現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【試乗】フェラーリ ローマとF8トリブートのV8ツインターボエンジンに誘われ官能の時を過ごす

ここから本文です

【試乗】フェラーリ ローマとF8トリブートのV8ツインターボエンジンに誘われ官能の時を過ごす

掲載 更新 3
【試乗】フェラーリ ローマとF8トリブートのV8ツインターボエンジンに誘われ官能の時を過ごす

「スーパーカー」という呼び方がひときわ似合うブランド、それがフェラーリだ。その中で、いま大いに誘惑されうる存在なのが、V8エンジンを搭載するふたつの最新モデルである。それぞれの持ち味と性格を掘り下げてみたい。(Motor Magazine 2020年7月号より)

ローマのキャッチフレーズは「新甘い生活」
スクーデリアフェラーリが設立されて90周年を迎えた2019年は、フェラーリにとってまさに歴史的な1年となった。まず、ロードカーの販売台数が史上初めて1万台を超えて1万131台を記録。加えて1年間で5台のニューモデルを発表したこともフェラーリにとっては初の試みだった。2019年にベールを脱いだのはF8トリブート、SF90ストラダーレ、812GTS、F8スパイダー、そしてローマの5台。ここではローマとF8トリブートという2台のV8モデルを取り上げることで、フェラーリの現在と未来について考えてみたい。

【くるま問答】最近のクルマにテンパータイヤはない。パンク修理キットをどう使う? 最高速は?

フェラーリといえばV12エンジン、と即答するファンは少なくないだろう。では、V12エンジンに対するV8エンジンの位置付けとはどのようなものなのか?一見すると複雑そうに見えるフェラーリのポートフォリオであるものの、実はエンジン形式とモデルのキャラクターという視点で捉えると、意外にもシンプルな構成であることに気づく。

ここでポイントになるのが「スポーツカー」と「グランドツアラー」の違いである。端的に言えば、スポーツカーは短距離走が得意なスプリンターで、グランドツアラーはロングドライブで最良の一面を見せるモデルと考えればいい。そしてフェラーリは、スポーツカーとグランドツアラーを実に明確に区別しているのである。

V12モデルでいえば、812スーパーファストは「妥協なきスポーツカー」と説明されているが、同じV12モデルでもGTC4ルッソは「スポーティなグランドツアラー」と位置づけられている。

一方のV8モデルでは、F8トリブートを「新しいミッドエンジンスポーツカー」と紹介するが、ローマのことは「新しいミッドフロントエンジン2+クーペ」と呼び、スポーツカーには分類していない。ローマと近い関係にあるコンバーチブルモデルのポルトフィーノも「新しいV8 GT」との位置づけ。つまりローマとポルトフィーノはどちらもグランドツアラーと見ていいことになる。

続いて同じV8モデルのローマとF8トリブートについて、さらに掘り下げてみよう。19年11月にイタリアの首都ローマで行われた発表会において、ニューモデル「ローマ」のキャッチフレーズは「NuovaDolce Vita(ヌオーヴァ ドルチェ ヴィータ)」つまり「新甘い生活」と説明された。

「甘い生活」は1960年に公開された映画で、ローマで暮らす上流階級の人たちのユニークな日常を巨匠フェデリコ・フェリーニ監督が描いた名作である。そんな古典的作品とフェラーリのニューモデルの間に、どんな関係があるというのか?

フェラーリといえば、スポーツカーにしてもグランドツアラーにしても、走りの性能が真っ先に話題になる。しかしローマの狙いは少し異なっていて、「富裕層のライフスタイルに似合うクーペモデル」として企画された。もっとわかりやすくいえば、「ミリオネアが普段遣いするのに相応しいクルマ」ということであろう。

裕福なオーナーが日常の足として使うなら、他のフェラーリのようにスポーティさを前面に打ち出したデザインよりも、控えめでエレガントなスタイリングの方が好ましい。もちろん上質さも重要だが、この点、フェラーリであれば心配は無用。さらにいえば市街地で快適な乗り味も欲しいところだ。その一方で、たくさんの人数が乗れる必要はないが、買い物やちょっとした手回り品を置くのにリアシートはあった方が便利だろう。ローマは、こんな風に発想されたモデルなのである。

とはいえ、ノーズに「カヴァリーノランパンテ(跳ね馬)」を戴く名門の出身であるからには、パフォーマンスを軽視するわけにはいかない。そこでV8ツインターボエンジンには最新のチューニングを施してポルトフィーノ+20psの最高出力620psを達成。コンバーチブルのポルトフィーノとは異なりフィックスドクーペとなるため、車重が72kgも軽い上に、ボディ剛性では曲げ方向で7%、捻り方向で14%もポルトフィーノを上回っているという。さらに見逃せないのがトランスアクスル方式のギアボックスで、SFストラダーレと同じ最新の8速DCTを搭載。軽量化と低重心化を同時に達成したのである。

フェラーリのテクニカルオフィサーであるミハエル・ライタス氏によれば、F1マシンと基本構造が同じだというこの新型ギアボックスはかなり高価だとのこと。このために、ローマの価格はポルトフィーノを上回っているが両車はほぼ同列で、ギアボックスの違いは「新しい製品にはより新しいテクノロジーを投入する」というフェラーリの原則が生かされた結果と捉えられる。

フェラーリV8ミッドシップスポーツの集大成がF8トリブート
続いてF8トリブートについて紹介しよう。モデル名の「F8」は、V8エンジンを積んだフェラーリのスポーツカーを指す。また、トリブートは英語のトリビュートと同じで「賛辞」「感謝の印」の意味。

フェラーリは、V8ミッドシップスポーツモデルの源流が1975年デビューの308GTBにあると定めており、そこから数えて40年以上になるV8スポーツカーの歴史を称えるモデルとして、F8トリブートを発表したのだ。つまり、フェラーリV8ミッドシップスポーツの集大成がこのF8トリブートなのである。

ハードウエアのベースは前作の488GTBで、エンジンは構成的には488GTBと同一だが、吸排気バルブのリフト量を増やしたり排気バルブが開いている時間を拡大するなどして吸排気効率を改善。

エキゾースト系をインコネル製として軽量化を図るとともにパイプ径の拡大で背圧を低下させたほか、ターボチャージャーにスピードセンサーを設けて過給圧制御をより厳密に行うなどした結果、最高出力は+50psの720ps、最大トルクは+10Nmの770Nmを達成。40kgの軽量化とあわせて0→100km/h加速2.9秒(488GTB:3.0秒)、0→200km/h加速は7.8秒(同8.3秒)を実現した。

シャシ面では空力効率が10%も向上しているほか、最新の電子デバイスであるフェラーリダイナミックエンハンサー「プラス」を搭載。高精度な制御により、限界領域のコントロール性を改善したとフェラーリは主張する。

私はF8トリブートをフィオラノテストコースやマラネロ周辺の公道で試乗したが、とりわけ印象的だったのが滑りやすい路面でのドライバビリティで、タイヤの滑り始める過程がわかりやすいほか、操舵系のリニアリティが高いために修正を行いやすいなどのメリットが認められた。また、スタビリティコントロールの進化も著しく、従来はリアタイヤがスライドする以前にトラクションコントロールを効かせてこれを防止していたのに対し、F8トリブートでは横滑り自体を制御してスロットル操作への介入が減った結果、ドライバーがコントロールできる余地が増え、ファントゥドライブ性が向上したと評価できる。

では、今後のフェラーリV8はどのような方向に進んでいくのだろうか?19年に発表されたSFストラダーレは「フェラーリのフラッグシップとして君臨する初のV8モデル」と説明された。F40もV8モデルだったが限定生産なので、カタログモデルとしてはSF90ストラダーレが初となるという認識のようだ。SFストラダーレはプラグインハイブリッドのパワートレーンを搭載しているので、ついにフェラーリにもダウンサイジングとハイブリッド化の波が押し寄せた、と見ていい。

となれば、現状のV8モデルはどうなるのか?フェラーリはすでにV6エンジンを追加すると言明している。ただし、その場合でもパフォーマンス面での後退は許されないはずだから、ハイブリッドシステムが組み合わされると考えるのが自然。一方でV12は今後もラインナップされるほか、早ければ21年にも初のSUV「プロサングエ」がデビューする。つまり、ラインナップは今後も拡大されていく、ということになる。マラネロがアクセルペダルを緩める気配は、どうやらなさそうだ。(文:大谷達也)

■フェラーリ ローマ主要諸元
●全長×全幅×全高=4656×1974×1301mm
●ホイールベース=2670mm
●車両重量=1570kg
●エンジン= V8DOHCツインターボ
●総排気量=3588cc
●最高出力=620ps/5750-7500rpm
●最大トルク=760Nm/3000-5750rpm
●駆動方式=FR
●トランスミッション=8速DCT
●車両価格(税込)=2682万円

■フェラーリ F8トリブート主要諸元
●全長×全幅×全高=4611×1979×1206mm
●ホイールベース=2650mm
●車両重量=1435kg
●エンジン= V8DOHCツインターボ
●総排気量=3902cc
●最高出力=720ps/8000rpm
●最大トルク=770Nm/3250rpm
●駆動方式=MR
●トランスミッション=7速DCT
●車両価格(税込)=33280万円

[ アルバム : フェラーリ ローマとF8トリブート はオリジナルサイトでご覧ください ]

こんな記事も読まれています

アプリリア「RX125」【1分で読める 原付二種紹介 2024年現行モデル】
アプリリア「RX125」【1分で読める 原付二種紹介 2024年現行モデル】
webオートバイ
軽なのにベッドが二段! ダイハツ アトレーがベースの軽キャンパー
軽なのにベッドが二段! ダイハツ アトレーがベースの軽キャンパー
月刊自家用車WEB
トラックGメンもうすぐ「創設1周年」 しかし、ちゃんと機能しているのか? 荷主の報復に運送会社いまだ怯える現実
トラックGメンもうすぐ「創設1周年」 しかし、ちゃんと機能しているのか? 荷主の報復に運送会社いまだ怯える現実
Merkmal
[N-BOX]が[スペーシア]に負けるなんて…絶対王者 N-BOXに何が起こったのか!?!?!?
[N-BOX]が[スペーシア]に負けるなんて…絶対王者 N-BOXに何が起こったのか!?!?!?
ベストカーWeb
アルファードもいいけどプリウスでもOK!! ファミリー層に先代プリウスを激推しするワケ
アルファードもいいけどプリウスでもOK!! ファミリー層に先代プリウスを激推しするワケ
ベストカーWeb
キャデラック「エスカレード」誕生25周年!ブラックアクセントの特別限定車発売
キャデラック「エスカレード」誕生25周年!ブラックアクセントの特別限定車発売
グーネット
ライダー困惑! バイクは第1通行帯以外走っちゃダメ! 沖縄の珍交通ルールがついに廃止に!
ライダー困惑! バイクは第1通行帯以外走っちゃダメ! 沖縄の珍交通ルールがついに廃止に!
ベストカーWeb
「人とくるまのテクノロジー展 2024 NAGOYA」 過去最多の出展社389社を記録!
「人とくるまのテクノロジー展 2024 NAGOYA」 過去最多の出展社389社を記録!
グーネット
アルファードがライバル!? レクサス・LM「魅惑の6人乗り仕様」
アルファードがライバル!? レクサス・LM「魅惑の6人乗り仕様」
グーネット
ペットと旅するキャンピングカー「ソラン」に全長5m超のロングモデル登場!レクビィ
ペットと旅するキャンピングカー「ソラン」に全長5m超のロングモデル登場!レクビィ
グーネット
ホンダ 新型「フリード」純正アクセサリー発売!2つのコーディネートスタイル提案
ホンダ 新型「フリード」純正アクセサリー発売!2つのコーディネートスタイル提案
グーネット
急きょ参戦のロバンペラ「チームを助けるためにベストを尽くす」/WRCポーランド 事前コメント
急きょ参戦のロバンペラ「チームを助けるためにベストを尽くす」/WRCポーランド 事前コメント
AUTOSPORT web
アストンマーティン特別車「ヴァリアント」発表 最高出力“745PS”を発揮!世界38台限定
アストンマーティン特別車「ヴァリアント」発表 最高出力“745PS”を発揮!世界38台限定
グーネット
カスハラ対策が急務!!  いい加減にしてくれマジで…販売店はディーラーマンを一刻も早く守って!!!!
カスハラ対策が急務!!  いい加減にしてくれマジで…販売店はディーラーマンを一刻も早く守って!!!!
ベストカーWeb
BMW「4シリーズ クーペ/カブリオレ」発表 新デザインのLEDヘッドライト採用の改良新型
BMW「4シリーズ クーペ/カブリオレ」発表 新デザインのLEDヘッドライト採用の改良新型
グーネット
元フィギュアスケーター小塚崇彦がコドライバーに初挑戦。寺尾悟と組み、TGRラリーチャレンジに出場へ
元フィギュアスケーター小塚崇彦がコドライバーに初挑戦。寺尾悟と組み、TGRラリーチャレンジに出場へ
AUTOSPORT web
純正パーツのようなフィット感!ジムニー専用設計のドアアームレスト発売 カーメイト
純正パーツのようなフィット感!ジムニー専用設計のドアアームレスト発売 カーメイト
グーネット
ブガッティ「トゥールビヨン」発売!最高出力1800PSの新型ハイパーカー
ブガッティ「トゥールビヨン」発売!最高出力1800PSの新型ハイパーカー
グーネット

みんなのコメント

3件
  • F8の価格が3億超えてるw
  • ローマは未試乗ですが、F8は首都高を含む市街地を数時間試乗しました。ピスタのような刺激はなく、かなりマイルドです。排気音も3割減といった感じで、過去乗ったV8ミドのフェラーリの中で最も普段使いできそうだと感じました。意外にも812より気楽に運転できるので、納車が楽しみです。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

3245.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

4050.04980.0万円

中古車を検索
F8トリブートの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

3245.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

4050.04980.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村