先週、Bloombergが報じたニュースでは、サウジアラビアの政府系ファンドがF1を現オーナーのリバティ・メディアから200億ドル(約2兆6100億円)で買収することに興味を示したが、この提案は却下されたとのことだった。
情報筋によれば、政府系ファンドとリバティとの間で買収計画について真剣に話し合いが行なわれることはなかったようで、完全に正確な報道内容とは言えないようだ。ただ、F1に対する200億ドルという目を疑うような値札は、一部の人々の眉をひそめることとなった。
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F1を統括するFIAのモハメド・ベン・スレイエム会長もそのひとり。彼はその評価額は誇張されていると考えている。
もともと、リバティは2017年に44億ドル(約5750億円)という金額でF1を買収。仮に200億ドルという提示額が正しければ、リバティは驚くべき費用対効果を生み出したことを意味する。
しかし、F1の商業権を2110年まで貸し出すこととなっているFIAにとって、高額での売却は意図しない結果を招く可能性がある。
ベン・スレイエムは、F1を買収するために多額の資金を投じた新オーナーは、早期の投資回収を目指すだろうと指摘。その結果、レース主催者は大幅な開催料の値上げに直面することになるかもしれない。チケット代が高騰し、ファンがグランプリへ来るハードルが高くなる可能性があるのだ。
ベン・スレイエムは1月23日(月)に、こうした巨額の買収がもたらす影響についてTwitterを通じて懸念を表明している。
「モータースポーツを管理する者として、非営利団体のFIAはF1に200億ドルという膨れ上がった値札が付けられていることに懸念を抱いている」
「買い手となる可能性のある者には、常識を働かせ、F1のより大きな利益を考慮し、単なる多額の資金ではなく明確で持続可能な計画を提示するよう助言したい」
「レース主催者にとって、開催料やその他商業的なコストの増加、ファンへの悪影響など、将来的にどのような影響が出るのかを検討するのが我々の務めだ」
世界ラリー選手権(WRC)の2023年シーズン開幕戦ラリー・モンテカルロを訪れたベン・スレイエムは、サウジアラビアによるF1買収計画についてmotorsport.comに対して次のように語った。
「それは投資に見合う価値なのだろうか?」
「正直なところ、それは誇張されていると思う。大げさなモノだ。常識的に考えて、それだけの価値があるのだろうか?」
「(もしそうだとしたら)我々はどうなるのだろうか? そのお金を回収するために、値上げをすることになるだろう。では、一体いくら地元のレース主催者に請求するんだ?」
「私はただ、その根拠や論理を見ている。計画を立てなきゃいけないからね」
またベン・スレイエムは、F1の所有権は単に最高入札者に売却されるものではなく、このスポーツを改善するための具体的な提案を持つ組織にのみ渡されることが不可欠だと釘を差している。
「私は、彼らも計画を持っているべきだと思う」とベン・スレイエムは言う。
「誰であれ、お金だけでなく、計画も持っているべきだ。私はただ、その裏側にある論理的根拠を見ている。計画が必須だ」
「とはいえ、これまではウワサ話に過ぎない。しかし、FIAは選手権を所有しているのだから、FIAも話し合いに加わるべきだし、助言を与えるべきだと思う」
「我々がリースしているのは事実だ。しかし私はただ、我々が前進できるように話を明確にしておきたいんだ」
そして200億ドルというF1の評価額は、今世紀初めのマックス・モズレー会長時代に商業権が100年契約の一部としてわずか3億ドル(約390億円)強という額で貸し出されたところからは対照的だと、ベン・スレイエムは指摘している。
「仮に私が200億ドル受け取ることになったら、FIAはひどい目に遭うだろう」と彼は言う。
「正直なところ、100年で3億ドル、そして200億ドルという評価額には納得がいかない」
「これらの数字を見て理解しようとしても、ただただ意味が分からないよ」
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