたZ1は、2シーターオープンスポーツカーとして華々しいデビューを飾り、2.5リッターの直列6気筒エンジンを搭載した先進的かつスポーティなスタイリングをしたモデルでした。
ソフトトップの幌で、ドアが閉まった状態では一見すると普通のオープンスポーツカーなのですが、よくよく見ると……? ドアノブがどこにも見当たりません。それに、ドアの後ろ、リヤフェンダーの上あたりに丸いボタンのようなものがあります。
じつはそれこそがZ1のドアの秘密で、ボタンを指で押してみるとスルスルと窓ガラスがドアパネルに格納されると同時に、ドアパネルが車体の下の方へ沈んでいくではないですか。これには見ている人もみんなビックリ。BMWの革新的技術によって実現したドアですが、サイドシルが高めに設置されており、そこに格納される仕組みとなっていました。
実際のユーザーからは、サイドシルが高いので乗り降りがしにくいと、あまり好評ではなかったようですが、安全性に関してはその分厚くガッシリとしたサイドシルが功を奏して、ドアを開けたままで走行しても十分な安全性が保たれるといわれていました。そんなクルマもなかなかないですね。
2台目は、ガルウイングといえばランボルギーニが有名ですが、斜め後方に引き上がるように開くシザースドアとは違って、まさに鳥が羽を広げるように開くドアが、テスラ・モデルXのファルコンウイングドア。モデルXは3列シートも選べるクロスオーバーSUVのため、後席の乗降性を考慮して生まれたドアなのですが、マンションの立体駐車場など狭い場所でも開閉できるよう、さまざまな工夫があるのも特徴です。
というのは、羽を広げるといっても最初から横に開いてしまうと開閉に場所を取るので、最初はドアが折り畳まれたまま上昇していき、上の方でゆっくりとドア先端部が跳ね上がっていくようになっているのです。おかげで、ドアの横に30cm程度のスペースさえあれば乗り降りが可能。
しかも、電動操作で障害物センサーが付いているため、屋根付き駐車場などで屋根や壁に当たりそうになると自動で停止するので安心です。
3台目は、英国の貴族たちがその昔、狩猟犬を伴って狩りに行く際に使ったのが始まりという、シューティングブレークをテーマとしてデザインされた、NEW MINIとなってからは初代となるMINIクラブマン。一見すると2ドアのクーペモデルのように見えるのですが、じつは後席と十分な広さのラゲッジがあり、よく見れば運転席側にもうひとつ、小さなドアが隠されています。これは運転席側のドアを開けてからでないと開閉できない、クラブドアと呼ばれるサブドアのこと。観音開きで開けることができ、後席へのアクセスがちょっとスムースになります。
その後、フルモデルチェンジしたクラブマンは一般的な5ドアになったため、あまり使い勝手がよかったとはいえないようですが、いつも1~2人で乗るから2ドアでクーペ的に使いたい、という人にはこの小さなサブドアがアクセントとなり、MINIらしい個性や遊び心の象徴となっていたのでした。
国産車にも冒険したモデルあり
さて、日本車にも面白いドアはあります。4台目は2015年に登場したホンダの5代目ステップワゴンに装備されていた、通称「わくわくゲート」という5つ目のドア。これはなんと、ラゲッジ側からの乗り降りを可能とするため、バックゲートに装備されていました。
Mクラスミニバンのステップワゴンは、3列目シートがくるりと回転して、床下に格納することができるのが大きな特徴。出っ張りも段差もないフラットなフロアになるので、それならここからも乗り降りできるようにしたら、狭い場所でも後席へのアクセスが良くなるのではないか、背の高い荷物や、狭い場所での荷物の出し入れがスムースになるのではないか、というところから実現したドアです。
実際のユーザーからは大好評で、「もうこのドアがないミニバンには乗り換えられない」といった熱烈な評価を受けていたそうです。ただ、バックゲートにどうしても縦の線が入ってしまうことから、後方視界が気になるという人や、生理的に苦手というユーザー以外の人たちの声も多く、残念ながら6代目となる現行モデルでは廃止となってしまいました。
5台目は、デザインにおいて常に果敢なチャレンジをしているマツダから、ついにロータリーエンジンが復活したと話題のMX-30 Rotary-EV。2020年のマツダ100周年を記念して、ハイブリッドやBEVが先行して登場していたコンパクトSUVですが、ロータリーエンジンを発電専用に搭載し、EVとして約107kmの走行が可能となるPHEVが追加で発売されました。
そのMX-30シリーズのドアは、最後のエンジンとしてのロータリー搭載車となったスポーツカー、RX-8でも採用していた観音開きドア。スポーツカーに採用した時にも驚きましたが、コンパクトSUVでの採用もほかに例がないもの。名称にMXと付いていることからも、ロードスター(欧州名でMX-5)などと同じスペシャリティモデルという位置付けであることが想像されますが、ドアにもその個性がしっかりと表現されています。
ドアの開け方は、まずフロントのドアを開けてから、リヤのドアを開けられるドアノブが出てきます。閉める時は、その逆の手順で閉めることになります。そのため、後席の人が自分で乗り降りするのはちょっと大変。実際のユーザーからは「子どもが勝手にドアを開けて降りてしまわないので安心」という声もありますが、やはり頻繁に後席のドアを開け閉めするような使い方にはちょっと面倒という声も。あくまで1~2人で乗ることが基本で、たまに後席を使うような乗り方にあっているようです。
ということで、ドアの開き方というのはそのクルマの個性となり、驚きや愛着をもたらすものですね。今後も、今までになかったドアの登場に期待したいと思います。
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みんなのコメント
そら、イセッタしかあるまい。
ボディサイドにドアが無いんだから。