いい数値をメモリしていく仕組み
各国の自動車メーカーが力を入れている、自動運転や人工知能(AI)の技術。すでにクルマのコンピュータが、ドライバーの運転の仕方やのクセなどを学習し、それが走りに反映させているという話を聞いたことがある人も多いのではないだろうか。こうしたコンピュータの学習機能は、エンジンの燃焼効率を高めたり、ATのシフトタイミングの調整などに活用されている。
エンジンに関していえば、コンピュータ=ECUは、あらかじめプログラムされたデータによって、パワーとレスポンスと燃費などが高次元にバランスするよう、空燃比と点火時期をコントロールしている。
しかし、何事も計算通りにいかないのが世の常で、出荷時にプログラムされたECUの点火・燃料MAPが、そのまま実際の走行でもベストになるとは限らない。気温や気圧の影響も受けるし、エンジン本体の個体差もあれば、周辺機器だって同じとは限らない。
そこで、いまのクルマのエンジンにはO2センサーをはじめ、各種のセンサーが多数ついている。そのセンサーの情報をもとに、ECUがリアルタイムに空燃比や点火時期を補正、最適化している。これがいわゆる「フィードバック制御」。ECUはフィードバックを繰り返していくうちに、いいデータ、いい数値をメモリしていく仕組みになっていて、これが「学習機能」と呼ばれている。
バックアップ電源をつながずに、バッテリー交換をすると、アイドリングが乱れたり、トルクやレスポンスが悪くなるのは、この学習機能で得たデータがリセットされてしまうため。
このように体感できるぐらいECUの学習機能の成果は大きいものがある。(リセット後も、ある程度距離を走れば再学習して元の調子を戻すはず)ただし、これらの学習機能は、基本的にメカニカルな部分や、気温や気圧などの二次的環境の変化に対するフィードバックなので、個人のドライビングスタイルやクセなどを反映しているとは言い難い。
その点、「学習機能付きAT」だと、ドライバーの運転傾向に合わせたプログラムを選んでくれる傾向がある。メーカーや車種にもよるが、おおよそ10パターンぐらいのプログラムがあらかじめ用意してあり、ドライバーの運転傾向に応じた変速パターンをそこからチョイスするといった仕組みになっている。自動車においても、コンピュータの制御技術は開発スピードも速いので、学習機能もこれからどんどん賢くなっていくことだろう。
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