EV(電気自動車)のスポーツカー「トミーカイラZZ」を販売する京都のEVメーカー「GLM」が、クルマの心臓部であるプラットフォームのレンタルを開始するという。果たしてその狙いとは何なのか?
GLMは、1996年に京都大学で発足した「京都電気自動車プロジェクト」に端を発するEVメーカーだ。京都にはオムロンや日本電産、ニチコンなど、EVにとって重要な技術をもった企業がいくつもあり、「京都電気自動車プロジェクト」は産学連携で電気自動車を作る取り組みだった。
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現在CEOを務める小間裕康氏が京都大学大学院在学中にこのプロジェクトの事業化を進言。2010年、グリーンロードモータース株式会社(現GLM株式会社)を起業した。2014年には、ベンチャー企業として初めて量産EVスポーツカーの製造に関する認証を国土交通省から取得。京都生まれのスポーツカー「トミーカイラ」の名を継承したEVスポーツカー、「トミーカイラZZ」の量産を開始した。
2019年には最高出力400kW、最大トルク1000Nmを発揮し、0→100km/h加速3.7秒を誇るEVスーパーカー「GLM G4」の量産を予定していたが、今年3月、大きく変化するEV市場の動向を鑑みて従来の商品企画を見直し、新たな完成車両の市場導入を検討すると発表した。
実はGLMには完成車両を作って販売することとは別に、もう一つ事業の柱がある。それがプラットフォーム事業だ。ここでいう“プラットフォーム”とは、車台とパワートレインで構成するクルマの中核部分のことだ。
「トミーカイラZZ」に使用する「第1世代プラットフォーム」の特徴は外装ボディ(上屋)を切り離し、プラットフォームのみで走行が可能なこと。外装ボディをオリジナルのデザインにしやすいことはもとより、EV向けの部品や素材、システムを開発するメーカーが、試作品の動作確認や性能検証、評価を行いやすくなる。中国やインドなど新興国の自動車メーカーからの共同開発の需要もあるという。
今年5月には京セラとの協業で、トミーカイラZZに自動運転やADAS(先進運転支援システム)への活用が見込まれる京セラ独自の12種類のデバイスやシステム、素材を実装したコンセプトカーが発表された。
以前、小間氏にインタビューした際、このような話をしていた。
「テスラが大手ゼネコンだとすれば、我々は建築設計事務所のようなもの。少数で意志決定をして一つ一つの建物に対して自分たちのエッセンスを盛り込んでいく。エコシステムを自分たちですべて持つのではなくて、日本の産業構造の基本である水平分業で信頼関係を構築していく。純日本的な発想をもって事業を進めていきたい」
そして今年8月20日、プラットフォーム事業の一環として、先の第1世代プラットフォームのレンタルを開始した。従来、プラットフォームを使いたい企業は、1台あたり約750万円のトミーカイラZZを購入する必要があったが、レンタルによって初期費用の大幅な削減が可能になる。導入費を節約したい企業のニーズに応えたものだ。
レンタル料金は60カ月のプランで月額14万3000円(税別)で、年間6社6台程度の利用を見込む。産業機器レンタルを手がけるオリックス・レンテックと提携することで顧客接点の拡大を図っていくという。
EVのプラットフォームをレンタルする、という世界にも類を見ない、京都発のEVベンチャーの試みが、果たして世界にどのように評価されるのか注目していきたい。
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