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日産ノートオーラ、片側20mm拡幅の理由…モーター出力は100kWが限界だった

掲載 更新 6
日産ノートオーラ、片側20mm拡幅の理由…モーター出力は100kWが限界だった

■ノートとノートオーラの違いとは

2021年6月15日にデビューした日産のプレミアムコンパクトカー「ノートオーラ」。その開発責任者を務めた車両開発主管 渡邊明規雄氏に開発にまつわるお話を伺った。

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◇◇◇◇

ノートオーラは、ダウンサイザーの方に満足していただくためのクルマ。一方、ノートは価格帯も少し下で、いわゆるコンパクトのド真ん中のところで勝負していく。私たちのなかで、そういった棲み分けをして開発してきたので、仕立てもそれなりに差別化をしています。

例えば外板だけ見ても、エンジンフードとルーフ、バックドア、フロントドアは共通なのですが、フロントのバンパーまわりやフェンダー、ボディサイドのパネル、リヤドアは全部差別化しています。分けると当然それだけ開発にも負荷はかかりますし、内装もあれだけ表皮を変えています。そこは効率だけでいうと、悪い部分もありますが、やはりご満足いただこうとするとそれぐらいまでやらないと、なかなかうまく“本物感”は出せません。そこは妥協せずに私たちも造り込んできたつもりですので、オッと思っていただけると頑張った甲斐がありますね。

■メカニズムの変更点は?

今回ハードウェアという視点でいうと、いわゆる「CMF-B」といわれるプラットフォーム、骨格であるとか、フロントに収めた「e-POWER」、それからエンジン、そういったところはじつは基本的にはノートと共通です。いわゆる適合というか、クルマに最適なチューニングを施したという形。モーターはノートの85kWからノートオーラでは100kWとして、十分な違いを造り込んだつもりです。また、静粛性も上げています。そういうところで、いわゆる走行性能まで踏み込んだアップグレード。私たちとしても新しい取り組みとだと思っています。タイヤも今回の17インチ(205/50R17)はオーラ専用に開発したタイヤです。

■オーラのモーターは何を根拠に100kWに決めたのですか?

じつは、今のこの第2世代「e-POWER」のフロントユニットは、少なくとも今現存するものとしては100kWのモーターが限界なんですね。100kW/300Nmというのが限界で、今回のノートオーラはそのポテンシャルをフルに使い切った状態です。ノートのフロントモーターは85kW/280Nmと、少し抑えめにしているのですが、そこは85kWでも十分な出力を出せていると思っていて、ノートクラスのコンパクトカーの競合車と比べてみても、まったく遜色はないと考えています。

社内の試験データでは、出力を上げるとどうしてもみんな(アクセルを)“踏み気味”になるのです。実車速が上がり気味になるんですよ。そうすると、やはり燃費が悪くなってきます。実際には100kWにしても85kWにしても、同じ車速で走れば、(同じ1.2L直列3気筒の発電用エンジンを積んでいますから)じつはパワートレーンとしての効率は変わらないのです。ところが実際に走ると、けっこうみんな平均車速が上がってくる傾向にあるので、燃費としては悪化します。

ノートのお客様というのは、上質でゆとりある走りだけではなくて、やはり経済性、燃費といった点にもかなりアンテナが高い、感度が高いお客様というふうに考えております。そのため、ある程度、出力を抑えめにして経済的な走りの方向にもっていこうと。

一方でノートオーラは、やはりダウンサイザーの方にも余裕をもって乗っていただくという意味で、(メカニズムとして設定している)ぎりぎりまでモーターの出力を出しています。そんな意図で差別化をしています。

■静粛性について。どのあたりを見直しているのですか?

静粛性について私たちが一番自慢しているのは、フロントドアのガラスです。フロントドアガラスに遮音膜が入ったラミネートガラスを採用して、遮音性能を引き上げています。効果としてはここが一番大きくて、今まででいうとDセグメント、ドイツプレミアムブランドのアッパークラスや、日産でもスカイラインが2019年のマイナーチェンジで採用しています。そんな高級車のアイテムなので、効果は絶大。それに加えて、特に高周波の音を吸収する吸音材をフロントドアの内張り、リヤドアの内張りに新たに設置、ルーフにも採用(ノートに対して追加して面積を拡大)したりして、特に運転席での静粛性を高めています。

さらにフロントのドライブシャフトにも、ダンパー(制震装置)を装着しました。ドライブシャフトは、回転に応じて当然振動するのですが、回転数をだんだん上げていくと、そのドライブシャフトの持つ固有振動、いわゆる共振するようなものが車室内に入ってきて、雑味のある音に聞こえます。その対策として制震のダンパーを付けたりして、音に関してはかなり胸を張れるレベルかなと思います。制震装置は通常のノートのほうには付けていません。

そこは100kW/300Nmという余裕のあるモーターのパワーを楽しんでいただくというところで、せっかくそれだけの気持ちのいい走りができるのに、回転数をあげていくと雑味のある音が入ってくると、ちょっとガッカリされるかなといったところで、音へのこだわりとしてダンパーを特別に付けた形です。

■ノートから足まわりのセッティングは変えているのでしょうか?

じつはね、足まわりは変えていないんですね。ノートと一緒なんですよ。それには理由があって、ノートオーラは17インチのタイヤ(205/50R17)を履いているんですけれど、タイヤって極力ノートの16インチ(185/60R16)と近い性能を出すように開発しているのですね。16インチと、17インチのタイヤと当然サイズが違うので、まったく一緒にはできないのですが、極力、乗り味を近づける目標性能を作って、サプライヤーさんと共同開発しているというのがまずひとつ。

それと、サスペンションとかダンパーのセッティングをするときに、つねに2台のコンディションで車両の質量とかを合わせてタイヤもそれぞれ見ながら、チューニングをしています。そこは今の状態としては共通でまったく問題がないというか、共通で私たちのコンセプトは実現できるというふうに判断をして、そうしています。ちなみに、ノートの15インチ(185/65R15)も足まわりのセッティングは共通ですので、ノートの15、16インチ、ノートオーラの17インチで基本は一緒ということになります。もちろん、いろいろな市場のお客様の反応を見ながら、そこにも差別化をしたほうがいいという声がもしあるようでしたら、当然、モデルライフの中での変更は考えます。

■オーラはノートに対して両側20mmずつ拡幅していますが、その数字に決めた根拠は?

ノートの全幅が1695mmで、ノートオーラの全幅が1735mm。片側20mm、全幅で40mm拡大しています。ここは、使い勝手とデザインのバランスで決めたというのが正解です。とはいっても、1750mmを超えてくると、(取りまわしなどで)気にされるお客様が出てくるんですね。かといって、あまり拡大幅が小さいと、広がり感、ワイド感、スタンスの改善が見られないのです。また、だんだん広げていくと投影面積が増えて、当然、燃費も悪化してきます。というようなバランスのなかで、片側20mmという拡大幅で、デザイン的なワイド感の演出ができるという判断をして、今回は片側20mmという最終的な寸法に落ち着かせています。

もちろん、もっと広げることはできるのですが、今回でいうと、ボディの外板で変えているので、ただ広げても結局、室内が広くなるわけではありません。あまり無駄に広げても、取りまわしばかり悪くなって、あまりメリットが出ません。一方でサスペンションも片側20mmぐらいだと、ホイールのオフセットでカバーできますが、やはり50mmぐらいまで拡大すると、さすがにアームを変えなくてはいけなくなってくる。そのあたりも最終的に片側20mmと決めた理由にはなっています。

(ノートのように)5ナンバーサイズだと全幅が実用寸法しか取れません。デザインのための寸法をとる余裕がないので、ノートオーラに関してはそこを少しデザインに使って、ワイド感の演出をしたということですね。車両を前後から見るとけっこうワイド感が出ていると思います。

◇◇◇◇

〈文=ドライバーWeb編集部〉

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みんなのコメント

6件
  • >じつは、今のこの第2世代「e-POWER」のフロントユニットは、少なくとも今現存するものとしては100kWのモーターが限界なんですね
    欧州のキャシュカイは190psって発表してませんでしたっけ?
  • ウソつけ、本来オーラは海外仕様なんだろ。

    でも日産大好きおじいちゃんは3ナンバーに
    抵抗があるから同じプラットフォームで、
    ナローボディのノートを作ったというだけの話。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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