EV普及が進む英国 充電事情を紹介
EV(電気自動車)の購入を考えるとき、頭に浮かぶことの1つは「充電にいくらかかるか」ということだろう。一般的に、EVの車両価格は同クラスのエンジン車よりも高い。その価格差を埋めることはできるのだろうか。
【画像】英国でいま最も「アツい」EV【ベストセラーのテスラ・モデルYを写真でじっくり見る】 全30枚
今回は、EVの普及が進んでいる英国の充電事情を取り上げたい。家庭での充電、公共施設での充電、そして時間帯による料金の違いなどを紹介する。結論から言うと、英国ではエネルギー価格が大きく変動しているが、うまく工夫すればガソリン代を払うよりも安く充電することができる。
特に、電気代が最も安くなる夜間に自宅で充電できると有利だ。しかし、公共の充電施設に頼っていると、EVとエンジン車のランニングコストの差は縮まってしまう。その理由の1つが「税金」の違いだ。
例えば、英国の一般家庭用の電気料金にはVAT(付加価値税、日本の消費税のようなもの)が5%かかるのに対し、公共充電器では20%かかることになる。実際、公共充電器を使って充電すると、同クラスのガソリン車を満タンにするのとほぼ同じコストがかかってしまう。
もちろん、もっと安い公共充電器もあるが、充電速度がそれほど速くはないし、便利な場所にあるわけでもない。
自宅で充電するといくらかかる?
英国のEVオーナーの大半は、自宅で充電している。その方が安いだけでなく、バッテリーがフル充電の状態で朝を迎えるので、とても便利だからだ。もちろん、クルマの車種や電力会社の料金プランにもよるが、最近の電気料金の高騰を考慮しても、従来のガソリン車やディーゼル車と比べてお金を節約することができる、というのがAUTOCAR英国編集部の意見だ。
例えば、バッテリー容量64.8kWh、航続距離約460kmを謳うキア・ニロEVを充電する場合、現在の平均電気料金である1kWhあたり27ペンス(約49円)で計算すると、フル充電にかかるコストは約18ポンド(約3300円)となる。
一部の電力会社やプロバイダーは、EVオーナー向けに特別料金プランを用意し、夜間充電の料金をさらに安くしている。例えば、オクトパス(Octopus)社のあるプランでは、1晩あたり最低6時間、1kWhあたり7.5ペンス(約13.8円)で電力を利用できる。出力7kWの充電器があれば、わずか3.15ポンド(約580円)でニロEVをほぼ3分の2まで充電できることになる。仮にこの料金だけで64.8kWhのバッテリーをフル充電できたとすると、そのコストはわずか4.80ポンド(約880円)で、一般世帯のエネルギー価格上限の5分の1になる。
加えて、自宅にソーラーパネルがある場合、充電器によっては「無料」で得た電気をEVに供給でき、さらにコストを抑えられる(ソーラーパネルの設置費用は別として)。また、EVに蓄えた余剰電力を電力会社に「売電」するという双方向充電の試験も行われている。
カンパニーカー(社用車)として勤務先の会社から支給されたEVを自宅で充電する場合、電力がどのように使用されたかを証明しなければならない。そうした面倒事はあるが、EVで出張した場合、走行距離1マイル(約1.6km)あたり9ペンス(約16.5円)を請求することができる。
家庭用充電器の設置費用は?
EVの所有にこだわり、自宅で充電するのであれば、最大7kWで充電できる専用の壁掛けユニット(ウォールボックス)を使うのがベストとされる。
充電器メーカーはさまざまあり、レイアウトもテザー式(充電ケーブルが固定されているタイプ)とアンテザー式(車種ごとに異なるソケットやケーブルを選択できるタイプ)の2種類から選ぶことができる。
いずれにせよ、家庭用充電器の設置には資格を持った電気技師が必要だ。価格はピンキリだが、おおむね500~1000ポンド(約9万~18万円)かかると予想される。スコットランドでは、充電器の設置費用に対して400ポンド(約7万3000円)の補助金が支給される。
また、一戸建ての持ち家でこれからEVを購入する場合、ウォールボックスと設置工事を無料で提供してくれるメーカーも少なくない。
公共の充電施設での料金は?
英国の公共充電施設は数多くあり、車種や利用方法によって最適解が異なる。例えば、外出先で充電する頻度が高い場合は、従量課金方式を選ぶという手もある。一般的に1kWhあたり20ペンス(約36.7円)から1ポンド(約183円)で、DC急速充電器の方が高く設定されている。
インスタボルト(Instavolt)社は従量制を導入しており、非接触決済で1kWhあたり75ペンス(約137円)で利用することができる。他には、1時間あたりの料金(事実上の駐車料金)に加えて消費電力あたりの料金を請求するプロバイダーもある。
長距離移動が多いのであれば、BPMパルス(BP Pulse)社といったプロバイダーが月額8ポンド(約1470円)弱のサブスクリプション・サービスを展開しており、9000台の充電器で割引が適用されるほか、一部のAC充電器を無料で利用できる。
利用にはスマートフォンアプリが必要だが(一部の古い機種にはRFIDカードが必要)、50kWと150kWのDC急速充電器では1kWhあたり63ペンス(約115円)、7kWのAC充電器では1kWhあたり44ペンス(約81円)が課金される。また、多くの充電器が非接触型クレジットカードによる従量課金で利用可能で、その場合、AC充電器は1kWhあたり59ペンス(約108円)、DC急速充電器は1kWhあたり79ペンス(約145円)となる。
一部のホテルやショッピングセンターでは、利用客に充電器を無料開放している。
英国では各プロバイダーのスマートフォンアプリが普及しているため、充電器の場所と利用料金を確認し、自分のニーズと予算に合った充電器を簡単に探すことができる。
また、多くの自動車メーカーが独自の充電プランを提供している。例えば、アウディのeトロン・チャージング・サービスでは、20社近くのプロバイダーを利用できるほか、すべての新車EVに最初の1600km分の充電クーポンが付属している。
テスラ・スーパーチャージャー
テスラのオーナーは、専用の急速充電ネットワーク「スーパーチャージャー」に加え、ホテルなどに設置された充電器「デスティネーション」も利用できる。2017年以前に登録されたモデルSとモデルXは無料充電の対象となり、2022年12月15日から2023年1月12日の間に購入した一部のオーナーは、約9600km分の充電が無料となる。
それ以外のテスラオーナーは有料となる。夜間のオフピーク時は49ペンス(約90円)、オンピーク時は59ペソ(約108円)である。テスラはまた、バッテリーが満充電になっても駐車したままにしておくと、他のユーザーが素早く利用できるよう「アイドル料金」を設定している。スーパーチャージャー・ステーションが50%以上埋まっている場合、満充電の状態で駐車していると1分ごとに50ペンス(約92円)、100%埋まっている場合は1ペンス(約183円)になる。
テスラは、英国のスーパーチャージャーの一部を他社製EVでも利用できるように開放している。また、2023年8月30日、欧州スーパーチャージャー・ネットワーク構築10周年を記念して、当日限定で英国内のすべての充電器をすべて無料開放した。
アパートに住んでいても充電できる?
アパートやマンションなど集合住宅に住んでいて、家庭用のウォールボックスを利用できない場合でも、EVを充電する方法はある。英国では最近、街灯に付属する充電器が増えてきているのだ。石油会社シェルの支援を受けているユビトリシティ(Ubitricity)社は、英国最大の7000台の街頭充電器を展開している。
出力は約5.5kWで、高速というわけではないが、日中は1kWhあたり40ペンス(約73円)、深夜から午前7時までは37ペンス(約68円)となっている。利用するには35ペンス(約64円)の接続料と、フル充電には25ポンド(約4590円)の事前認可料がかかる。
高速道路の充電料金は高い?
高速道路のサービスステーションで充電する場合、料金は少し高くなるが、その主な理由は急速充電器が多く設置されているためだ。最近までエコトリシティ(Ecotricity)社のみがプロバイダーとして参入し、約300台の充電器を展開していたが、現在はイオニティ(Ionity)社など他社も加わっている。
エコトリシティ社は2021年、自社の充電ネットワークをグリッドサーブ(Gridserve)社に売却した。グリッドサーブ社は充電器をアップグレードし、350kWの急速充電器の増設に取り組んでいる。現在、ACとDCの両方の充電器があり、いずれも最大使用時間は45分。22kWのAC充電器の利用料金は、1kWhあたり49ペンス(約90円)である。
DC急速充電器は120kW、180kW、350kWに対応し、従量課金制で利用できる。グリッドサーブ社は最近料金を改定し、すべてのDC充電の利用料金を1kWhあたり69ペンス(約127円)に統一したが、事前認可料はわずか1ポンドに引き下げられた。ただし、一部の施設では35ポンド(約6400円)となっている。
ライバルのイオニティ社は、1kWhあたり74ペンス(約136円)とやや高めだが、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ、ジャガーといった自動車メーカーとの提携により、対象車種で割引が適用される。さらに、すべての充電器が最大350kWの急速充電に対応している。
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
10トン超えのバッテリーを搭載して航続距離500km……ってホントにエコ? 大型トラックはBEVよりもFCVのほうが最適解
日産復活のカギはやっぱり[新型マーチ]!? ヤリスやフィットを超えるコンパクトカー誕生なるか!? 2025年度に発売確定!
こ、これアウトランダーじゃね!? 決算説明から見えた[日産PHEV第1号車]は三菱からのOEMか?
高速道路を「トラック横並び完全封鎖」で渋滞…むかつく風景が日常茶飯事な「意外な理由」とは? 逆に嫌がらせしたら「免許返納」レベル! 思わぬ「うっかり交通違反」にも注意
「これが売れなかったら四輪撤退…」→超ロングセラーに! 世界の「シビック」を生んだ“妙な納得感のある理論”とは
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?