復活のステップを重ねている最中
ランチアと聞いて、多くの方はストラトスやデルタ、037ラリーあたりを想像されることだろう。1906年に誕生し118周年を迎えたとなる古豪ブランドは現在、復活のステップを重ねている最中だ。
【画像】新型イプシロンなど近年ランチアが公開した写真たち 全117枚
ランチアにとって2024年2月14日は記念すべき日になった。5代目ランチア・イプシロンがデビューしたからだ。振り返ればランチアは不遇のブランドとなっていた。そもそも販売で苦戦していたところに、フィアットとクライスラーが統合した際に故セルジオ・マルキオンネ指揮のもと、クライスラー・イプシロンなど、両ブランドでモデルを共有したあたりで雲行きが怪しくなり、気がつけばイプシロンをイタリア国内のみで販売するローカルブランドとなっていた。
ところがマルキオンネが亡くなり、その後、FCAとPSAの両グループが統合し、カーガイで知られるカルロス・タバレスが率いるステランティスとなったことで、事態は好転した。ローカルではあるが、イプシロンは一時期イタリア市場Bセグメントのベストセラーカーとして細々と販売を続けてきたことが、CEOに就任したルカ・ナポリターノの元でブランド再興への道に繋がったのだ。
簡単に書けばイプシロン、デルタ、ガンマの3車種をEVとして販売するのが彼のプランで、2026年以降、ランチアは100%EVのみになると明言された。
1年間途切れなかったランチアの話題
2月14日に発表されたのは、創業年に合わせて1906台限定となる『イプシロン・エディツィオーネ・リミタータ・カッシーナ』。こちらは100%EVで、イタリアの高級インテリアブランドであるカッシーナとのコラボレーションとなった。
その後は3月にベルギーとオランダ市場復帰、新HFロゴ発表、4月にイプシロンのハイブリッド追加、5月にイプシロン・ラリー4HFでラリー復帰発表、6月にイプシロンHF追加、7月にフランスとスペイン市場復帰、ミキ・ビアジオンのラリーカーテスト発表、イプシロン1号車納車、10月に新型ガンマ(2026年発売)のティザースタート、12月にガンマをメルフィ工場で生産すると発表。この合間にもミッレミリアなど各種イベントにも参加し、1年間、ランチアの話題が途切れることはなかった。
当初は100%EVのみとされたが、世界的な販売状況を鑑みてハイブリッドと併売することになったものの、このあたりまでは当初の計画どおりだろう。ただここにきて、ひとつ懸念材料がでてきた。肝心のカルロス・タバレスが、12月2日に退任してしまったのだ。UK編集部のレポートどおり、2026年初めまでの任期があったが、北米での販売不振や利益縮小を受けて、責任を負わされた形となった。
振り返ってみると、ステランティスが誕生して多くのブランドが合流しながら、現在までひとつも消滅することがなかった。もちろん効率化は進んだが、リソースを共有しながら『生き残らせた』彼の手腕は評価されていいと思う。それで救われたであろう生産者やサプライヤーが多いことは容易に想像できる。もちろんファン心理もだ。
救われたランチアのファン心理
私は2006年にランチア・イプシロン・モモデザインを新車で購入し、現在も所有している。その前はデルタHFインテグラーレ16Vという、20年来のランチア乗りである。だから一時期、この業界関係者でさえも『ランチアは消滅した』と勘違いして書くほどの状況に、長年歯がゆい思いをしてきた。そんな心理が救われたのだ。
タバレス退任の影響が出るのは、早くても再来年。2026年のガンマまでは、若干の軌道修正があっても普通にデビューさせるはずだ。ということは、その先に控えている4代目デルタが不透明になる可能性がある。
乗り味やパフォーマンスの差を出しにくい100%EVにおいて、元々プラットフォームを共有する同じグループ内の車両をベースに、ちょっと高級に仕立ててきたランチアは、その歴史的強みを生かせる可能性があると思っているのだが、無責任に『ブランドを存続させよ』と書くつもりは毛頭ない。
現在ランチアは日本へ正規輸入されておらず、今後もディーラーの設備投資を考えれば現実的ではない。しかし周囲のイタリア車乗りたちの間では、それでも新型イプシロンを入手しようという動きがあり、私も状況を注視している。だから『存続せよ』ではなく、『存続して欲しい』という祈りの気持ちを、ここに文字で残しておくことにしよう。
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みんなのコメント
ベンツのマイバッハなどの様に、少しの間、フィアットのプレタポルテの
扱いにしてはどうかな?
そのうち紳士の乗るエレガントな車として完全復活してほしいけど。
クーペを出して欲しい
ベータクーペは大好きでした
昔のデザインの焼き直しは入らない
現代の解釈のランチャのクーペが見たい