トヨタ自体が放置している感のある悲しいモデルも……
国内でもっとも販売台数の多いメーカーは、言うまでもなくトヨタだ。2017年の暦年(1~12月)におけるトヨタの国内シェアを見ると、市場全体でも30%、トヨタが得意な小型/普通車に限れば46%に達する。
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人気車も多く、2017年の小型/普通車市場における販売1位はプリウスだった。2位は日産ノートに奪われたが、3位はアクア、4位はC-HRとトヨタ車が続く。このほかシエンタ、ヴォクシー、ルーミーなども上位に喰い込んだ。
しかしその一方で、トヨタ車のなかにも売れ行きが低調な車種がある。これを取り上げてみたい。
1)マークX
マークXは人気の高かったマークIIの後継車種で、現行型は2009年に発売された。2010年には1カ月に2500~3500台を売ってセダンでは堅調な部類に入ったが、今は400~600台にとどまる。トヨペット店の主力車種としては下落ぶりが激しい。
不人気の理由としてLサイズセダン市場の縮小も挙げられるが、もっとも大きな影響を与えたのは、トヨタがマークXに改良をほとんど加えていないことだ。
クラウンはハイブリッドや2リッターターボを新たに搭載したのに、マークXは何のケアもされていない。唯一安全装備のトヨタセーフティセンスPは装着されたが、時期が遅く販売のテコ入れにはならなかった。前身のマークIIはかつてトヨタの国内販売を支えた基幹車種なのに、この功績を忘れたのか、トヨタのマークXに対する仕打ちは非情なほどに冷たい。
2)アベンシス
ミドルサイズのステーションワゴンで、イギリスの工場で生産される輸入車だ。欧州で売るために開発されたからサスペンションは4輪独立式で、走行安定性と乗り心地のバランスも良い。
ホイールベース(前輪と後輪の間隔)が2700mmと比較的長いため、前後席ともに居住性が優れている。全長が4820mmに達するから荷室の床面積も広く、実用的なワゴンに仕上げた。安全装備ではトヨタセーフティセンスCを加えている。
ところが売れ行きは伸び悩み、1カ月の登録台数は100台を下まわる。
販売不振の理由は選択の決め手に欠けることだ。実用性の高いワゴンだが、例えばスバル レヴォーグと比べた場合、アベンシスが勝てる機能はほとんどない。動力性能、走行安定性、乗り心地、安全装備は明らかに負けていて、居住性は後席を含めて同程度だ。荷室面積はアベンシスが少し広いが、今の積載容量を重視するユーザーは、抜本的に実用性を高めたミニバンを選ぶ。従ってワゴンでは荷室面積がセールスポイントになりにくく、アベンシスは売れていない。
3)ハイラックス
2017年に発売されたクルマの中で、異彩を放っていたのがトヨタのハイラックスだ。ダブルキャブのピックアップトラックで、タイの工場で生産された車両を輸入している。
ボディサイズは全長が5335mm、全幅が1855mmと大柄で、エンジンは直列4気筒2.4リッターのクリーンディーゼルターボを搭載する。駆動方式は4WDのみで、価格はXが326万7000円、上級のZは374万2200円だ。
輸入を開始した理由として、2004年まで販売されていた日本仕様のハイラックスが、今でも約9000台保有されていることを挙げている。
ただし以前の日本仕様のハイラックスは4ナンバー車(5ナンバー乗用車と同サイズ)で、価格は140万円前後だった。現行型はあまりにも大柄で、価格は2.5倍に跳ね上がる。
そのために販売計画は1年間に2000台(1か月当たり約167台)とされ、最初から堅調に売ることは考えていない。
そしてピックアップにはマニアックなユーザーが多いから並行輸入も活発だ。メーカーが輸入に着手するなら、ユーザーの意見を聞くべきだろう。現状のグレード構成などを見ると、マニアックなユーザーの意見を聞いたとは思えない。
4)プリウスPHV
充電機能を備えたプリウスだが、現行型はボディの前側や後部、カーナビなどがベース車のプリウスとは異なる。
2017年2月の発売時点で、プリウスPHVの販売目標は1カ月に2500台だった。この時点でプリウスは1か月の平均販売台数が1万6000台くらいだから、2500台は控え目な数字だった。それでも2017年のプリウスPHVの登録台数は2万6700台だから、おおむね目標通りだ。プリウス全体に占めるPHVの販売比率は約17%にとどまる。
このようにプリウスPHVの売れ行きが伸び悩むのは、価格が高く、なおかつベース車のプリウスも燃費が優れているためだ。走行コストによって、価格差を取り戻せない。
具体的にいえば、Aグレード同士で比べると、プリウスPHVの価格はプリウスに比べて約103万円高い。ただしPHVにはカーナビが標準装着され、LEDヘッドライトなども上級化する。これらの装備差を補正すると価格差は72万円に縮まる。さらにPHVに交付される20万円の補助金も受け取ったとすれば、最終的な実質差額は52万円だ。
この金額を走行コストの差額で取り戻すには、プリウスPHVがエンジンを一切作動させず充電された電気だけで走っても(電気料金は東京電力の従量電灯Bで計算)、約27万kmを走行せねばならない。
つまり「モトを取れるか否か」という判断では、プリウスPHVはプリウスに比べて明らかに割高だ。充電する行為に価値を見い出せないとメリットが乏しい。
プリウスPHVにオプション設定されたソーラー充電システムも同様だ。充電された電気で1日平均2.9kmを走れるが、28万800円のオプション価格を取り戻すには70年以上を要する。それでも「クルマが自分で充電して走る」ことに価値を見い出すわけだ。
エコは損得勘定だけでは割り切れず、プリウスPHVの価値観も同様なのだろう。その意味ではエコカーの代表で、頻繁に改良を行えば、今後の伸びも期待される。
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