現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 短命だったけど技術革新に貢献! バブル崩壊後に燃費低減を目指した「燃費スペシャル」なクルマ3選

ここから本文です

短命だったけど技術革新に貢献! バブル崩壊後に燃費低減を目指した「燃費スペシャル」なクルマ3選

掲載 更新 7
短命だったけど技術革新に貢献! バブル崩壊後に燃費低減を目指した「燃費スペシャル」なクルマ3選

■バブル崩壊後に流行した低燃費技術とは

 ガソリン価格が高騰している今、燃費が良いクルマの人気がさらに高まりそうです。

トヨタ新型「プリウス」正式発表! 黒トヨタマークがカッコイイ!

 しかし、燃費の問題は「エンジンの排気量を小さくすれば良い」とか「燃料の供給量を減らしたエンジンを作ればよい」という単純な問題ではありません。

 単に排気量を小さくしただけではかえって燃費が悪化し、エンジンに供給するガソリンの量を過剰に減すと燃焼後の排出ガス中に窒素酸化物が増えるという問題があります。

 そこで技術者は、燃料と空気の流れ方や燃え方を工夫してパワーの低下を抑えつつ、燃費向上を図りました。

 それが、いまから約30年前のバブル崩壊直後に流行した「リーンバーン技術」です。

 バブル崩壊直後には、燃費を良くして二酸化炭素排出量を減らそうとしたリーンバーン車が複数のメーカーから発売。

 しかし、リーンバーンを実現するためには多数の新技術が導入されることから、どうしても車両価格は上がりがちです。

 その一方で価格ほどの効果が見られなかったからか、これらのクルマの販売成績はあまり良くありませんでした。

 ただし、後の時代のクルマに受け継がれた技術が多数存在し、バブル崩壊後に低燃費を目指したクルマの功績は決して小さくなかったと考えられます。

 では、一体どのようなクルマに、どんな低燃費技術が搭載されたのでしょうか。

●ホンダ「シビックETi」

 1991年9月に発売されたホンダ5代目「シビック(通称:スポーツシビック)」は、先代のEF系シビックで投入したVTEC技術を、スポーティグレード以外にも幅広く展開していました。

 VTECの高回転高出力技術を、低燃費型エンジンでも高回転時のエンジンパワーを犠牲にしない方向にチューニングしたものがVTEC-Eで、「ETi」グレードに搭載。このエンジンはSOHC4バルブでバルブ駆動機構にVTECを採用し、さらにリーンバーン(希薄燃焼)を実現しました。

 VTEC-Eでは、低回転時にはふたつある吸気バルブの内ひとつを休止し、ガソリンと空気が混ざった混合気の流れに横方向の渦=スワール流を生成させ、燃焼速度の低下や着火性の悪化を抑えることに利用しています。

 そして高回転時には、休止していた吸気バルブのひとつを駆動し、吸気側2バルブとして吸気量の低下を抑制しました。

 この機構により、最高出力は94馬力/最大トルク13.4kg・mを発揮し、パワーステアリング装着車は20.0km/Lを達成。なお、車重は960kgに抑えられ、タイヤも当時としては細めの165/70R13を履いていました。

 同一排気量の、低回転・高回転切り替え式VTECを搭載する「VTi」グレードは、130馬力/14.1kg・mのクラストップのエンジン出力と、14.1km/Lを達成。

 燃費性能こそETiグレードのほうが優れていますが、VTiグレードと比較するとスペック的に見劣りを感じるものです。

 そのためか、バルブ休止式VTECは2代目「フィット」などにも採用されましたが、積極的にアピールされることはありませんでした。

●三菱「ランサー/ミラージュ MVV」

 1991年10月に発売された三菱「ランサー」と「ミラージュ」には、「MVV」という低燃費グレードが設定されていました。

 グレード名にもなった「MVV」とは、「三菱バーチカルボルテックス」の頭文字を取ったもので、搭載エンジンにおこなった工夫そのものの名称です。バーチカルとは「縦」、ボルテックスとは「渦」のことで、混合気に縦渦=タンブル流を与えることを特徴としていたのです。

 エンジンのレイアウトは1.5リッターSOHC12バルブで、各気筒吸気2バルブ、排気1バルブとしていました。

 空気と燃料の基本の割合を燃料が薄い希薄燃焼とし、スパークプラグの周辺に燃料が濃い領域が来るように調整。着火を確実にするとともに、タンブル流で燃え広がりを速くしていました。

 同時に設定されていた1.5リッターDOHC4バルブエンジンが最高出力115馬力を発揮していたところ、このエンジンは91馬力/12.4kg・mとかなり控えめ。

 外観や装備品は営業車グレード並みにされたため車重は920kgと軽量のうえ、タイヤも当時の省燃費指向である155SR13を装着。あくまでも燃費スペシャルモデルとしての位置づけとなってしまったのです。

 このモデルの燃費向上に対する追求はもう一手ありました。

 1992年10月には可変バルブタイミング&リフト機構を備えた「MIVECエンジン」に気筒休止機能を加えた「MIVEC MDエンジン」を搭載。MIVECによるハイパワーと低負荷運転時に気筒を休止させる技術を一体化させたものです。

 このエンジンは1.6リッターで175馬力/17.0kg・mを発揮し、ホンダのDOHC VTECエンジン搭載車と並ぶ高性能さを誇り、定速走行時やアイドリング時に2気筒を休止させて燃費を向上が図られました。

 MIVEC MDエンジン搭載車は受注生産で、同時期のGSRエボリューション・シリーズと比べて隠れた存在でしたが、クラストップレベルの高出力と低燃費を両立させようとした稀有な存在で、MVVもMIVEC MDも技術の三菱を強く印象付ける技術でした。

●マツダ「ファミリア(BH型)」

 1994年6月に発売されたマツダ「ファミリア」は、フルタイム4WDの「GT-R」などのハイパワーモデルも廃止し、質実剛健なモデルを前面に押し出していました。

 そして発売から遅れること3か月、1994年9月にZ5-DEL型 DOHC 1.5リッターのリーンバーンエンジンを追加設定。最高出力は94馬力/最大トルク13.5kg・mを発揮し、10・15モード燃費は20km/Lを達成しています。

 基本となった「Z5-DEエンジン」を搭載する5速MT車は97馬力/13.5kg・mで燃費は17.2km/Lと、Z5-DELエンジンの性能低下はわずかでしたがカタログ燃費の向上もわずかでした。

 両車の車両本体価格の差は約5万円だったのですが、当時の販売現場や購入を考えている人たちに5万円の価格差とリーンバーン技術の特別さが伝わったかどうか不明です。

 このような存在で、技術上のトピックスも少なかったため、地味な存在となってしまいました。

 しかし、このファミリアの登場から18年後、マツダは低燃費・高効率エンジンのスカイアクティブエンジンシリーズを展開し、高圧縮・高出力・低燃費を実現しました。

 スカイアクティブシリーズの成功には、リーンバーンエンジンの開発で得られた知見も多かったかもしれません。BH型ファミリアは、多少の失敗もめげないマツダの企業姿勢を強く感じさせるクルマでした。

※ ※ ※

 当時の低燃費車は、現在でいうところの「燃費スペシャル」グレードで、タイヤも装備も簡素化して車重も低減させていたモデルが多数を占めました。

 また、いずれのリーンバーンエンジンも、走行条件によっては排出ガス中の窒素酸化物を抑えるのが難しいという問題があり、排出ガス規制が強化されるなかで存続が困難になって次の時代にはほとんど受け継がれませんでした。

 しかし三菱は1996年発売の「ギャラン」において、MVVで培った縦渦の技術をさらに昇華。量産モデルとして世界初のガソリン筒内噴射技術を実用化して燃費をさらに向上していったのでした。

 それまでハイパワー一辺倒だったエンジン技術を低燃費に生かし、ユーザーに燃費の大切さを啓発、そして1997年にトヨタは世界初の量産ハイブリッド車「プリウス」を発売します。

 今回紹介した3車は、いわばハイブリッド技術が商業的にも成功するための市場の下地を作ったような形になり、たとえ短命に終わったモデルであっても、意義があったクルマたちだったのではないでしょうか。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

約138万円! 全長4m以下のホンダ「超小型セダン」がカッコいい! MTもある「アメイズ」インドで爆売れ! どんなモデル?
約138万円! 全長4m以下のホンダ「超小型セダン」がカッコいい! MTもある「アメイズ」インドで爆売れ! どんなモデル?
くるまのニュース
キジマから GSX-8S/R用カスタムパーツ5アイテムが発売!
キジマから GSX-8S/R用カスタムパーツ5アイテムが発売!
バイクブロス
圧倒的加速の[GT-R]は価格も別格! そもそもターボの[定義]ってなに?
圧倒的加速の[GT-R]は価格も別格! そもそもターボの[定義]ってなに?
ベストカーWeb
「幻の最終戦」で悪い流れをどう断ち切る? 豪雨から快晴で劇的展開!! KONDOレーシング56号車はもてぎでどう走った?
「幻の最終戦」で悪い流れをどう断ち切る? 豪雨から快晴で劇的展開!! KONDOレーシング56号車はもてぎでどう走った?
ベストカーWeb
ストロール、フォーメーションラップでのコースオフはブレーキトラブル? しかしなぜかグラベルにハマる……クラック代表「予想外のこと」
ストロール、フォーメーションラップでのコースオフはブレーキトラブル? しかしなぜかグラベルにハマる……クラック代表「予想外のこと」
motorsport.com 日本版
高速のカーブが走りやすいのはアウトバーンゆずりの大発明のおかげ! 誰もが知らずに恩恵を受けている「クロソイド曲線」とは
高速のカーブが走りやすいのはアウトバーンゆずりの大発明のおかげ! 誰もが知らずに恩恵を受けている「クロソイド曲線」とは
WEB CARTOP
究極の『インテグラ・タイプS』爆誕か!? アキュラ「HRCプロトタイプ」公開へ…SEMAショー2024
究極の『インテグラ・タイプS』爆誕か!? アキュラ「HRCプロトタイプ」公開へ…SEMAショー2024
レスポンス
モロゾフがフォルクスワーゲンコラボ「Love Beetle」2025年バージョンを発表!食べも飾っても楽しめるバレンタインギフトだ
モロゾフがフォルクスワーゲンコラボ「Love Beetle」2025年バージョンを発表!食べも飾っても楽しめるバレンタインギフトだ
Webモーターマガジン
角田裕毅、序盤3番手走行も赤旗が不利に働き7位「走りには満足。結果に複雑な思いだが、入賞できたことは嬉しい」
角田裕毅、序盤3番手走行も赤旗が不利に働き7位「走りには満足。結果に複雑な思いだが、入賞できたことは嬉しい」
AUTOSPORT web
【MotoGP】ヤマハに復活の兆し? クアルタラロ、電子制御の改善を実感「パフォーマンスはずっと良くなった。良いステップだ」
【MotoGP】ヤマハに復活の兆し? クアルタラロ、電子制御の改善を実感「パフォーマンスはずっと良くなった。良いステップだ」
motorsport.com 日本版
2026年レギュレーション調整で“コンセプト違い”のマシンが生まれる? F1チームは歓迎
2026年レギュレーション調整で“コンセプト違い”のマシンが生まれる? F1チームは歓迎
motorsport.com 日本版
メリットなかった!? トヨタもホンダも「アイドリングストップ機能」廃止へ! 「使いにくい」の声も! どんな反響があった?
メリットなかった!? トヨタもホンダも「アイドリングストップ機能」廃止へ! 「使いにくい」の声も! どんな反響があった?
くるまのニュース
欧州ではすでに新型が登場! アドベンチャー大型スクーターの大ヒットモデル ホンダ「X-ADV」はどう変わる?
欧州ではすでに新型が登場! アドベンチャー大型スクーターの大ヒットモデル ホンダ「X-ADV」はどう変わる?
VAGUE
コンセプトはGo Ahead! トムスが40系『ヴェルファイア』用「スタイリングパーツセット」を発売
コンセプトはGo Ahead! トムスが40系『ヴェルファイア』用「スタイリングパーツセット」を発売
レスポンス
ハミルトン、低調メルセデスF1での残り3戦はヤケクソ? フェラーリ移籍を前に「今はクリスマスを楽しみにしている」
ハミルトン、低調メルセデスF1での残り3戦はヤケクソ? フェラーリ移籍を前に「今はクリスマスを楽しみにしている」
motorsport.com 日本版
[自動車ディーラー]が運営母体? [神戸マツダ]が整備専門学校を開校へ
[自動車ディーラー]が運営母体? [神戸マツダ]が整備専門学校を開校へ
ベストカーWeb
13年放置のホンダ「ライフ ステップバン」を仲間とともにレストア…現代風にアレンジしたおしゃれなカスタムメニューを紹介します
13年放置のホンダ「ライフ ステップバン」を仲間とともにレストア…現代風にアレンジしたおしゃれなカスタムメニューを紹介します
Auto Messe Web
「カワサキ プラザ横浜戸塚」がリニューアルオープン!楽しいモーターサイクルライフをサポート!  
「カワサキ プラザ横浜戸塚」がリニューアルオープン!楽しいモーターサイクルライフをサポート!  
モーサイ

みんなのコメント

7件
  • 燃費スペシャルと言えば初代インサイトでは?
  • 燃費スペシャルの記事なのになんで三菱のだけ燃費書いてないんだろ?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

193.7235.2万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

29.8249.2万円

中古車を検索
シビックの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

193.7235.2万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

29.8249.2万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村