直近では、車名が『Q』の文字で始まるSUVレンジのフラッグシップ、Q8をついに正式に発表。ここから時を遡っても、A6にA7スポーツバック、RS4アバントにA8……と、主だったものだけでも実にこれだけのモデルが、わずか1年ほどの間に全面刷新されている。
そんなニューモデルのニュースに限らずとも、ここのところのアウディは、同じグループに属するスポーツカー・ブランドであるポルシェと「電気自動車の共用アーキテクチャー”PPE”を開発して、2021年にその最初となるモデルを登場させる」と予告をしたり、「2025年までに20以上の電動化モデルを投入し、約80万台の販売を目指す」などと、野心的かつ具体的な近未来戦略を公にしており、これまで以上に活発な動きをアピールしている。2017年の世界販売は188万台近くと8年連続となる記録を達成させしており、勢いづいていることは間違いない。
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ミドルクラス・アウディの新型A6は、2018年春のジュネーブ・モーターショーのワールドプレミア・カー。古くは1960年代に登場した『アウディ100』の直接の後継であり、現在の名称であるA6になった1994年以降から数えると6代目となる。外観の変化については、従来型と大きくは変わっていないが、パネルの緊張感やプレスラインのシャープさなどが新型であることを主張している。
新鮮さにはやや乏しいとも言える一方で、従来型のデザインを強くリスペクトしたことを伺わせるその仕上がりには、安心感と好印象を抱く人も少なくないはず。ちなみに、LEDテクノロジーを駆使したヘッドライト/テールライトのグラフィックが凝りに凝っているのも、最新アウディ車に共通をするひとつの特徴である。
一方のインテリアは、一見して”フルモデルチェンジ”ならではという斬新さが漂う。
水平の層を重ねたようなモチーフのダッシュボードは、シンプルかつクリーンでワイド感が強調されている。上側に各種機能を選択可能なマルチメディア・システム、下側の、空調コントロールやドライブモードの選択などを担当する大型ディスプレイを2段重ねで置いた”MMIタッチレスポンス”も、最新モデルならではのモダンな印象を強める。アイコンのタッチ時にそれを触感として指先にフィードバックする機能も加えた、いかにもプレミアム・モデルらしい仕上がりだ。
とはいえ、センターコンソール上の大きなダイヤルとその周囲のメカスイッチにより、ブラインド操作が容易く行えた従来型が懐かしく思えたのもまた事実ではあった。
ポルトガルで開催された国際試乗会でテストドライブしたのは『55TFSIクワトロ』という、現時点でのガソリン・トップモデル。ちなみに最初の2桁の数字は、エンジンのパフォーマンスをイメージ的に示す新型A8から始まった新たな流儀にしたがうものだ。
搭載エンジンは3リッターのV型6気筒で、”TFSI”の呼称が示すようにターボ付きの直噴ユニット。組み合わされるのは7速DCTで、やはり「クワトロ」のグレード名から明らかなように4WDシャシーを採用している。さらに、昨今”電動化”に熱心なこのブランドらしく、全モデルがベルト駆動式のスタータージェネレーターを備えたマイルドハイブリッド・システムを採用していることも、新型A6の見どころのひとつだ。
始動時も含め、アイドリング・ストップからの復帰時も極めて静か、かつ滑らかに”プルン”とエンジンが目を覚ますのは、マイルドハイブリッド・システムのひとつの特徴。高速クルージング中のアクセルOFFによってタコメーター指針が”ゼロ”を示すシーンもしばしばある。それに気が付かない限り、ショックやノイズの類は実際上、皆無だ。
アルミニウムなどが多用されているものの、大柄なサイズとゴージャスな装備ゆえ重量は1825kgとそれなりにあるのだが、動力性能には常に余裕がある。ちなみに、マイルドハイブリッドではあるが、走行中は常にエンジンが稼働状態にあり、スタータージェネレーターの出力も12kW≒16psとごくわずかなので、”EV走行感”はないに等しい。
試乗車両が遮音ガラスやエアサスペンションのオプション装着していたことも関係をしていそうだが、それにしてもその静粛性の高さには驚いた。実際、19インチ以上のサイズのものには内部に特殊な吸音スポンジを挿入したタイヤを設定するなど、”静かさ”にはことのほか気を遣っている。
しなやかな乗り味も大きな特徴で、走り始めて即座に”良いクルマ感”にタップリ浸ることが出来る。高速安定性に優れるのもさることながら、ポルトガルでは多々お目に掛かるヘアピン状のターンでは、リアの同位相操舵制御が実現する「A3と同等」というコンパクトな最小回転半径の恩恵を、たびたび実感できた。派手さはないが、ギュッと凝縮された中身の濃さが売り物——。新型A6には、やはりドイツ車らしい質実剛健さが満ち溢れて、グレードアップしている。
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