■ガラパゴスの印象が強い日本独自規格の軽自動車
今やコンパクトカー並みの性能を実現している軽自動車。日本だけの規格としてガラパゴス的に進化し続けてきました。かつては衝突安全性がネックでしたが、各メーカーの技術開発によって、昨今はシャシもボディも十分な強度を持つようになっています。それでも海外にあまり輸出されていないのはいったいなぜでしょうか。
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軽自動車の定義は、ボディサイズが全長3400mm×全幅1480mm×全高2000mm以内、エンジン排気量は660cc以内(最高出力は自主規制で64馬力まで)、最大4名乗車で貨物積載量350kg以下となります。
この枠のなかで、日本の各メーカーがしのぎを削って競争してきた結果、今ではDOHCターボエンジンやマイルドハイブリッドを搭載するのも当たり前になり、衝突被害軽減ブレーキや追従型クルーズコントロール(ACC)といった先進安全装備も充実してきました。
さらに使い勝手よし、燃費よし、価格もリーズナブルと、総合バランスが非常に高いカテゴリーになっています。
しかし海外では「軽自動車」という規格が存在せず、税制面でのメリットが無いため、日本のメーカーも軽自動車をそのまま海外で販売ことには積極的ではありません。
逆に、小型の輸入車を国内で軽自動車として展開する例もあり、スマート「フォーツー」は、その小ささから2002年に日本の軽規格に合わせた「スマートK」を過去に発売しています。
また、イギリスのスポーツカーであるケータハム・セブンもスズキ製エンジンを搭載した「セブン160」が日本で販売されて話題になりました。
■軽自動車は世界進出していた!? 東南アジアで独自発展する経緯とは
じつは軽自動車の海外販売も歴史は古く、スバル「360」は1961年にオーストラリアの現地ディーラーが73台販売し、1968年からは北米市場へ正式に輸出されて約1万台を販売。軽商用車のスバル「サンバー」も北米に輸出されていました。
ダイハツを代表する軽自動車の「ミラ」も1980年代から「クオーレ」の名前でヨーロッパ市場に輸出。排気量の規制がないのでエンジンは途中から排気量アップされ、最終的には1リッターエンジンを搭載。しかし残念ながら2013年に欧州での販売を終了しています。
さらにミラは、東南アジアのマレーシアでも販売された歴史があります。
ダイハツとマレーシア資本の合弁会社、プロドゥア社が1993年に設立されて、ダイハツ車のOEM生産を開始。3代目ミラは「カンチル」の名で製造・販売され、「クリサ」は5代目ミラをベースにしたモデルで、その後継の「ビバ」は6代目ミラがベース。
2014年に登場した現行モデルの「アジア(Axia)」はミライースのプラットフォームをベースにするなど、ダイハツは軽自動車を東南アジア市場に合わせたカタチにアレンジして現地生産しているわけです。
現地生産といえば、南アジアにおけるスズキも語らないわけにはいきません。
1981年にインドでマルチ・スズキ・インディア社を設立し、初代「アルト」とそのセダン版「フロンテ」の兄弟に800ccエンジンを載せて「マルチ800」としてインドで製造販売。その後一度だけモデルチェンジし、2014年まで生産されていました。
インドで2019年1月に発売された新型(現地で3代目)「ワゴンR」は、日本の6代目ワゴンRと同じ最新プラットフォーム「ハーテクト」を採用しています。
ボディサイズは全長3655mm×全幅1620mm×全高1675mmで、エンジンは直列3気筒1リッターまたは直列4気筒1.2リッターを搭載。軽規格とはまったく関係ないコンパクトカーになっているのです。
一方スズキはパキスタンでも、現地法人のパックスズキ社を通して現地生産と販売をおこなっています。
2014年からワゴンRの1リッター仕様を製造し、「キャリイ」は「ボラン」(ワゴン)、「ラヴィ」(トラック)の名で販売。
さらに2019年には日本と同じ660ccのアルトの製造販売を開始しました。現地の道路事情を考慮して最低地上高が15mm高くなっている以外はほぼ日本仕様のままで、バカ売れしているとのことです。
※ ※ ※
このように、日本で販売される軽自動車をベースとしてモデルはおもに東南アジア市場で人気を博しています。日本独自の軽自動車規格ではないものの、実質的に軽自動車は世界に進出しています。
しかし、軽自動車の魅力である「実用性」は、日本国内の法規や交通事情に特化しすぎた結果といえますので、東南アジアや南アジアで現地用にアレンジして販売する形で発展しているのです。
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