いよいよポストシーズンも後半戦“Round of 8”に突入したNASCARカップシリーズ第33戦『サウス・ポイント400』が、10月18~20日にラスベガス・モータースピードウェイで開催され、燃費戦略を完璧に遂行したカップ2冠のジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)が、早くも最終ステージ“Championship 4”への最初の出場権を獲得。
前戦シャーロット“ローバル”で発生したアレックス・ボウマン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)の再車検失格により“滑り込み”の進出権を獲得していた男が「信じられない状況だ。本当に恵まれている!」と自ら語るとおり、逆転タイトルに向けプレーオフでの“流れ”を手にしている。
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依然として23XIレーシングとフロントロウ・モータースポーツ(FRM)による『反トラスト訴訟』の問題が尾を引くNASCARは、両チームが提出した迅速な証拠開示動議を却下するよう求め、申し立てに対する回答で「原告は、NASCARが以前に拒否した商業契約を獲得し、より有利な契約条件を強要しようとするために根拠のない独占禁止法違反を主張し、NASCARに対して無益な訴訟を起こした」との22ページに及ぶ文書を提出。来季チャーター契約(シリーズ参戦枠)に関し、署名を拒否した両陣営に「この従来契約はもはや利用できない」と通告した。
一方、陣営内にその当事者(23XI)を抱える北米トヨタ・レーシングは、来季2025年よりTOYOTA GAZOO Racing North America(トヨタ・ガズー・レーシング・ノース・アメリカ/TGRNA)にブランド名を変更すると発表。改めてトヨタのモータースポーツ活動はすべて、グローバルなTGRの旗の下で行うことを確認した。
「トヨタ・ガズー・レーシング(TGR)への移行は、世界クラスのレーシングプログラムがトヨタのグローバル・モータースポーツ活動とより深く連携するチャンスであり、同時に米国で以前の旗印の下で獲得してきたチャンピオンシップレベルの結果を継続するチャンスでもある」と説明するのは、北米トヨタ(TMNA)でモータースポーツ・グループマネージャーを務めるポール・ドレシャル。
「世界的にGRカンパニーとTGRの取り組みは、モータースポーツを利用してさらに優れた量産車を作り、トラック上で技術を限界まで追い込むことで量産車の性能と信頼性を高めるという哲学だ。モータースポーツのプログラムが引き続き世界を舞台に展開され、運転するのが楽しいクルマの開発とエンジニアリングに、さらに貢献できることを楽しみにしている」
■トヨタのクリストファー・ベル、うれしくない記録を更新
迎えた週末のオープニングプラクティスでは、王者ライアン・ブレイニー(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)がパンクからクラッシュを喫し、この時点で決勝最後尾からバックアップカーでの出場を強いられる厳しい展開と化すなか、そのフリープラクティス(FP)ではレギュラーシーズン王者タイラー・レディック(23XIレーシング/トヨタ・カムリXSE)が、続く予選ではクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)と、トヨタの2台が速さを披露する。
「僕は楽観的で、FPでは非常に良い感触を得た。予選で見る以上の意味があることもあるし、今日のクルマには高い“実行力”があったね」と、自身も8名のプレーオフドライバーとして同地で3度目のポールポジションを獲得したベル。
「ラスベガス、そしてこれらカップレースはすべて本当に長いレースであり、グリーンフラッグからチェッカーフラッグまでの間にレース結果を左右する多くのことが起こる」と続けたベル。
「僕はこれまで何度もこの位置にいたが、日曜のレースで1位からスタートしてまだ勝ったことがないんだ……。何度か(ポールウイナーから)優勝に近づいたことはあるが、僕にとってここが素晴らしいレーストラックであることに変わりはないよ」
迎えた決勝でもこのトヨタ陣営ペアがレースを席巻。ステージ1はレディックが、続くステージ2はベルがそれぞれ制覇し、ポール発進のベルは決勝267周のうち155周でリードラップを刻んでいく。
しかし終盤戦でロガーノより35周遅れでピットインしたベルの20号車カムリXSEは、戦略違いで燃費作戦を実行した22号車のマスタング“ダークホース”に対し、トラック上で失ったほぼ30秒のアドバンテージを取り戻すことができず。最後の6周でリードを奪ったチーム・ペンスキーの元王者に対し、わずか0.662秒差で破れ去る結果となった。
「レースが終わってしまったことをどう受け止めたらいいのか分からないし、まだ受け入れていないと思う」と、ポールポジションからの発進で『0勝13敗』という、うれしくない記録を更新した失意のベル。
「本当に残念だ。今日はチームの全員が完璧にやったと思う。マシンは明らかに軌道に乗っていたし、ピットクルーは素晴らしい仕事をし、アダム(・スティーブンス/クルーチーフ)は素晴らしいレースを指揮した。やるべきことはすべてやったが、残念ながら今日はその日ではなかったんだ」
■“Championship 4”へ一番乗りのロガーノ「信じられない日だ」
同じくステージ1ウイナーのレディックも90周目に接戦から横転事故を起こし、同プレーオフ資格者のチェイス・エリオット(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)や、ブラッド・ケセロウスキー(RFKレーシング/フォード・マスタング)、そしてバックアップカーで奮闘したブレイニーも巻き込まれた。
「(次戦の)ホームステッドではまたいい日になるし、マーティンスビルでは混戦に加われる」と、明らかにフラストレーションを感じていることを認めたレディック。
「理想的には……そうだね、今日勝てたらよかったのに。でも来週のレースで勝てたら最高だし、それに集中するつもりだが、ありがたいことにステージ1で10ポイントを獲得したし、まだポイントが完全になくなるわけではない」
「おそらく、ここからは完璧な走りをしなくてはならないだろうね」
これで2022年にもここラスベガスで最後のプレーオフに勝利し、ここからシリーズチャンピオンシップに進出して“Next-Gen時代”の初代王座を獲得しているロガーノが、同じ戦略を採用して57周をリードしたダニエル・スアレス(トラックハウス・レーシングチーム/シボレー・カマロ)をも残り5周で仕留め「いやぁ驚いた、最高の燃費調整をやったじゃないかマジで!」とNASCAR殿堂入りのジミー・ジョンソンと並ぶ、ラスベガス通算4勝の最多記録を打ち立てた。
「先週は信じられない展開だったし、またChampionship 4に進出する、本当だ(笑)」
「燃費も最高だし、クルーチーフのポール・ウルフ、ガソリン担当のニック・ヘンズリーの素晴らしい指示もあって、燃料が満タンかどうか確認してくれ、リードを保つために必要な情報もくれた。また(タイトル決定戦の)レースに出る。信じられない状況だ。本当に恵まれている!」と、自身でも驚きを隠せない展開に破顔一笑のロガーノ。
「信じられない日だ。さっき言ったように、燃費の調整にはチーム全員の集中が必要だ。エンジニアやスポッターだけじゃない。全員でやる必要がある。チーム全員の勝利だ。今日は最速ではなかったかもしれないがトップ5に入る堅実なクルマだったし、最後にはそれを最大限に活かすことができたね」
併催されたNASCARエクスフィニティ・シリーズ第30戦『アンベター・ヘルス302』は、完璧なタイミングで今季初勝利をさらった42歳のA.J.アルメンディンガー(カウリグ・レーシング/シボレー・カマロ)が、ライアン・シーグ(RSSレーシング/フォード・マスタング)をわずか0.156秒差で抑え、通算18勝目を挙げるとともに最終“Championship Race”への出場権を確保している。
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