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思い出がいっぱいになるクルマ──ボルボ新型V60クロスカントリーをスウェーデンで乗る<後編>

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思い出がいっぱいになるクルマ──ボルボ新型V60クロスカントリーをスウェーデンで乗る<後編>

特設コースの試乗会のあと、新型V60 クロスカントリーに乗ってルーレオ市内を走った。市街地・郊外路などの一般道が6割、残りはハイウェイだった。

ドライブをより楽しむべく、オーディオスイッチをオンにした。「Bowers&Wilkins」のプレミアムサウンド・オーディオシステムは、スピーカー数がなんと16個にもおよび、臨場感たっぷりの音を聞かせてくれる。頭上にはチルトアップ機構付電動パノラマ・ガラス・サンルーフがあり、屋根を開けなくても開放感があっていい。

SUVではなく“クロスカントリー”という選択肢──ボルボ新型V60クロスカントリーにスウェーデンで乗る<前編>

V60クロスカントリーで、まずはハイウェイを走る。試乗車が搭載する2.0リッター直列4気筒ターボエンジンはパワフルだ。わずか1800rpmから発生する350Nmの最大トルクによって、常用域では思いのままに加速出来るから、追い越しもスムーズ。なお、日本仕様もおなじエンジンを搭載するモデルが導入されるという。

また、直進安定性も高く、ハイペースで走っても何ら不安はない。先進安全装備も充実しているから、疲労も大幅に軽減される。LKA(レーン・キーピング・アシスト)やACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)など、運転支援システム類の制御がスムーズなうえ、簡単に設定出来るのも魅力だ。

はじめてドライブするスウェーデンの道を不安なく走れたほど、V60クロスカントリーの安心感は抜群だった。ベースモデルのV60では走れないような険しい道も進めるから、アウトドアを楽しみたい人にはV60クロスカントリーを推したい。旅やレジャーの思い出をもっと増やしたいと思うような行動派にぴったりである。

試乗会2日目、我々はV60クロスカントリーで試乗会場にむかったあと、スノーモービルでちょっとした冒険に出かけた。氷のはった海上を、ひたすら走ったのだ。

600ccエンジンを搭載するスノーモービルは、雪をかき分け高速で進んでいく。当日は好天に恵まれたため、ダイヤモンドダストが舞い、無数の野生動物を見ながらのドライブであった。

あいかわらずの寒さであったが(マイナス20℃)、カウルやグリップヒーターのおかげで、思ったよりは寒くない。雄大な自然のなか、時速50km/hで雪上を走るのは爽快だ。果てしなく広い氷上を走るなんて、まず日本では出来ないだろう。貴重な体験だった。

スノーモービルを終えたぼくは、もうひとつのアクティビティを体験すべく、約100km離れた目的地に向かう。そのあいだ、少しだけハンドルを握ったのは「V60 T8 ツインエンジン AWD」だった。

T8はPHV(プラグ・イン・ハイブリッド)モデルだから、エンジンとともにモーターの力もくわわり、加速は強烈だ。V60クロスカントリーより明確に力強い。ほんのわずかアクセルを踏むだけで、望み通りに加速する。とはいえ、路面にうっすら雪が残るスウェーデンの道ではアクセルを深く踏み込む勇気はなかったが。

さらに、試乗車は「Rデザイン」と呼ぶスポーツモデルだったため、足まわりはややハードなセッティングだった。インテリアもよりホールド性の高いシートに変わり、ステアリングなどは専用デザインだ。最高速度250km/h、静止状態から100km/hにまで要する時間はわずか4.9秒のハイパフォーマンスモデルゆえだ。

目的地まではひたすらつづく長い直線だった。大パワーと硬められた足まわりの組み合わせは良好で、矢の如く進む。ソフトな乗り心地のV60クロスカントリーとは明確に異なる乗り味だった。

思い出づくりが上手なボルボ出発から約1時間後、宿泊先である「ツリーホテル」に到着した。名前の通り、木々のあいだに客室を設けたユニークなホテルだ。

たった7室しかない部屋は、それぞれが独立したキャビンとなっており、さまざまなテーマが与えられている。

筆者が宿泊した部屋の名前は「ドラゴンフライ」。名前のとおり、トンボをイメージした外観が特徴だ。ほかにUFOをイメージした部屋もあれば、鏡張りの部屋もあるから面白い。

部屋に入るためには、まず15mの橋を渡らなくてはいけない。ドアを開けると、木々の香りが漂う。自然との共生を目指したホテルらしい。環境に配慮したトイレは、排泄物を燃やして処理するユニークなタイプだ。

ドラゴンフライの広さは約52平方メートルあり、ツリーホテル内で1番広いという。10席の会議用スペースまであった。寝室に入ると、大きな窓からスウェーデンの雪景色が見える。木々の上に部屋があるため、遮るものがほとんどなく、豊かな自然をまるでひとり占めしているような気分だ。

スウェーデンの厳寒期に、人里離れた場所にあるツリーホテルにいるなんて自分でも驚きだ。ここまで、不安なくぼくを運んでくれたボルボに感謝したい。

ボルボは決して超高性能なクルマではないし、どちらかといえば地味な存在かもしれない。けれども、大きな安心感やぬくもりを与えてくれるから、乗っていて落ち着く。穏やかな気持ちになれるのだ。今回、見知らぬ土地を数百km運転したものの、気づけばストレスフリーだった。だからぼくは、アクテビティを存分に楽しめた。

たった3日間のスウェーデンだったが、ボルボとともにかけがえのない思い出がいくつも出来た。最後の夜、空にうっすら広がるオーロラを眺めつつ「もっとボルボに乗って思い出を作りたいなぁ」と、しみじみ思うのであった。

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