かつてのイメージはもはや過去の話?
ネクセン、ナンカン、ハンコック、クムホ、ケンダ、マキシス、フェデラル……これらは近年話題になっている格安アジアンタイヤのブランドです。欧米自動車メーカーの新車装着タイヤはもちろん、日本国内向けの日本車に新車装着されてきたブランドもあります。なかには70年以上の長い歴史を持つブランドや、日本のタイヤメーカーと技術提携をして高品質なタイヤを供給しているメーカーもあります。
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日本ではまだ一般的ではありませんが、世界では市場構造に大きな変化が起こっており、かつてブリヂストン、ミシュラン、グッドイヤーの3社で半数以上を占めていたシェアが、アジアンタイヤの台頭により2015年には38%まで下落しています。
アジアンタイヤの魅力のひとつである価格を、輸入タイヤ販売のオートウェイ(福岡県苅田町)で扱われている同タイプ、同サイズのタイヤで比べてみました。いずれもネット販売価格で、税込みになります。
●205/50 R16 タイヤタイプ「エコ」
・ROADSTONE(ネクセン)「CP672」205/50R16 87V 4940円
・ナンカン「ECO-2+(Plus)」205/50R16 87V 5000円
・ファルケン「ZIEX ZE914 Ecorun」205/50R16 87V 8590円
・ブリヂストン「SNEAKER SNK2」205/50R16 87V 9590円
エコタイプのタイヤですと、アジアン2ブランドと、国産2ブランドとでは、1本あたりではそこまで大きな価格差はありませんが、4本セットの購入ではおよそ1万円から2万円の差になります。
●235/40 R18 タイヤタイプ「スポーツ」
・ピンソタイヤ「PS-91」235/40R18.Z 95W XL 5640円
・ナンカン「NS-2」235/40R18 95H XL 6430円
・ヨコハマ「ADVAN NEOVA AD08R」235/40R18 91W 2万9040円
・ミシュラン「PILOT SPORT 4」235/40R18.Z (95Y) XL 2万5040円
偏平率の低い、スポーツタイプのタイヤになると値段の差がおよそ5倍から6倍とかなり大きくなります。4本交換すると、合計で8万円から9万円もの差です。
満足度で比較すると? アメリカの場合
ブランドよりも品質を重視すると筆者(加藤久美子:自動車ライター)が見るアメリカのユーザーは、アジアンタイヤをどう評価しているのでしょうか。米国では新車装着タイヤ、リプレイスタイヤ(アフターマーケットの交換用タイヤ)含めて6割以上をアジアンタイヤが占めており、非常にポピュラーな存在です。
2017年に米国JDパワー社が行った「乗用車新車装着タイヤ(2年目)顧客満足度調査」でも、以下のような結果が出ています。乗り心地やハンドリング、見た目などの項目で調査した結果の総合順位がこちら。
●JDパワー調べ「2017年 米国乗用車新車装着タイヤ顧客満足度調査」
1位:ミシュラン
2位:ピレリ
3位:グッドイヤー
4位:ネクセン(韓国)
5位:ハンコック(韓国)
6位:コンチネンタル
7位:クムホ(韓国)
8位:ブリヂストン(日本)
9位:ヨコハマ(日本)
10位:トーヨー(日本)
11位:ダンロップ(日本)
12位:ファイヤストン
新車装着時のタイヤと、リプレイスでは、同じ銘柄でも性能が違うとよく耳にしますが、それが理由なのでしょうか。日本のタイヤブランドが軒並み8位以下とは衝撃です。
ちなみにラグジュアリーカー部門では、ミシュラン、ピレリ、ブリヂストン、グッドイヤー、ダンロップ、コンチネンタル、ハンコックという順番です。アメリカと日本ではタイヤに対して、求める性能(日本では静粛性や見た目を重視するユーザーが多いなど)がかなり違うので一概に比較はできませんが……。
激安アジアンタイヤ、どんなメーカーがあるの?
ここまで述べてきたように、昨今売り上げを伸ばしているアジアンタイヤブランドについてご紹介してみましょう。日本との関係が深いメーカーもあります。
ネクセン(韓国)
70年以上の歴史を持つネクセンタイヤは、世界130か国以上で販売されています。日本への本格参入は2017年から。同年1月にトヨタグループの総合商社である豊田通商と合弁で日本法人「ネクセンタイヤジャパン」が設立されました。VWやフィアット、ルノーなど世界17メーカーに新車装着タイヤを供給しており、2017年には厳しい採用テストで知られるポルシェ社でも採用が決定。ポルシェ「カイエン」への純正タイヤとして「N FERA RU1」がOEM採用されています。
ナンカン(台湾)
1959(昭和34)年創業の長い歴史を持つ台湾のタイヤメーカーです。横浜ゴムと長年にわたって技術提携を行ってきた歴史もあり、日本で販売されるアジアンタイヤのなかでは広く認知されているブランドです。軽自動車用18インチタイヤなど18インチ以上のサイズが豊富なことでも知られています。2017年には「東京オートサロン」に出展しました。
ハンコック(韓国)
創業77年の歴史を持つ韓国のタイヤメーカーです。「ドイツツーリングカー選手権(DTM)」の公式パートナーとして2011(平成23)年から競技車両にタイヤを供給しており、この実績が認められて2017年にはメルセデス・ベンツ「GLC」がハンコック・タイヤを純正採用しています。また、ダイハツ「ムーヴ」や「タント」でも過去、ハンコックが純正装着タイヤに採用されています。
ATRラジアル(インドネシア)
天然ゴムの一大産地であるインドネシアのタイヤメーカー、PT Multistrada Arah Sarana Tbk.(通称MASA)の日本向けブランドです。1991(平成3)年に設立された比較的新しいメーカーですが、1994(平成6)年まではピレリ、その後2000(平成12)年まではコンチネンタルと技術提携関係にありました。モータースポーツに注力しているメーカーで、「全日本プロドリフト選手権(D1グランプリ)」やアメリカの「フォーミュラ・ドリフト」など、ドリフト走行競技会のスポンサーとなっています。
フェデラル(台湾)
「FEDERAL」(連邦の)という名前から、米国メーカーと思われがちですが、1954(昭和29)年に設立された台湾のタイヤメーカーです。1960(昭和35)年からブリヂストンとダンロップで、それぞれ約20年間ずつ技術提携をしていた歴史があり、1987(昭和62)年にはJIS(日本工業規格)認証を取得しています。
品質の実際のところは? 気になる補償制度も
前述のように、世界タイヤ市場でシェアを伸ばしてきているアジアンタイヤ勢ですが、実際の数字はどのようなものなのでしょうか。2005(平成17)年と2016年で比較しました。
ブリヂストン、ミシュラン、グットイヤーなど、上位の顔ぶれはほとんど変化がありませんが、トップ3のシェアは減少。それに対し、9位以下に2005年にはランク入りしていなかったアジアのタイヤメーカーが登場しており、わずか10年間あまりで変化していることがわかります。「その他」の数字も大幅に増えました。ここには多くの新興アジアンタイヤメーカーが含まれていると思われます。
ちなみに、このデータは「総売上高」におけるシェアであるため、自転車から巨大な鉱山ダンプタイヤまで、すべてが含まれます。タイヤの本数ベースで比較すると、価格の安いアジアンタイヤはもっと上位に顔を出す可能性もありそうです。
では、実際の品質やアフターフォローについてはどうなのでしょうか。2000(平成12)年からスタートしたネット通販で累計2000万本近く、近年では年間200万本のアジアンタイヤを販売してきたオートウェイの岡本さんは「日本で販売されるアジアンタイヤの多くは、日本のタイヤメーカーと長年にわたって技術提携を行ってきており、品質も年々向上しています」と話します。
「当社で販売するタイヤにはすべて保証が付いており、初期不良などあれば迅速に対応しています。また、オートウェイの取扱製品はすべてにPL保険(製造物賠償責任保険)が付保されていますが、補償内容は各社異なるため、補充する意味で別途、国内の『中小企業PL保険制度』にも加入しています」(オートウェイ本社営業部 岡本翔さん)
「中小企業PL保険制度」では、タイヤの製造者に責任があるとされた事故において1件あたり3億円まで補償されるとのことですが、岡本さんによれば、これまでオートウェイで販売してきた2000万本のタイヤにおいて、その保険を使ったことは過去一度もないそうです。
価格、売上、品質と、アジアンタイヤメーカーの躍進は目を見張るものがありますが、さて10年後はどうなっているでしょうか。
【画像】「カイエン」に続き「マカン」も
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