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カーガイ・レーシングのフェラーリ296 GT3デビュー戦は苦しいレースに。厳しい状況でも掴んだ素性の良さ

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カーガイ・レーシングのフェラーリ296 GT3デビュー戦は苦しいレースに。厳しい状況でも掴んだ素性の良さ

 6月17~18日に静岡県の富士スピードウェイで開催されたファナテックGTワールド・チャレンジ・アジア・パワード・バイAWSの2023年第2ラウンド。カーガイ・レーシングが投入したフェラーリ296 GT3はデビュー戦で苦しいレースを強いられたものの、マシンの素性の良さは掴んだようだ。

 昨年度のGTWCアジアとジャパンカップの王者であるカーガイ・レーシング。今季も木村武史とケイ・コッツォリーノというドライバーラインアップは変わらないものの、マシンは昨年使用したフェラーリ488 GT3から、2023年にデリバリーが開始された296 GT3に変更してチャンピオン防衛を目指す。

27台にタイム加算ペナルティ。88号車が逆転優勝、Dステーションは7位に降格/GTWCアジア第4戦

 イタリアの名門フェラーリが2023年に登場させた296 GT3は、ベース車両変更による外見の変化はもちろん、エンジンレイアウトやギヤボックス、シャシー、空力、コックピットなど、あらゆる面で再設計が行われた新世代GT3車両。すでにデリバリーが行われている海外レースでは、5月のニュルブルクリンク24時間レースをフェラーリとして初制覇するなどの結果を残している。

 そんな296 GT3を国内に初登場させたカーガイ・レーシング。まずクルマの第一印象を聞くと、「クルマが滑らかで安定感もあり、ブレーキもトラクションも効くので、すごく速いクルマだなと思いました」と木村。

「ただ、その性能ゆえに(BoP/性能調整により)かなり中間加速が押さえられてしまっていて、コーナーからの立ち上がりで他車に離されてしまいます。今回の舞台である富士スピードウェイですと、ダンロップコーナーから最終のパナソニックコーナーまで1速もしくは2速で回っているので『3速に入れば』という苦しさはあります」

 一方でパートナーのコッツォリーノは2月からすでに296 GT3のテスト走行を行っており、3000kmほど走行を経験した状態で富士戦を迎えた。なお、今回のレースにはフェラーリのエンジニアもカーガイ・レーシングに帯同してサポートを実施している。そんな状況を踏まえ「この短時間の間にいい感じにマシンを仕上げられました」と語るも、今季からのニューマシンということで熟成が進んでいない部分もあるという。

「正直まだ僕らは”テスト段階”です。フェラーリからのデリバリーがギリギリのタイミングということに加え、さらにGTWCアジアのテスト規制で開幕以降はテストをすることができません。ですので、今回のレースは”ぶっつけ本番のシェイクダウン”という状態です」

 また、296 GT3では先代の488 GT3で表示されていた、コーナーからコーナーまでのデルタ間タイムに対して速いか遅いかを示す表示ができず「運転しながら反省と改善をすることができないので、右も左も分からない」(コッツォリーノ)状態での走行を強いられており、予選ではエンジニアがラップタイムを逐一無線で伝えていたという。

 そんな状態で迎えた決勝レース1。14番手からスタートした1号車296 GT3は、スタートスティントを木村が担当したが、2周目のダンロップコーナーで発生したアクシデントを避けるかたちでコースを外れ、一気に10台ほどのマシンに追い抜かれてしまう不運に遭遇。さらにその後、コッツォリーノがピットアウトする際にギヤが“1.5速”にスタックしてすぐに発進できないというトラブルでタイムロス、12位でレース1を終えた。

 ギヤのスタックという新型マシンならではのトラブルに「近年のマシンは高度に複雑化されているので、シンプルにはいかない部分があります」と木村。このふたつのタイムロスがなければ「6~7番手」でフィニッシュすることもできたとふたりはレース1を振り返る。

「ただ、タラレバですけど、それらの状況を除けばトップ10フィニッシュが見えていたことは良いことですし、しっかりとクルマが走行していることは上出来です。レース1は初めてガソリン満タンでロングランができましたし、僕らドライバーもクルマの動きやタイヤの落ち方を確認することができました」とコッツォリーノはレース1を総括。木村も「明日(レース2)は結構いいかもしれない。今日はすごく学習できましたよ」と前向きな言葉を残した。

■3番手スタートも混戦で現れた"中間加速”の厳しさ「勝負できない」
 翌日の18日に行われた決勝レース2。前日のレース1での走行に手応えを掴んでいたカーガイ・レーシングの1号車フェラーリ296 GT3は3番グリッドから60分間のレースに挑んだ。

 そのスタートで抜群のダッシュをみせたコッツォリーノだったが、スタートが良すぎたことでトップと2番手のマシンに詰まってしまい、一瞬スロットルを抜く状況に。さらにアウトから911号車ポルシェ911 GT3 Rに並ばれ、コカ・コーラ・コーナー進入で先行を許してしまう。

 その後は4番手をキープしながら安定した走りを披露していたものの、セーフティカー明けのリスタートで4号車ポルシェにかわされ5番手に。「ポルシェに比べると、少し加速が遅いことは課題です。マシンはコーナリングが速いですけど、どうしてもリスタート時の2速、3速の加速で離されてしまいます」とコッツォリーノ。

 その言葉どおり、レースを見ていても296 GT3はコカ・コーラ・コーナーやグリーンファイト100R、第3セクターのコーナリング区間では前のマシンと差を詰めるものの、ADVANコーナーや最終コーナーの立ち上がり加速で離されていくことがオンボード映像でも確認できる。

 ステアリングを引き継いだ木村も、集団のなかでの加速の鈍さを感じており「やはり中間(加速)がないので、ちょっと勝負できないですね」と、レース後に厳しい表情を浮かべた。

「できることはやりましたが、特に後半スティントになるとタイヤのグリップが落ちてしまい、武器であるコーナリングでも勝負できなくなってしまいます。もう追い上げどころではなく……厳しかったです」

 レース残り3分という段階では8番手となった1号車296 GT3。チェッカーフラッグが振られる最終ストレートでも992号車ポルシェと3号車メルセデスに横に並ばれながらのフィニッシュとなったが、ポジションを守り切って8位(正式結果では9位)でレース2を終えた。

 レース1、レース2ともに厳しい戦いを強いられたカーガイ・レーシングだが、フェラーリ296 GT3が持つ素性の良さは掴んだようで、「でも、クルマが良いことは間違いないです」と木村は続ける。

「スタビリティとブレーキはすごく良くて、Cd値(空気抵抗係数)が低いのでストレートスピードも最後にかけて伸びてきます。あまりBoP(性能調整)のことは言いたくないですが、やはり中間加速がネックになっていて、2速と3速の立ち上がりが厳しいですね」

 木村によると、296 GT3と488 GT3は「スマホとガラケーくらい違う」とのこと。しかし熟成の進んでいない296 GT3は「まだアプリケーションが入っていないスマートフォン」と例え、乗りやすいのは296 GT3だが、現段階では488 GT3のほうが勝負できるマシンだと評価した。

 なおカーガイ・レーシングは、7月15~16日に開催される次戦の鈴鹿大会はドライバーふたりのレースバッティングにより欠場を予定しており、モビリティリゾートもてぎでの第4ラウンドがフェラーリ296 GT3での2戦目となる。

 ストップ&ゴーが特徴のもてぎに対しては「296 GT3はブレーキング時のパフォーマンスがかなり良いですし、コーナリングも速いので、もてぎは絶対にいいと思います」とコッツォリーノは自信を覗かせ、課題である加速について「もう少し出せるように取り組んでいきます」と語った。

 国内初登場で注目を集め、期待値も大きかったフェラーリ296 GT3だが、デビューレースは思わぬかたちで苦戦を強いられてしまった。しかし、マシンが持つスタビリティやブレーキ、コーナリングの良さは確かなもののようで、今後セットアップなどの熟成が進めば上位を争う存在になってくるだろう。

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