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ヴィンテージ・サウンドに包まれる タルボ・ラーゴT26 GSL パリ製の4.5L直6 前編

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ヴィンテージ・サウンドに包まれる タルボ・ラーゴT26 GSL パリ製の4.5L直6 前編

低価格化と技術革新に揉まれたブランド

最後にひと花咲かせようと、考える人は少なくない。誇り高きフランスの上級ブランドも、そんな願いを抱いたのだろうか。

【画像】タルボ・ラーゴT26 グランドスポーツ タルボ・サンビームのレストモッド版も 全63枚

低価格化と技術革新という、1950年代の変化に揉まれた多くの自動車メーカー。モデル開発に当てられる予算は限られ、既存モデルへの需要は低調。ドライエやホッチキスなどは、1960年代を迎えることができなかった。戦後のブガッティも経営に苦しんだ。

1903年創業という歴史を持つタルボ・ラーゴも、状況は同じだった。大排気量エンジンを搭載するラグジュアリー・ブランドとして、政府の意向もあり持ちこたえていたけれど。

1946年、フランスは国内22社の自動車メーカーが生産する、車種や台数などの枠組みを制定。タルボ・ラーゴには、新モデルのレコードT26を製造し、輸出することが許された。

当時の国内には、45台のタルボ・ラーゴが既に走っていた。ガソリンは配給制で、タイヤですら入手が難しい時代。税金も高く、自国内にはまだ充分な需要が存在しなかった。

タルボ・ラーゴ・レコードT26には、シトロエンのフラッグシップ・モデル、15シスの4倍に当たる120万フランの価格が付いていた。2ドア・コーチかカブリオレ、4ドア・サルーンというボディタイプを選択できた。

自社内でデザインされた美しいボディを、160km/h以上のスピードまで加速させたのが、4.5Lの直列6気筒エンジン。最高出力は172psを誇り、当時のフランス製自動車ユニットとしては最強だった。ブレーキには油圧システムも採用されていた。

ル・マンの総合優勝も掴んだ名エンジン

フランスの上級ブランドの首を絞めたのが、エンジンの排気量と回転速度をベースに算出された馬力税。4.5Lエンジンのタルボ・ラーゴには、シトロエンのフラッグシップの4倍近い税金が掛けられた。

そんな厳しい政策が取られた理由は、国内の自動車産業を守るため。アメリカの巨大メーカーに対し、自動車販売を規制することが本来の目的だった。

しかし、歴史あるブランドを追い込むことにも繋がった。タルボ・ラーゴが、1956年にパリ郊外のシュレーヌ工場で生産したクルマは、1週間に1台以下。1950年の433台を頂点に、1951年は34台へ急減。1953年には17台まで落ち込んでいた。

1959年にフランスの自動車メーカー、シムカがタルボ・ラーゴを買収するが、開店休業状態に近かった。フランス人のクルマに対する考え方にも、大きな影響を及ぼした。

それより以前、1935年から1959年に経営権を握っていたのが、アンソニー・トニー・ラーゴ氏。彼のもとで生産されたモデルに関しては、正確な情報を掴みにくい。

少なくとも、今回ご紹介するT26 グランド・スポーツ・ラーゴ(GSL)が、パリで作られた最後のモデルの1つではある。生産期間は1953年から1955年までで、台数は19台か21台とされている。

動力源は、トニー・ラーゴとカルロ・マルケッティ氏が設計した低回転型の直列6気筒エンジン。基本設計は古く、戦時中のグランプリマシンにも搭載されていたユニットで、ル・マンの総合優勝も掴んでいる名機だった。

再生計画を任されたトニー・ラーゴ

イタリアの北部、ヴェネツィア近郊で生まれたというトニー・ラーゴは、アメリカの航空機用エンジンを手掛けるプラット&ホイットニー社で活躍。英国では、オーバーヘッド・バルブ・エンジンの開発にも関与している。

グレートブリテン島の中央、コベントリーのセルフ・チェンジング・ギアズ社では取締役を務め、プリセレクター・トランスミッションの販売権を広域に獲得。彼はこの技術に強く惹かれ、タルボ・ラーゴのモデルへも大きな影響を与えている。

1932年にタルボ・ブランドの再生計画を任されると、その3年後に自ら買収。投資家の援助を借り、ルーツ・グループから経営権を引き継いだ。

タルボ・ラーゴの名のもと、4気筒から6気筒、2.3Lから4.0Lまでのモデル・ラインナップが再構成された。ラグジュアリー・サルーンや7シーターのリムジンだけでなく、高性能なT150 SSやT150 ラーゴ・スペシャルなどを市場へ投入している。

特にT150は、ティアドロップ型のフォルムに、タイヤスパッツの付いたスタイリングが特徴。フランスのコーチビルダーの、芸術的才能が前面に表れていた。

第二次大戦大戦が始まると、イタリアの市民権を持っていたトニー・ラーゴは、航空機エンジンの製造をドイツ軍から請け負った。ビジネスに関しては、ドライな考え方を持っていたようだ。

平和が訪れた1946年、レコードT26と呼ばれる新モデルを発表。フィアットにも在籍していた技術者のマルケッティへ協力を仰ぎ、戦時中から準備が進められていた。

213psの直6エンジンで196km/h

T26 GSLの発表は、1953年10月。シャシーは、過去のモデルよりホイールベースが短く、サスペンションはフロント側に新開発のコイルスプリングを採用。モダンなルックスの、準量産モデルとして開発された。

直列6気筒エンジンのカムシャフトは新開発のアグレッシブなもので、ピストンの圧縮比は8:1。ソレックス・キャブレターを3基載せ、品質が良くなっていたガソリンの性能を引き出し、最高出力は213psを発揮した。

美しいボディは、肉厚のスチール材をガス溶接して成形。美しいラインが、職人の手で打ち出された。ドアとボンネット、ブーツリッドには木材のフレームとアルミニウム・パネルが用いられていたが、GSLの車重は1.8t前後で軽量とはいえなかった。

ボディのデザインは、コーチビルダーによるスペシャルボディと、1950年代風のフィンの付いたスタイリングの特徴とが、絶妙に融合されている。柔らかなラインが、独特の趣を漂わせる。

それまでのタルボ・ラーゴや欧州の上級グランドツアラーと同様に、GSLの多くは右ハンドル車だった。BMW V8エンジンを搭載した北米市場向けモデルを1956年に発売するまで、左ハンドル車を同社は作っていない。

トランスミッションは、トニー・ラーゴが好んだプリセレクター。1000rpm当たり46.6km/hという比率のトップギアへシフトアップすれば、最高速度は196km/hに届く計算だった。実際に計測されたわけではないが。

この続きは後編にて。

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