ラグジュアリーを全面に押し出すベントレー
執筆:Matt Prior(マット・プライアー)
【画像】フェラーリかアストンかベントレーか GT頂上決戦 全169枚
翻訳:Masataka Suzuki(鈴木 將天)
世界最高のGTを探すとしたら、今までならその選択肢はベントレーかアストン マーティンであった。この市場に地球上で最も刺激的なメーカーが参戦してきたのだ。フェラーリ・ローマはアストンのDB11やベントレー・コンチネンタルGTに対抗できるのだろうか。3台を比較して検討してみよう。
まずは最もラグジュアリーな一台、ベントレー・コンチネンタルGTだ。車内の装備は満載でマテリアルの質感も素晴らしく、どんな素材でも選ぶことができる。ではその走りは精巧かつ美しい内装の素晴らしさに見合ったものだろうか。
一言で言えばその答えは「イエス」だ。ラグジュアリー志向のクルマとしては珍しくDCTを採用しているが、そこから想像されるほどのレスポンスの代わりに非常にスムーズな仕立てになっている。大柄なクルマゆえ軽々とした身のこなしとまではいかないものの、非常にリニアで自然な走りを見せてくれた。
ラグジュアリーGTとしても最上級の味付けであり、ベントレーらしいどっしりとして洗練された仕上がりだ。こんなクルマを嫌いになる方が難しいと言えるだろう。
FRらしい自然な走りが魅力のアストン
次に試乗するのはアストン マーティンDB11だ。ドライビングポジションは素晴らしく、非常に包まれ感のあるコクピットだ。内装の素材も良く、随所にカーボンが使われておりスティッチやレザーの仕上げも美しい。
とはいえクールでない部分も散見される。代表的なのは2,3世代も古いメルセデス製インフォテインメントシステムだ。非常に動作が遅く、アイフォーンとの接続などの先進機能も揃っていない。そしてデジタル製メーターパネルの解像度は低く、1982年に登場したシンクレアZXスペクトラムを思い起こさせる。
実際に走らせてみると、ベントレーほどの隔絶感はなく、路面との繋がりを感じられるスポーティな味付けだ。こちらはDB11の中でもAMRというモデルで、5.2LのV12ツインターボを搭載しており、V8のDB11よりはノーズの重さを感じるもののベントレーよりは軽く俊敏だ。乗り心地とハンドリングが高次元でバランスされている。
ロングホイールベースのFR車らしい自然なフィーリングで、非常に甘美な走りが得られるだろう。スポーツモードやスポーツ・プラスを選択すれば各所が引き締まり、狭いワインディングでも軽快に走れるだろう。長距離移動にも不満はなく、より楽しめるバランスが魅力だ。
スポーツカー寄りの俊敏な走りを見せるフェラーリ
最後はフェラーリ・ローマだ。今回の他の2台はもちろんだが、今までのフェラーリとも全く異なるクルマである。フェラーリと言えば中央の大きなレブカウンターが特徴だが今回はそれもデジタル化され、ステアリングにあったボタン類の多くがタッチ式に置き換わった。スタイルやデザイン、それに設計思想は好みだが、その走りはいかほどだろうか。
まず言えるのは他の2台ほどのフラット感はなく、カミソリのようにシャープなステアリングだ。GTとしてのラグジュアリー性よりも完全にスポーツ寄りに振られていることがわかる。ロック・トゥ・ロックは2回転ほどとクイックで、ごくわずかな入力にも反応する。
アストンやベントレーのような重さを感じさせず、タイヤのコーナリングフォースを自然に感じられる。ミーアキャットの頭のような回頭性で、リラックスしたGTというよりもスポーツカーらしさを強く感じた。
他の2台と比べると洗練性や自然さでは劣るものの、ペースを上げても良く走り、サーキットでも楽しめそうだ。今回の3台は目指す方向が少しずつ異なっており、どれが欲しいかは人によって意見がわかれることになりそうだ。わたしは高速道路も山道も走り、音も楽しめるクルマが好みであり、その点ではロングノーズのFRらしい走りが楽しめるアストンを選びたい。
詳細は動画にてお楽しみいただける。
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