周囲が「最近、うまくいってるな……」と思った頃に、必ず何かが起きる日産。それはもはや「社風」レベルかも!? カルロス・ゴーン元会長の逮捕以前から色々とあった日産のお家騒動について振り返る。
※本稿は2023年7月のものです
文/佃 義夫、写真/ベストカー編集部、日産自動車
初出:『ベストカー』2023年8月26日号
ゴーン逮捕も記憶に新しいけど……70年代には社内に「ふたりの天皇」が存在!! 日産「お家騒動」の歴史
■お家騒動は日産の伝統!?
お家騒動の筆頭は、やはりゴーンの逮捕、逃亡だろう。今も未解決(写真は2010年4月のダイムラーとの提携式のもよう)
「お家騒動は、日産の伝統なんだよ」。確かに長らく日産自動車をウオッチしてきた筆者も、日産のトップ経営陣の内紛に翻弄されてきた社員の顔が浮かぶ。
もともと、日産と言えば東京・銀座(東銀座)に本社を置くエリート集団で、ライバルのトヨタが「三河の田舎企業」と言われたのに対し、対照的な日本自動車産業のリーダーだった。
その日産が1990年代末の経営危機で仏ルノーが資本参加し、1999年にルノー副社長だったカルロス・ゴーンが日産の最高執行責任者(COO)に就任し、直ちに「日産リバイバルプラン」を打ち出して2001年3月期決算で見事にV字回復を成し遂げた。
これでゴーンは2001年に社長兼最高経営責任者(CEO)に昇格し、ルノーは当初の37%出資から2002年に44%に引き上げて完全に日産を子会社化した。
「名経営者」として名を馳せたゴーンは2005年にはルノーの社長・CEOも兼務して名実共に日仏連合のトップとなる。2004年3月期の日産の売上高営業利益率は過去最高の約11%を確保した。
この頃までがゴーンの絶頂期だった。その後は販売不振で業績が悪化し株式市場に「ゴーン・ショック」という言葉が出回った。2008年のリーマンショックで赤字転落、2013年には2期連続の業績下方修正と落ち目になる。
この間、2010年には世界初の量産EV「リーフ」を発売してゴーン社長は「日産がEVで世界覇権を狙う」と豪語した。
しかし、日産の内実は空回りしていた。そのなかで2016年に三菱自工が燃費不正問題で業績不振となり、ゴーン日産が34%出資して3社連合グローバル拡大路線を打ち出し、自らは三菱自工会長も兼ねて2017年に日産社長の座を西川廣人氏に譲る。
この2017年に日産の完成車検査不正が発覚し、2018年11月にゴーンは金融商品取引法違反容疑で突然の逮捕となった。ゴーンは被告の身でありながら2019年にレバノンに逃亡。
こうして日産を長期支配したゴーンは、まさに躍進と転落で毀誉褒貶を絵に描いたような経営者としての評価となる。
しかし、ゴーンの後の西川氏も自身の不正報酬問題の責任を取り辞任し、内田誠体制誕生後も日産プロパー(生産技術畑)だった関潤副COOが就任1カ月足らずで退社し、はたまた2023年6月の株主総会でナンバー2のアシュワニ・グプタCOOが退任・退社と不明な経営陣の動きが続いたのだ。
■「ふたりの天皇」が壮絶に戦っていた
イギリスのサンダーランド工場。英国への工場進出にあたり、当時の日産社長と組合のトップが激しく対立した
それ以前の旧日産も経営の暗闘が長く続いた歴史がある。有名なのが、1970年代から1980年代にかけての日産は「ふたりの天皇」がいると言われた時代だ。ひとりは当然社長であるが、もうひとりは組合のトップだった。
「塩路一郎」。日産労連会長として日産ばかりか系列部品企業・販売会社を含めた日産圏23万人の労働者を束ねて長く君臨したこの人は、1970年代から1980年代にかけて日産の人事権・管理権を掌握し、経営にも介入して「日産の天皇」「労働貴族」とまで言われた。
日産がライバルのトヨタに離されていったのはこの「労使問題」に起因すると言われた。日産ではこの頃「組合一番、生産二番」で当然、生産効率は落ちることになる。
また、日産が英国に工場進出を決める際に、当時の石原俊社長が記者会見したら、塩地日産労連会長が英国工場進出反対の会見を行ったほどで、当時の日産トップは組合のドンとの対決に大半の力を使ったほどという逸話があるのだ。
今回のグプタ元COOの突然の退社も謎が多く、不透明。日産のこの負のパワーは、いったいどこからきているのだろうか。
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みんなのコメント
つーか、ゴーン氏が居る時に良い思いした連中も多いだろうに
同じ様な性格の米GMがやっぱり同じ様に権力抗争に明け暮れ続け、倒産後も政府に借金をチャラにしてもらって復活。今でも昔の社内政治争いを続けているのをみると暗澹とした気持ちになる。