現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 「カマキリ」と呼ばれ異彩を放つダブルプロリンクの輝き!! ホンダ「RC125M」完全勝利への道

ここから本文です

「カマキリ」と呼ばれ異彩を放つダブルプロリンクの輝き!! ホンダ「RC125M」完全勝利への道

掲載 5
「カマキリ」と呼ばれ異彩を放つダブルプロリンクの輝き!! ホンダ「RC125M」完全勝利への道

 ホンダのレース用ファクトリーマシンの車名は「RC」の頭文字で呼称されます。モトクロスの排気量125ccクラス用ファクトリーマシンは、排気量とモトクロスの頭文字「M」を加えて「RC125M」のように呼ばれます。

 1981年の「RC125M」だけでも何種類もの仕様が存在しますが、ここで紹介するバイクは「カマキリ」の愛称で呼ばれ、モトクロスファンのみならず、ベテランのバイク好きにもお馴染みの1台です。

ホンダ「VT250F」は「NR」の血統を継ぐ驚異の水冷4ストロークVツインクォーターだった

 一度見たら忘れない、他のバイクとは全く異なるフロント周り。ホンダのチャレンジ精神を具現化したようなフロントサスペンションは「ダブルプロリンク」と呼ばれています。

 1960年代後半から1970年後半までの約10年間で、モトクロス用バイクは一気に進化しました。とくに注目すべきは、サスペンションストロークが約100mmから300mmまで伸びたことです。この長さはタイヤの作動範囲=路面からの衝撃を吸収できる余裕幅でもあり、ジャンプの高さや飛距離も大幅に伸びていきます。

 さて、フロントサスペンションの前に「プロリンク」について説明します。

 伸びたストロークに対応するため、リアショックアブソーバー(以下、リアショック)は前傾(レイダウン)したり、前方に設置(フォワード)されました。しかしストロークが300mmとなると、それも限界に至ります。

 大幅な構造改革が望まれる中で、リアショックの1本化は他社に先行されたものの、ホンダはその取り付け下部にリンクを追加し、ジャンプでの着地等でもしっかり踏ん張りながら、小さなギャップにも作動性の良い「プロリンク」を開発し、その後のホンダの快進撃の大きな力となります。

 この1本リアショック+ボトムリンクはモトクロスのみならず、世界中の多くのバイクに採用され、スポーツバイクの定番的リアサスペンションシステムとなりました。

 一方、この特殊なフロントサスペンションですが、そのベースは欧州のエンジニアが試作した「リビフォーク」です。1979年にモトクロス世界GPで試作版リビフォークのバイクに世界チャンピオンのロジャー・デコスタ選手が乗っています。

 翌1980年、そのデコスタ選手がホンダに移籍してリビフォークを紹介。ホンダはパテントを取得してファクトリーマシンに採用し、「ダブルプロリンク」が誕生します。

 通常のテレスコピック式のフロントフォークに比べると複雑な構造に見えますが、前輪は数カ所のリンクを介して直線的にストロークします。その様子がカマキリの前足の曲げ伸しに見えることから、「カマキリ」の愛称で呼ばれています。

 長いモトクロスの歴史の中でも注目度の高い1台ですが、実戦への投入は僅かです。最初に我々の目の前で走行したのは、1980年の全日本選手権最終戦、鈴鹿サーキットのMXコースでした。

 当時のホンダチームは仕様の違うバイクを何台も用意していたので、練習や予選でダブルプロリンク車が走っていても、決勝では保守的な仕様のバイクを選ぶことが多かったようです。

 写真の「RC125M」は、ホンダコレクションホールに展示されている、1981年の北海道大会で東福寺保雄選手のライディングで優勝した1台です。

 東福寺選手はこのレース前の水曜に練習走行で転倒し、肋骨を骨折しました。しかしチャンピオンを獲得するためには欠場はできません。その時に何台も用意されたマシンの中からチョイスしたのが、ダブルプロリンク装着車でした。

 ストローク初期が柔らかく、路面からの身体への衝撃を緩和してくれるダブルプロリンク装着車は、骨折の痛みをカバーするサスペンション性能により、両ヒートとも1位の完全優勝となり、この年の東福寺選手のタイトル獲得への一翼を担いました。

 ダブルプロリンク車はこの他にも、サスペンションユニットが上部に1本など様々な仕様が確認されており、試作も含めると多くのバリエーションが存在し、この全日本での優勝後も研究は続けられたようです。

 リアサスペンションのプロリンクで大成功を収めているだけに、ホンダはいずれ市販車「CR」シリーズにもダブルプロリンクを採用したいと計画していたはずです。しかしテレスコピック式フォークの性能向上もあり、それ以降の実戦で活躍はなく、市販車の「CR」シリーズに採用されることもありませんでした。

 モトクロスバイクはレース専用車でありながら、毎年世界中に何万台も販売される市販車です。当時の激烈なモトクロスバイクの覇権争いが「カマキリ」を産みだした訳ですが、ある意味では、タイトル獲得以上にホンダのプレゼンスを象徴するバイクではないでしょうか。

■ホンダ「RC125M」(1981年型)主要諸元エンジン種類:水冷2ストローク単気筒ピストンリードバルブ総排気量:124cc最高出力:32PS以上/11000rpm最大トルク:2.1kgm以上/10500rpm変速機形式:常時噛合式6段サスペンション(前):ダブルプロリンクサスペンション(後):プロリンク

【取材協力】ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)

関連タグ

こんな記事も読まれています

新型[デリカ]が衝撃デザインでデビューへ!! [クルマが透ける]機能まで!? 2026年登場で600万円か
新型[デリカ]が衝撃デザインでデビューへ!! [クルマが透ける]機能まで!? 2026年登場で600万円か
ベストカーWeb
ベンツが神話だった70年代の「W123」…驚きの安全性と最新テクノロジーは当時の国産車では足元にも及べない知恵が詰まっていました
ベンツが神話だった70年代の「W123」…驚きの安全性と最新テクノロジーは当時の国産車では足元にも及べない知恵が詰まっていました
Auto Messe Web
ブリヂストン 新スポーツタイヤ「ポテンザ RE-10D」発売 サーキットでのタイム短縮追求
ブリヂストン 新スポーツタイヤ「ポテンザ RE-10D」発売 サーキットでのタイム短縮追求
グーネット
サーキットも普段使いも!クラシカルなフルバケット「ジータIVクラシック」発表 ブリッド
サーキットも普段使いも!クラシカルなフルバケット「ジータIVクラシック」発表 ブリッド
グーネット
メガーヌ R.S.のように旋回? 新型ルノー・ラファールへ試乗 ドイツ銘柄からの顧客獲得へ期待
メガーヌ R.S.のように旋回? 新型ルノー・ラファールへ試乗 ドイツ銘柄からの顧客獲得へ期待
AUTOCAR JAPAN
竹岡圭さん「XCRスプリントカップ北海道」参戦!三菱&トーヨータイヤがサポート
竹岡圭さん「XCRスプリントカップ北海道」参戦!三菱&トーヨータイヤがサポート
グーネット
シンプルデザインで車内にマッチ タテ・ヨコ回転OKの車載スマホホルダー シズカウィル
シンプルデザインで車内にマッチ タテ・ヨコ回転OKの車載スマホホルダー シズカウィル
グーネット
アウディの充電施設、2か月で600名利用 新料金プランでサービス提供開始 東京・紀尾井町
アウディの充電施設、2か月で600名利用 新料金プランでサービス提供開始 東京・紀尾井町
グーネット
WECの“カスタマー締め出し”にポルシェが警告。10メーカー参戦の2025年、残枠はわずかに『2』か
WECの“カスタマー締め出し”にポルシェが警告。10メーカー参戦の2025年、残枠はわずかに『2』か
AUTOSPORT web
V8×MT×FR採用! 新型「スポーティセダン」初公開! “青感”高めた「豪華内装」が超カッコイイ「CT5-V ブラックウイング ル・モンストルE」アメリカに登場
V8×MT×FR採用! 新型「スポーティセダン」初公開! “青感”高めた「豪華内装」が超カッコイイ「CT5-V ブラックウイング ル・モンストルE」アメリカに登場
くるまのニュース
マクラーレン 初のEVスーパーカー計画、現在の技術では達成困難 「支援」要請
マクラーレン 初のEVスーパーカー計画、現在の技術では達成困難 「支援」要請
AUTOCAR JAPAN
駐車の際の「前向き」「後ろ向き」問題…日本での正解をお教えします! 米国で「前向き」が多いのは防犯上の理由もありました
駐車の際の「前向き」「後ろ向き」問題…日本での正解をお教えします! 米国で「前向き」が多いのは防犯上の理由もありました
Auto Messe Web
ハースが「文句なし」のダブル入賞。ペレスを抜き返したヒュルケンベルグが今季ベスト6位/F1第11戦
ハースが「文句なし」のダブル入賞。ペレスを抜き返したヒュルケンベルグが今季ベスト6位/F1第11戦
AUTOSPORT web
【最長/最深トンネル爆走】 ベントレー新型コンチネンタルGTスピード オープンのGTCも同時発表
【最長/最深トンネル爆走】 ベントレー新型コンチネンタルGTスピード オープンのGTCも同時発表
AUTOCAR JAPAN
『ビースト』という名のスクールバス!? 90名乗車でEV航続241km、米国で納車開始
『ビースト』という名のスクールバス!? 90名乗車でEV航続241km、米国で納車開始
レスポンス
復活するIGTC鈴鹿が『1000km』&控えめなエントリー目標である理由「長距離に慣れているチームがほとんどない」
復活するIGTC鈴鹿が『1000km』&控えめなエントリー目標である理由「長距離に慣れているチームがほとんどない」
AUTOSPORT web
新型「4WDスポーツ車」初公開! レトロな「丸目」に超ハイパワー「V型8気筒エンジン」搭載! “日本専用”の特別なベントレーに衝撃の声!
新型「4WDスポーツ車」初公開! レトロな「丸目」に超ハイパワー「V型8気筒エンジン」搭載! “日本専用”の特別なベントレーに衝撃の声!
くるまのニュース
デコトラの命ともいえる電飾! LEDが台頭するもいまだ電球派もいる理由とは?
デコトラの命ともいえる電飾! LEDが台頭するもいまだ電球派もいる理由とは?
WEB CARTOP

みんなのコメント

5件
  • gpr********
    2気筒もあったろ!
  • fzr********
    ありましたね。
    確か当時、東福寺選手が乗ってましたね。
    2気筒もあったような。
    でも結局車重が重すぎで役立たずだったような・・・
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村