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【電動のネオクラシック】エリーゼ・ベースのテスラ・ロードスター 先進企業の起源 前編

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【電動のネオクラシック】エリーゼ・ベースのテスラ・ロードスター 先進企業の起源 前編

フェラーリより速く、プリウスより高効率

執筆:Alastair Clements(アラステア・クレメンツ)

【画像】テスラ・ロードスターとロータス・エリーゼ 最新のテスラ モデル3とYも 全96枚

撮影:Will Williams(ウィル・ウイリアムズ)

翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)


このまま進めば、内燃エンジンのみで走る新車を2030年以降の英国では買えなくなる。その5年後には、ハイブリッドも選べなくなる。電気自動車だけの未来は確実に近づいている。

電気自動車は、必ずしも新しい技術とはいえない。これまでも、純EVは買おうと思えば選べた。スピードレコードの更新を目的に1899年に製作されたラ・ジャメ・コンタントというマシンも、エネルギー源はバッテリーだった。

純EVは環境に優しいかもしれない。だが、今以上の利便性や楽しさを提示することが、自動車メーカーの課題だと思う。過去にとらわれることなく。

電気自動車という技術を積極的に推し進める企業といえば、テスラ社を思い浮かべるだろう。だが15年ほど前は、強気なボスが型破りなビジョンを掲げる、ベンチャー企業の1つに過ぎなかった。

その創成期に生み出されたのが、テスラ・ロードスターだ。「フェラーリより速く、プリウスよりエネルギー効率は優れています。なぜ他のスポーツカーが必要なのでしょう。これより遅く、環境を悪くするようなクルマがお好みですか?」

当時はテスラへの投資家の1人だったイーロン・マスク氏は、熱く語った。2004年から、強力に事業を推進しながら。

そもそもテスラ・ロードスターは、インターネット事業で成功したマーティン・エバーハード氏とマーク・ターペニング氏がスタートさせたもの。グーグルの創設者、ラリー・ペイジ氏やセルゲイ・ブリン氏も投資する、新世紀のプロジェクトとして。

スポーツカーらしいハンドリングを求めて

起業した2人は、野心に溢れていた。だが、クルマづくりに対する経験は不足していた。

そこでエバーハードとターペニングは、英国へパートナーを求めた。2004年のロサンゼルス・モーターショーで出会ったロータスの伝説的技術者、ロジャー・ベッカー氏がプロモーションするエリーゼが、理想的なベースになると直感したらしい。

熱意的な2人の提案を、ロータスは受諾。2006年7月のブログに、エバーハードは次のように記している。「テスラとして初めてのモデルには、正真正銘のスポーツカーらしいハンドリングを求めていました。そこでロータスへアプローチしたんです」

「ロータスは、最高のハンドリング性能を持つスポーツカーで知られています。エリーゼのシャシーは、天才による作品です」

その後、テスラはロードスターとエリーゼとの差別化に取り組む。エリーゼとの共通部品は10%にも満たないとしていたが、深い関係性を隠すことはできなかった。プロポーションだけでなく、フロントガラスやルーフ、ドアミラーにもエリーゼの香りが残る。

ロータスでプロジェクト・マネージャーを務めたトニー・シューテ氏は、「ロードスターの計画は、エリーゼをカットして組み直すことから始まりました。根本的な変更は、いくつも加えられています」。と話している。

エリーゼの派生モデル感が漂う見た目

その1つが、乗降性を良くする目的でサイドシルの高さを下げたこと。シャシーのサイドレールは乗員空間の後方で切断され、ホイールベースが2インチ伸ばされている。

カーボンファイバー製のボディは、フランスの企業が製造を請け負った。だがデザインを担当したのは、ロータス・デザイン部門のバーニー・ハット氏だ。

「当初、ボディの一部はエリーゼから流用されると考えていました。独自部品のデザイン・コストは、手強いものになりますから。しかしイーロン・マスクは弱気な考えをしないよう、われわれを説得したんです」。と、エバーハードが後に振り返っている。

最終的に完成したロードスターは、巧妙にデザインされているが、エリーゼの派生モデル感が残る。造形的に抑揚の強いエリーゼ・シリーズ2と比べると、スタイリングはクリーンで現代的だ。全長がプラスされ、落ち着いた雰囲気がある。

ホイールアーチのサイドマーカーと、少し長めのインパクト・バンパーを装備し、北米市場を強く意識していることは瞭然。灯火類もテスラのオリジナルで、見える殆どがエリーゼとは異なる。

改良されたアルミ製サブフレームには、駆動用のリチウムイオン・バッテリーを搭載。駆動用モーターは、三相AC誘導モーターで、大きさはサッカーボール程度だという。重量が増え、サスペンションの構造はそのままながら、強化されている。

シャシー製造はエリーゼと同じラインで

エリーゼの技術を利用することは、生産スピードの面でも、北米市場での認可の面でも、理にかなっていた。エアバッグやABS、クラッシュ構造などには手が加えらておらず、そのまま認証を受け継ぐことができた。

テスラ社創業から3年後の2006年7月、最初のロードスターがカリフォルニア州サンタモニカ空港でのイベントで関係者にお披露目された。11月のサンフランシスコ・モーターショーでは、9万8950ドルの価格を付けて、一般公開された。

ロードスターのシャシーは、エリーゼやエキシージと同じ生産ラインで、英国・へセルの工場で製造。北米仕様はボディが載せられた状態でカリフォルニア州サンカルロスへ運ばれると、テスラ社製のエネルギー貯蔵システム(ESS)が搭載された。

最初のオーナーはマスク氏と決まっていたが、実際に納車されたのは発表から1年以上空いた2008年2月。英国市場向けの右ハンドル車はすべてロータスで仕上げられ、2010年に発売されている。

電気自動車がまだ珍しい存在だった時代に、ロードスターは間違いなくニッチ・モデルといえたが、バッテリーで320km以上という航続距離は画期的と呼べるもの。テスラは最短3.5時間で、最長392kmぶんの電気を充電できると主張した。

ジョージ・クルーニー氏とアーノルド・シュワルツェネッガー氏も早々にロードスターをオーダー。テスラへの注目を集めることに一役買っている。

気をかけるべき部分は3つある

国でテスラ・ロードスターに詳しい1人が、ルイス・ブラック氏。電気自動車に魅了され、このテスラに落ち着いたという。

ルイスは乗って楽しむだけでなく、クラシックカーに詳しいドリュー・ウィーラー氏とともに、テスラ・ロードスターの英国市場を開拓。5年間で11台を販売している。英国を走っているのは60台程度だから、相当な割合に関わっていることになる。

「オーナーは、どんなクルマなのか事前には充分知りません。最も売るのが難しいクルマといえるでしょう。構造は驚くほどシンプルですが、走っている理屈を理解する必要はあります」

「テスラ社で働いていた経験を持つメカニック同士のネットワークが、世界中にあります。ロードスターには、気をかけるべき部分が3つあるといえますね」。ルイスが説明する。

「バッテリーが充電できない場合、対応策はありません。もう使えないので、英国では2万ポンド(310万円)から3万ポンド(465万円)かけて、バッテリーを交換することになります」

「もう1つは、パワード・エレクトロニクス・モジュール(PEM)と呼ばれる部品。これの交換は、リビルド品か新品かで値段が変わりますが、4000ポンド(62万円)から1万ポンド(155万円)くらい」

「残りの1つが、電圧400Vのコントローラー。シーリング不良で水が侵入すると、修理に1000ポンド(15万円)から1500ポンド(23万円)くらい英国では必要になります」

この続きは後編にて。

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みんなのコメント

1件
  • エリーゼベースのEVとしては、マグナ傘下時代のクライスラーが、ダッジEVとして発表したことがあった。それから数年後、明らかに同じ車が今度はデトロイト・エレクトリックという戦前の電気自動車の名跡をしょって発表され、すぐに消えた。こういう怪しい企画に逐一関わっているロータスという会社も、一筋縄ではいかないと思う。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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