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ポストディーゼル車のダークホース!? 航続距離1000km超を実現するいすゞギガLNGの可能性を探る!!

掲載 更新 15
ポストディーゼル車のダークホース!? 航続距離1000km超を実現するいすゞギガLNGの可能性を探る!!

 BEVやFCVが次世代車として脚光を浴びる中、天然ガス自動車の開発にも力を入れているのが、いすゞ自動車だ。同社はエネルギーセキュリティや環境負荷低減の観点から約30年にわたって天然ガス自動車の開発・普及促進に注力。現在では国内で唯一、天然ガス自動車を販売するメーカーとして知られている。

 同社が販売している天然ガス自動車は、従来まで小型トラック「エルフ」と大型トラック「ギガ」のCNG(圧縮天然ガス)車の2モデルだったが、昨年ギガのLNG(液化天然ガス)車が登場。長距離輸送を担う大型トラックに求められる1000km超の航続距離を実現し、注目を集めている。

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文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/いすゞ自動車
※2021年12月10日発売「フルロード」第43号より

ギガLNG車はギガCNG車がベース

ギガLNG車(右)とギガCNG車(左)。ギガCNG車は2015年に登場し、改良を続けながら販売されている

 いすゞ自動車は1993年頃に天然ガス自動車の研究開発に着手。国内では小型トラックや路線バスなどの車種でCNG車を幅広く展開し、2009年頃からは海外でもCNG車を展開。2015年には大型CNGトラック「ギガCNG車」を発売。同車両は改良を続けながら現在も販売中だ。

 いっぽう、ギガCNG車をさらに発展させるべく開発されたのが、液化天然ガスを燃料とするギガLNGだ。ギガCNG車をベースに開発されたギガLNG車は2018年にモニター走行を開始。2021年10月に量産モデルが正式発売されている。

 エンジンはギガCNG車に搭載されている6UV1型(直6/9.8L)がベースで、LNG車独自の燃料供給システムを搭載。燃料容器(タンク)に備え付けられた熱交換器でLNGを加温し、気化された状態でエンジンに供給する。

 燃料容器はCNG車のものをLNG車専用のものに換装し、左右ホイールベース間に搭載。容量は片側348Lで、合計696Lが充填可能。1充填あたりの航続距離は1000km超を実現する。ちなみにCNG車の航続距離は約500kmだ。

 また、左右リアオーバーハング部にはCNG車の燃料容器を搭載。容量は合計で300L。これは国内にLNGの充填設備がほとんど整備されておらず、万一燃料切れを起こしても、CNGに切り替えれば充填設備にたどり着くことができるはず……、というもの。

 なお、国内には東京~名古屋~大阪間を中心に約270カ所のCNG充填設備が存在。大型車が入れない小規模な充填ステーションを除いても、CNGだけで約200kmの航続距離があるので、おおむねフォローできる考えだ。

CO2削減効果はディーゼル車以上

2018年4月から2019年3月に行なわれたギガLNG車のモニター走行は総走行距離25万~35万kmにおよぶもの。燃費や使い勝手は良好のようだ

 ギガLNG車のモニター走行は、2018年4月から2019年3月の約1年間で行なわれた。参加事業者は佐川急便とトナミ運輸の2社で、東京~大阪間を営業運行。1日あたりの走行距離は片道約500kmで、充填は2日に1回実施。総走行距離は25万~35万kmにおよんだ。

 その結果、走行性能はCNG車と同等。排出ガスや騒音の特性もCNG車と同等であることが確認された。燃費は4.4~4.8km/kgで、これはディーゼル車に対して10%以上のCO2削減効果という。充填時間は10分でディーゼル車と同等。燃料供給装置にも問題は発生していない。

 ちなにに、LNGはマイナス162度の液体で、燃料容器は魔法瓶のような二重構造。断熱性が高く、なかなか温まらない仕組みだが、それでも徐々に入熱すると沸点の低いメタンから気化していく。これを「ボイルオフガス(BOG)」と呼ぶ。

 BOGでメタンが抜けると、LNGの組成が変化するウェザリング現象が発生。燃料として使うことはできなくなる。

 このためLNGは充填したら数日で消費する必要があるといわれるが、大型車は都市間輸送で継続稼働するため車両停止期間が短く、BOGが発生しにくいためLNGとの相性がいいのだそう。なお、CNGはBOGの課題がなく、ずっと燃料容器に入れたままでも大丈夫という。

LNG充填インフラの整備状況は?

三菱商事とエア・ウォーターが開発した可搬型の小型LNG充填設備。今年4月からギガLNG車とイタリア製大型LNGトラックによる実証実験も始まる

 LNG車の普及に不可欠なのが燃料供給インフラの整備だ。国内ではギガLNGのモニター走行に合わせて大阪、東京にLNGの充填設備を備えたステーションがオープンしたが、昨年、運営していた出光興産がLNG供給事業から撤退。両施設の今後は未定となっている。

 だが暗いニュースばかりではなく、昨年、三菱商事とエア・ウォーターがLNGを燃料とする大型トラック向けに、物流施設内の限られたスペースに設置可能な小型LNG充填設備を共同開発。近く実証実験を開始するとしている。

 同設備は日本で初めての可搬型充填設備で、停電時にも充填が可能となる世界初の自家発電設備を搭載。寒冷地や湿度が高い地域でも、氷結トラブルを回避することが可能だ。

 実証実験は今年4月の開始がアナウンスされており、参加車両はギガLNG車が1台、イタリア製大型LNGトラックが2台の合計3台。両社は自動車用LNG設備の全国展開も視野に入れており、将来的にはバイオLNGなどの検討も進めるとしており注目だ。

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みんなのコメント

15件
  • スタンドが近くにある大手の企業しか買わないでしょう。ガス車はトルクが無いのでバスやタクシーは利用用途があるけど貨物車にはどうかね、もう何年も前から存在しておりますが普及しないのはスタンドの管理と配備の問題もありますよ、目新しいように記事にしてますがまったくもって古い技術です。
  • 1000kmじゃ心許ないというか、めんどくさいというか…
    地場か中距離までの車かな

    600タンクなら2000kmは走るもんね
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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