ピックアップモデル復活
ジープの初期CJシリーズの多くでは、コンパクト・ピックアップへのコンバージョンが可能なハーフキャブがオプション設定されていた。遊びと仕事、またはその双方を想起させるジープからは、これまで数多くのピックアップモデルが登場しており、2020年デビュー予定のグラディエーターはその最新作となる。
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1947年から1992年まで、ジープのラインアップには少なくともピックアップモデルがひとつは存在しており、それが姿を消した理由は、単にダッジとの競合を避けるためだった。
軍用モデルからコンセプトカーまで、ジープの知られざるピックアップモデルの歴史を振り返ってみよう。
ウィリス-オーバーランド・ジープ 4×4 トラック(1947年)
考え得るなかでもっとも早くウィリスはジープをピックアップ市場に投入している。
1947年、米国市場で民生用CJ-2A発売のわずか2年後には、ピックアップトラックとステーションワゴンボディをもつより大型のモデルをラインナップに加えている。
単にジープ・トラックと呼ばれたピックアップモデルには、スチール製キャビンとフルメタル製ドアが採用され、オープントップのCJよりも快適な運転環境を実現するとともに、64psのパワーですべてのタイヤを駆動していた。
ウィリスからは、スタンダードなピックアップやキャビン付きシャシー、シャシーのみといったさまざまなバリエーションが販売されていた。
なかには、価格をできるだけ下げるため、基本的なシャシーだけとしたものもあったが、1950年代にはクロームバンパーやクロームハブキャップ、ジープが「デラックス・キャブトリム」と呼ぶオプションなどが加わり、その生産は1965年まで続いている。
注:写真は1954年モデル
FC(1956年)
1956年後半に発表したフォワード・コントロール(FC)で、ジープは米国製ピックアップモデルの常識に挑戦してみせた。
著名デザイナーのブルックス・スティーブンスはキャブオーバータイプのセミトラックからインスピレーションを受け、フォード F-100などよりもフォルクスワーゲン・バスに近いモデルを描き出したのだ。
ジープの親会社だったカイザーは、FCでピックアップ市場に革命をもたらそうとしたが、それは失敗に終わっている。
FCの年間販売台数は1957年のおよそ1万台をピークに、約3万台が生産されたのち、1965年には生産が終了している。当然、FCの後継モデルが作られることはなかった。
グラディエーター(1963年)
1963年に登場したグラディエーターは、そのフロントデザインとほとんどのメカニカルコンポーネントをワゴニアと共有していた。
当初、3種類のホイールベースと、ナローボディやワイドボディに加え、キャブシャシーやシャシーのみといった、さまざまバリエーションが展開され、エンジンは直列6気筒のみだったが、1965年モデルでは254psを発揮するV8もオプション設定されている。
グラディエーターの先代モデルだったウィリス設計の初代ジープ・トラックはピックアップ市場ではニッチな存在に留まっており、ジープはこの新型で、フォードやシボレー、インターナショナル・ハーベスター、ダッジといったライバル勢に戦いを挑んでいる。
ジープスター・コマンド(1967年)
1967年、成長を続けるレジャー用オフローダー市場に挑戦すべく、ジープのラインナップにジープスターの名が帰って来た。
ジープスター・コマンドと呼ばれたこのモデルの主なライバルは、インターナショナル・ハーベスターのスカウトやフォード・ブロンコ、トヨタ・ランドクルーザー、さらには後から登場したシボレー・ブレーザーといったモデルだった。
1967年のカタログには、それぞれロードスター・クーペ、コンバーチブル・フェートン、ステーションワゴンとピックアップトラックと名付けられた4つのモデルがラインナップされていたが、すべてCJ-6のシャシーをベースにしていた。
ジープは過去の過ちに学んだ。1948年に登場した初代ジープスターはリア駆動のみであったことから、本来ユーザーとなるべき層から批判を浴び続けたが、この2代目はすべて四輪駆動となり、CJとラングラーのギャップを埋めるモデルとなった。
コマンド(1972年)
1971年をもってジープスターの名は廃止され、同じモデルがコマンドとして継続販売されることになった。
ジープらしいタイムレスなデザインを好むファンの期待とは裏腹に、新たなフロントデザインを与えられたこのモデルの生産は1973年まで継続されたが、「ジープと半分」との謳い文句で登場したチェロキーに道を譲っている。
基本的には「2ドアのワゴニア」とでもいうべきチェロキーは、ブロンコやスカウト、ブレーザーといったモデルの恰好のライバルとなったが、ピックアップボディが登場することはなかった。
M-715(1967年)
ジープの親会社であるカイザーは、米軍が1951年導入のダッジ M-37に替わるモデルを探し始めると、M-715の開発を指示している。
グラディエーターをベースに、基本的に既存のコンポーネントを使って作られたM-715は傑出したモデルだった。M-37を含め、これまでのトラックは軍用に専用設計され、量産モデルとはほとんど無関係のモデルだったため、生産コストが高かったのだ。
だが、だからといって、グラディエーターの標準仕様だったというわけではない。
民生用モデルでは決してラインナップされることのなかったソフトトップボディや24V電気システム、さらには軍用特別装備を備え、通常のピックアップとキャブシャシー、さらには救急車両とメンテナンストラックの4つの基本バージョンが設定されていた。
M-715はベトナム戦争に従軍したことで有名だが、森林局や消防本部といった米国の政府機関でもそのトラック仕様が活躍している。
J4800 キャンパー・スペシャル(1970年)
グラディエーターは基本的に作業用トラックとして設計されたものの、多くがカーゴボックスを搭載し、スペースに優れたキャンパー仕様となって米国中を旅していた。
冒険好きをショールームへと誘うこの素晴らしい機会に、ジープではJ4800 グラディエーターをベースに、キャンパー向けの特別仕様車として、その名もキャンパー・スペシャルを登場させている。
1783kgの牽引能力とヘビーデューティ仕様のサスペンションを持ち、強化された冷却システムと10層のラバーで構成されたタイヤを履くモデルだった。
四輪駆動と4速マニュアルトランスミッションに、178psのV8エンジンを組み合わせ、2.4mのベッドを搭載したJ4800は、ジープでもっとも高価なピックアップモデルだった。
1971年当時のスタートプライスは4370ドルであり、2018年現在の価値に換算すれば、約2万7000ドル(298万円)になる。
Jシリーズ(1974年)
1971年、ジープはジープスターのモデル名を廃止し、替わって1974年には自社のピックアップトラックにそれぞれJ10、J20とJ30の名を与えている。
新たなモデル名の導入に伴い、より強固になったフレームやフロントディスクブレーキの採用、さらには小回り性能も向上していた。
デトロイトのビッグ3から登場したより新しいライバルたちに対抗するため、1970年代を通じて積載能力が徐々に引き上げられていった。
注:写真はJ20
レジャー用トラックモデル(1970年代)
ますます増えるレジャー用オフローダーを求めるユーザーの声に応え、1970年代と1980年代を通じ、ジープからは数多くのボディキットが登場している。
写真のハンチョウ・パッケージは、間違いなくそのなかでも忘れられないもののひとつだ。リーバイスのデニム地を使ったシートとドアパネル、クローム仕上げのフロントバンパー、ブルーのステアリングホイールに、このモデル専用のボディグラフィックが採用されていた。
AM/FMステレオが標準だったが、オプションとして349ドル(2018年の価値で約1400ドル/15万円)の市民(CB)ラジオも設定されていた。
CJ-8(1981年)
1981年、ストレッチしたCJ-7のホイールベースをベースに登場したCJ-8は、ますます人気を高めつつあったフォードやGM製コンパクト・ピックアップに対抗するモデルだったが、そのコンセプトは一風変わっていた。
ジープではこのモデルを建設現場に建材を運搬するよりも、2台のオフロードバイクをその荷台に積むことが似合うようなクルマに仕立てようとしたのだ。
当初はトップレスボディだけがラインナップされていたが、上級モデルとしてソフトとハードトップを選択可能なモデルも登場している。
スクランブラーの名は、特別なステッカーとホイールを装着したエクステリアパッケージとして登場しており、多くのCJ-8がこのパッケージを選択するとともに、その後も長くこの名は続いたことで、21世紀のジープ製ピックアップは再びスクランブラーを名乗ることになるのではないかと言われている。
ジープが期待したほどの人気を獲得することは出来ず、同じような価格だったにもかかわらず、1980年代を通じ、販売台数では大差でCJ-7に遅れをとっていた。
1981年から1986年にかけて約2万8000台のCJ-8が生産された一方で、CJ-7の生産台数は1984年の1年間でおよそ4万2000台に達していた。
CJ-10(1981年)
2018年の現在、CJ-10の名はまるで存在自体がなかったかのような扱いを受けている。
当初、ジープはこのモデルをオーストラリアを含む海外市場専用モデルとしていた。CJ-10は全面改良を受けたJ10シャシーをベースに、10スロットグリルに角型ヘッドライトを組み合わせた見慣れないフロントデザインのモデルだった。
CJ-10は日本車が席捲していたオーストラリア市場で存在感を発揮することができず、そのセールスは期待にはまったく届かないものだった。
ジープはそのコストを回収しようと、オーストラリア軍にCJ-10を売り込もうとしたが、その努力は無駄に終わっている。
最終的には、米空軍基地で使用される航空機の牽引トラックに活路を見出し、モデル名をCJ-10Aへと変更している。
コマンチ(1986年)
米国市場でもっとも人気のあるピックアップモデルに対して、実用性で劣るCJ-8は苦戦を強いられていたため、ジープでは違った方法でこの市場へアプローチすることにし、1986年モデルとしてコマンチをデビューさせることで、当時クラスリーダーだったフォード・レンジャーに戦いを挑んでいる。
コマンチは、明らかにジープが革新的なボディ一体型プラットフォームだと喧伝していたユニフレームを採用するXJ世代のチェロキーをベースに開発されたモデルだった。
ジープはこのクルマのボディ前半にユニフレーム・レイアウトをそのまま残しつつ、セパレートフレームのうえにキャビンと一体化した荷室を設けていた。
この独創的な構造によって、コマンチは頑丈さと軽量化を両立したピックアップとなった。
Jシリーズ終了(1987年)
1987年、ジープはJシリーズ・ピックアップの生産を終了しているが、これは、派生モデルのグランド・ワゴニアのように、すでに大幅に時代遅れのモデルとなっていたことがその理由だった。
後継モデルが登場することはなかったが、これはジープがAMCとともにクライスラー・グループの一員となったことで、フォードとGMを相手に、すでに苦境に立たされていた同グループのダッジとの競合を避ける必要があったためだ。
ジープ製ピックアップモデルの終焉(1992年)
頑丈で多才なモデルだったにもかかわらず、コマンチはフォード・レンジャーどころか、ダッジ・ダコタの後塵さえ拝していた。
ジープとダッジが同じグループになると、コマンチがダコタの顧客を奪うことを恐れたクライスラーはジープに対して、1992年にコマンチの生産を終えると、ピックアップ市場からの退出を暗に求めた。
その結果、その後の1990年代を通じて「ジープ」と「ピックアップ」同じセンテンスで語られることはなくなり、ジープはSUV市場に注力することとなった。
グラディエーター・コンセプト(2005年)
2000年代初頭、ピックアップモデルの人気は高く、ジープブランドのピックアップ登場がふたたび検討されることとなった。
2005年のデトロイト・モーターショーで発表されたグラディエーター・コンセプトは、ラングラーをベースに開発されたオフローダーのスタイリングを探る試みとして、延長されたキャビンと着脱式ハードトップを持つ2ドアモデルであり、そのボディサイドに搭載されたスペアタイヤは初代ジープを彷彿とさせた。
好評を博したグラディエーターだったが、あくまでコンセプトモデルに留まっている。
これは2009年のクライスラーの破産申請が理由ではなく、もともと市販化の噂自体が間違いであり、あくまで3代目ラングラーのフロントデザインのプレビューがこのコンセプトモデルの目的だったためだとされている。
JTコンセプト(2007年)
グラディエーター・コンセプトが好評を博したことで、ジープでは常にラングラー・ベースのピックアップモデルの可能性が検討されており、2007年にはふたたびJTコンセプトを登場させている。
このモデルは2年前に発表されたグラディエーターとよく似ていたが、より現実的で量産に近いスタイリングをしていた。
そのデザインはJKラングラーの軍用モデルをベースにしており、より低コストでの量産化が可能だと見込まれていた。
クライスラーの破産と米国におけるガソリン価格の高騰が、量産化への道を閉ざした結果、JTもコンセプトモデルに留まっている。
ジープ・ラングラー JK-8(2011年)
2005年発表のグラディエーターも、2007のJTも実際に量産されることはなかったが、ジープブランドのピックアップモデルを求める声はますます大きくなっていた。
2011年には、ジープとクライスラー・グループの部品メーカーであるモパーから、量産モデルに近いJK-8 インディペンデンスと名付けられたモデルが発表されている。
4ドアモデルのラングラー・アンリミテッドをベースに、出来る限り既成パーツを使った現実的なスタイリングとすることで、ジープは量産化を行った場合の市場の反応を見極めようとしていたのだ。
モパー製JK-8用キット(2011年)
後ろ髪をひかれつつも、ジープはJK-8をお蔵入りにしたが、このコンセプトモデルの人気は、モパーにコンバージョンキットの販売を決意させるには十分なものだった。
イケアのごとく、部品の状態で販売されたキットの価格は5500ドルであり、その取付け作業はメーカー承認工場で行う必要があった。
モパーによれば、ラングラーをピックアップへと変更させるための作業時間は12時間から16時間ほどであり、このコンバージョンは恒久的なものだと強調していた。
J-12 コンセプト(2012年)
毎年、ジープからは見事なコンセプトモデルが登場し、実際のオフロード性能を試すべく、ユタ州のモアブ砂漠へと送り込まれていた。
2012年に登場したデザインスタディの1台がグラディエーターを彷彿とさせるJ-12という名のピックアップであり、ラングラー・アンリミテッドをベースに開発されたモデルだった。
ジープでは、このモデルを公道走行可能な状態にするのに必要なものは、ヘッドレストとサイドマーカーだけだとしていたが、量産化の意志を示すことはほとんどなかった。
コマンチ・コンセプト(2016年)
熱心なファンが量産ピックアップの登場をもはや待ちきれなくなっていた2016年、ジープはレネゲードをベースに、1960年代のM-715を彷彿とさせる、非常に実用的なデザインを纏ったコマンチを発表したが、すぐにこうしたモデルの量産化の計画を否定している。
だが、実際にはデザイナーやエンジニアはすでに2020年のグラディエーター登場に向けた作業を開始していたのだ。
クルー・チーフ715(2016年)
2016年発表のこのコンセプトモデルは、明らかにジープ製ピックアップモデルへの市場の反応を探るためのものであり、ベトナム戦争に従軍したM-715と非常によく似たクルー・チーフ715には、ふたつのリアドアが装備されていた。
そのスタイリング上の特徴でもあるフロントホイールの後ろに穿たれたベントは、4代目ラングラーのプレビューだった。
ジープ・グラディエーター(2018年)
長年の噂話や情報リークといったものに終止符を打つべく、ジープは2018年のロサンゼルス・モーターショーで4代目ラングラーをベースにしたピックアップモデルを発表している。
グラディエーターを名乗るこのモデルは、ソフトトップかハードトップが選択可能な4ドアモデルとして登場することになる。
ピックアップとして、牽引や運搬に優れた性能を発揮するはずだが、ジープではこのクルマは建設現場ではなく、大自然に相応しいモデルだと強調している。
ドアとルーフは取外し可能であり、ウインドシールドは可倒式となっている。
数字で見るグラディエーター(2020年)
グラディエーターにはクライスラーが誇る3.6ℓペンタスターV6エンジンが積まれ、6速マニュアルか8速オートマティックが組み合わされることになる。
トランスミッションにかかわらず四輪駆動が標準であり、2020年には3.0ℓV6ターボディーゼルがエンジンラインナップに加わる予定だ。
性能も十分で、グラディエーターの牽引能力は3477kg、積載能力は727kgとされている。
質実剛健なブランドイメージとは裏腹に、グラディエーターにはApple CarPlayとAndroid Autoが搭載され、スマートフォンのように操作が可能な7.0インチか8.4インチのタッチスクリーンが選択可能となる。
オハイオ州トレドの工場で生産されることになるジープ・グラディエーターは、2019年の4月以降の米国発売が予定されており、その価格は3万5000ドル前後と予想されている。
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