この記事をまとめると
■スポーツカーブランドのバイクはこれまでありそうでいてじつは少なかった
永遠の論争に決着! 4輪と2輪はドッチがどのぐらい速いのか?
■ロータスやアストンマーティンの名を冠したバイクファクトリー製モデルがある
■ワンオフモデルならフェラーリのバッジを付けることを許されたバイクも存在する
往年のロータスF1を感じさせるクールなバイク
スポーツカーブランドが、クルマ以外にその名を冠した製品やサービスをリリースすることが増えてきました。ポルシェのマンションや、フェラーリのテーマパーク、あるいはレクサスのクルーザーなどなど。それぞれブランディングやビジネス戦略が絡んでいて、調べていくと面白いのですが、ここでふと気づきました。
クルマブランドが作るバイク、これってあるようでいてじつに少ないのです。エンジン作って、シャシー考えて、タイヤやダンパー組み合わせたら、ちょいちょいっと操安性をいじくれば出来そうなのに! これ、おおざっぱに言うと「クルマとバイク、開発はまったくの別物」&「バイク? クルマと違って儲からないよ!」というふたつの理由からみたいです。たしかに、前述のマンションやクルーザーのほうがはるかに儲かりそうなこと、素人考えでもわかりますからね。ホンダやスズキって、やっぱり偉大なのか!
ですが、世の中にはスポーツカーブランドのバイクが喉から手が100本出るほど欲しい人も少なからず存在しているのです。とりわけイギリス人のバイク好きときた日には、かのロータスやアストンマーティンさえもその気にさせてしまったのでした。
まずは、ロータスの名がつけられたバイク「C-01」ですが、ぶっちゃけてしまうと設計開発はドイツのコデワ・パフォーマンス・バイク社というカスタムバイクファクトリーでして、ロータス・エンジニアリングは指一本ふれてもいません。
とはいえ、デザイナーはダニエル・サイモンという英国人で映画「トロン・レガシー」に出てきた仮想バイクをデザインした人物。そういえば、長いホイールベース(1645mm±15mm)をはじめ、どことなくSF的なテイストも漂っています。ちなみに、サイモン氏はポルシェのレストモッドで話題の「シンガーDLS」のデザインを担うなど、人気と実力のある方のようです。
エンジンは75度のVツインで、1.2リッターの排気量から約200馬力を絞り出しました。油圧クラッチやスリッパーシステムなど、さすがハイパワーバイクだけに「わかってる」装備も満載。注目すべきはフレーム&ボディワークで、高張力鋼、チタン、カーボンファイバーといった本家ロータス顔負けのハイブリッド構成とし、乾燥重量181kgを達成していること。乗らずとも、猛烈なパフォーマンスであること、容易に想像がつきます。なるほど、これなら冗長なほどのホイールベースでないとおちおち全開にもできません。
また、ロータスファンにとって憎いのは、歴代ロータスのカラーリング、すなわちJPS(ジョン・プレイヤー・スペシャル)やBRG(ブリティッシュ・レーシング・グリーン)+開口部のイエロートリム、あるいはF1のロータス79からインスパイアされたマルティーニストライプなどが用意されているのです。
これはロータスマニアでなくとも、ガレージに置いときたくなること間違いありませんね。
アストンマーティンの伝統と近未来的イメージをバイクに凝縮
さて、バイク好きなイギリス人は前述の通りですが、年季が入っていることも他国とは段違い。アストンマーティンのバイクは、そんな年季の入ったスペシャルバイクファクトリー「Brough Superior(ブラウ・シュペリア)」の手によるもの。なんといっても、創業100年を超えるプレミアムブランドですから、かのアストンもフリーハンドで依頼したと噂されるほどなのです。
AMB001と名付けられたこのバイク、注意深く見ればウインカーやバックミラーが装備されていないことに気づくでしょう。つまり、サーキット専用モデルとして製作されており、限定数100台のみ(ちなみに1号車は例によってLAのピーターセン自動車博物館に納められました)。
「老舗中の老舗たるブラウだけに、スペシャルといっても保守的かもね」という大方の予想をぶっちぎって、いろいろと尖っています。例えば、フロントサスペンション。BMWバイクの一部が採用しているシングルダンパーのダブルウイッシュボーン方式を採用して、軽量化と路面追従性の向上を狙っています。
また、ホンダなどではおなじみの手法ですが88度Vツインエンジンがリヤアームと結合されフレームとしての役割も担っています。ツインエンジン搭載モデルの弱点、ホイールベースが長くなるのを嫌った設計でしょう。なお、乾燥重量180kgに180馬力ですから、やはり本領はサーキットがふさわしいパフォーマンス。
そのほか、ターボ搭載はそれほど目新しくはありませんが、可変ジオメトリ化したのが今どきっぽい。エンジンの電子制御とあわせて、ターボラグを感じさせないリニアなパワー曲線を描いてくれることでしょう。そのわりに、マフラーは超耐熱金属のインコネルを用いるなど、ギミックというか小技が垣間見えるのがイギリスらしいっちゃらしいですね。
さて、ここまでは少量ながらも量産されたマシンですが、じつはワンオフモデルの中にも魅力的なマシンが存在しています。例えば、フェラーリのバッジを公式につけたマシン「フェラーリ900」は、長らくMVアグスタのエンジニアを務めたデヴィッド・ケイ氏の熱意が生んだ珠玉の1台。バッジを許したのはエンツォ・フェラーリの息子、ピエロルイジで、ケイ氏の「エンツォに捧げたい」というフレーズに胸打たれたそうです。
中身も大したもので、4気筒直列900ccのエンジンはフルスクラッチビルド! ケイ氏によれば、古いMVアグスタのレストアで培った腕前を発揮したとのこと。また、倒立フォークや6ポッドのフロントブレーキキャリパーなど「やる気満々」な装備も跳ね馬エンブレムにはふさわしいもの。
デザインを担当したのはテリー・ホール氏とされ、エッジの効いたアルミボディはテスタロッサをイメージしたとのことで、シート下のインテークに面影が垣間見えます。製造は95年なので、テスタはフラッグシップでしたからね。
このマシンは数回オークションにかけられていますが、ボナムズのリストによれば車重は172kg、最高速265km/hとの記載があります。もっとも、手に入れたオーナーの誰もがそれを試そうとはしないでしょう。
MVアグスタといえば、日本人企業家がMVアグスタにザガートデザインによるワンオフモデルを発注していました。その名も「F4Z」。つまり、アグスタのトップモデルF4をベースに、ZAGATOが作ったってこと。
デザインも同カロッツェリアのチーフデザイナーを務める原田則彦氏で、アルミやドライカーボンを用いたスタイリングは「さすがザガート!」の一言に尽きます。筆者も実車を目にしましたが、存在感から細部に至るまでそりゃもう一級の芸術品と呼びたくなるクオリティ。ですが、フェラーリ900と同じく、畏敬の念からとても道に走り出そうと思えなかったことも付け加えておきましょう。
とにかくクルマとバイクのコラボとは夢のある話。いっそのこと、アルファロメオがアプリリアのV4エンジン使ったバイクを作って二輪版「クアドリフォリオ」を作ったり、フォードがマスタングのプロモかなにかでキアヌ・リーブスのバイクメーカー「アーク」によるBOSS429ならぬBOSS0.429、つまり700ccのマシン作ったりしたらおもしろいのに(映画「ジョン・ウィック」でキアヌがBOSS429に乗ってます)などと、皆さんも夢想してみてはいかがでしょう。
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