盛り上がりを見せたDTM
1984年からはじまったDTM(ドイツ ツーリングカー選手権)に、BMWは「635CSi」をベースとしたマシンで参戦をしていた。当時のライバルはアルファ ロメオ「アルフェッタ」やローバー「ヴィテス」などだが、ほかにもオペル「マンタ」やVW「ゴルフGTI」、ボルボ「240ターボ」、シボレー「カマロ」など、さまざまなマシンが参戦し、人気を博していた。この年のチャンピオンマシンは、635CSiであった。
BMW「M」誕生50周年! 「M1」から続く初期「Mモデル」とレースでの輝かしい功績を振り返る
DTMでBMWが勝つために開発した「M3」
しかし翌1985年のチャンピオンマシンは、ボルボ240ターボが獲得。フライングブロック(空飛ぶレンガ)と呼ばれた、あのマシンである。2位がローバー・ヴィテスで、635CSiは3位に終わっている。
もともとこのE24型635CSiというクルマは、1977年に販売が開始されたもので、はっきりいってしまえばそもそも設計が古いのがネックだった。レースに勝つためにはよりコンパクトで軽く、パワーのあるマシンが必要であったのだ。
そこでBMWは、DTMをはじめとするレースで勝てるクルマとして、E30型3シリーズをベースとしたスポーツカーの開発を進めていた。それがE30型「M3」である。
1985年のフランクフルトモーターショーで公開されたM3は、E30のボディをベースにブリスターフェンダーを採用することでボディ幅を拡大し、そのぶん前後のトレッドを広げている。
エンジンは635CSiや「M1」に搭載されていた、M88型3.5L直列6気筒エンジンから、2気筒分をカットしたものをベースにつくられた、S14型2.3L直列4気筒。
サスペンションやブレーキ、トランスミッションも、200psというハイパワーに合わせたアップデートをしたことで、このM3はレースでの勝利を重ねていく。1986年のDTMには635CSiで参戦していたBMWだったが、M3のデビューイヤーである1987年にはチャンピオンを獲得。以降、メルセデス・ベンツ「190E 2.3-16」や、フォード「シエラ・コスワース」、アウディ「V8クワトロ」などと激しいタイトル争いを続けていた。
日本のレースでも大活躍した初代M3
E30 M3はDTMだけではなく、たとえば日本でもグループAレース、全日本ツーリングカー選手権で活躍。デビューレースでは排気量規定でディビジョン2での参戦となりながら、ディビジョン1の日産「スカイラインRSターボ」や三菱「スタリオン」よりも上の順位でゴールするという速さを見せた。
その速さのせいもあって、M3を採用するレーシングチームが激増。1980年代後半から1990年代初頭のツーリングカーレースにおいて、M3はなくてはならないマシンとなっていた。
今回RMサザビーズオークションに出品されたM3は、もともとは日本で納車された個体である。ボディカラーはアルピンホワイトで、インテリアはアンスラサイトとなっている。
製造は1988年12月6日であることが判明しており、モデルイヤーは1989年。トランスミッションはゲトラグ製のレーシングパターンではなく、一般的なパターンの5速が搭載されている。
走行距離は7133kmとごく少なく、整備記録簿やオーナーズハンドブック、ブックレットを収納するビニール製カバーもきれいな状態で残っている。
というのもこの個体、近年は博物館展示車両として、静態保存されていたものなのだそうだ。そのため、公道走行をする場合には、あらためてメンテナンスをおこなう必要があるとのこと。
そういった状態でのハンマープライスは、20万7000ユーロ(邦貨換算約3000万円)となった。レーシングパターンミッションではなく、走るためにはメンテナンスが必要とはいえ、エクステリアもインテリアもコンクールコンディションといっていい個体だと、もはやこういった高値となってしまうようだ。
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