ICEからBEV専用モデルまで幅広いラインナップのメルセデスベンツSUV。その中核を担う人気モデルのGLCが新型にモデルチェンジ。見た目は大きく変わっていないようにも見えるが、着実に進化していた。(Motor Magazine 2022年11月号より)
荷室スペースが大幅に拡大
現在、メルセデスのSUVラインナップにおいて量的中核を成すクルマといえばGLCだろう。初代の登場から約7年で約260万台を販売、日本市場でも常に銘柄別で上位をマークする。
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それゆえに失敗が許されないという一点をもってしても、売れるクルマのフルモデルチェンジは難
しい。そんな中、新しいGLCは一見するとキープコンセプトの道を選んだようにもみえるが、細部
に目をやればデザインの洗練度や中身の進化が著しいことがわかるはずだ。
プラットフォームは現行のW206型Cクラスにも用いられるMRA IIをベースとし、寸法的には先代GLCに対して全長が60mm、ホイールベースが15mm 延ばされている。そのぶんの見返りはちゃんと荷室側に現れていて、新型GLCの荷室容量は先代比70L増の620Lと広大だ。居住性に大きな変化は感じないが、実用性は確実に向上している。
先代に比べると切れ長で彫りが深くメリハリがしっかりした顔立ちや、11.9インチのタッチスクリーンなど、新型GLCの佇まいや質感には、Cクラスとの関連性が強くみてとれる。空調をはじめ、あらかたの操作をパネル内に収めてしまった割り切りはどうかと思うところもあるが、最新世代へと進化したMBUXが、言語の異なる日本仕様でも使いやすさを高めているのもまた確かだ。
6つのパワートレーンはすべて電動化された
搭載するすべてのパワートレーンが電動化されたのも新しいGLCの大きな特徴といえるだろう。エンジンはすべて4気筒となり、ガソリンは200 と300、ディーゼルの220dと、3つのパワートレーンすべてにISGを組み合わせているほか、これらの4気筒ユニットをPHEV化した300e、400e、300deと、合わせて6つのバリエーションが用意される。
ドライブトレーンはすべて9Gトロニック、そして全モデルがフルタイム4WDとなるのもGLCらしい特徴のひとつだ。駆動配分はISGモデルが45対5となるのに対して、PHEVモデルは車重や重量配分側からの要件で運動性能を重視して31対69の駆動配分が採られる。
SUVでありながらオフロード側の性能をおろそかにしないという姿勢もGLCの個性といえるかもしれない。その要となるのは最適な変速マネジメントやグリップコントロールを生むオフロードモードの存在やカメラを活用した路面視認性の補完機能、加えて最大プラス100mmの地上高変化を生み出すエアサスペンションや、最大4.5度の位相角を持つリアアクスルステアリングをオプション設定していることだ。
悪路での試乗に充てがわれたのはこれらがフルに搭載された400e。つまりシステム出力381psのPHEVだ。それで悪路を走らせようという趣向の狙いは走り始めてすぐに理解できた。136ps/440Nmのモーターはとにかく微細なコントロールがしやすく、路面を直に手で掴むように駆動を伝えていくことができる。
また、パワートレーンがペダル操作で唸りを上げることがないため、ドライバーが雑音に惑わされずトラクションの管理に集中できる点もならではのポイントだ。航続距離への影響や耐久性など未知数のところもあるが、モーターの素性が悪路走行前提のSUVに向くことはよくわかった。
オンロードでは今までとはひと味違う静粛性の高さや軽快なハンドリングに進化の跡を感じることとなった。間髪入れずノーズをスッとインにつける応答性は後輪操舵の影響も大きいだろう。
ちなみに日本導入の可能性が最も高い220dは0~100km/h加速8秒、最高速219km/hと充分以上の動力性能が与えられており、仮に後輪操舵が設定されずとも実重を活かしてむしろメルセデスらしい性急に過ぎないリニアリティが期待できそうに思える。ちなみに日本仕様の詳細が発
表されるのは来春の予定だ。(文:渡辺敏史/写真:メルセデス・ベンツ日本)
メルセデス・ベンツ GLC 22d 4MATIC 主要諸元(欧州仕様車
●全長×全幅×全高:4716×1890×1640mm
●ホイールベース:2888mm
●車両重量:2000kg
●エンジン:直4DOHCディーゼルターボ
●総排気量:1993cc
●最高出力:145kW(197ps)/3600rpm
●最大トルク:440Nm/1800-2800rpm
●トランスミッション:9速AT
●駆動方式:4WD
●軽油・62L
●WLTPモード燃費:16.9-19.2km/L
●タイヤサイズ:前235/55R19、後255/50R19
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