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ボディサイズを感じさせないほど俊敏な走りが楽しいランドローバーのスポーツSUV「レンジローバースポーツ オートバイオグラフィ D300」

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ボディサイズを感じさせないほど俊敏な走りが楽しいランドローバーのスポーツSUV「レンジローバースポーツ オートバイオグラフィ D300」

■連載/金子浩久のEクルマ、Aクルマ

 レンジローバーのスポーツ版である「レンジローバースポーツ」が3代目にフルモデルチェンジした。3代目は「レンジローバー」と同じ「MLA-Flex」プラットフォームを用いている。「レンジローバー」と車体や装備などの基本部分は共通にしながらも、設定を変えることによって違いを出しているのは歴代に共通している。

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 パワートレインは3ℓ直列6気筒にMHEV(マイルドハイブリッド)を組み合わせたガソリンとディーゼル、そのガソリンのPHEV版などが揃っていて、2024年にはEV(電気自動車)も登場する予定だ。すべてのグレードに、エアスプリングと電子制御ダンパーが組み合わされたエアサスペンションを備えることになった。

「オートバイオグラフィD300」(税込み車両価格1457万円)というグレードの試乗車には170万6490円分のオプションが装着されていたので、価格は1627万6490円になる。そのクルマで、山口県下の一般道と自動車専用道を併せて4時間試乗した。

機械として優れているか?★★★★★5.0(★5つが満点)

 ユニット名を「D300」と呼ぶディーゼルエンジンは最高出力300馬力と最大トルク650Nmを発生する。印象的なのは、停車中のアイドリング状態でも、カラカラ、コロコロといったディーゼル特有のノイズがほとんど聞こえてこないことだ。

 新開発された6気筒エンジンそのものが発する音量が低いことと併せて、搭載されるシャシーやボディなどの対策が効いているのだろう。ノイズに伴った振動もほぼ感じられなかった。

 また、このD300ユニットはマイルドハイブリッド化されているので、オーソドックスなハイブリッドやPHEVのようにモーターだけで走行することこそできないが、エンジンでの走行をモーターでアシストしている効果をすぐに感じ取ることができた。

 その効能を最もわかりやすく感じるのは発進時だ。特に、赤信号などでの停車中にアイドリングストップし、次の発進時に再始動する時のありがたみが大きい。エンジンが掛かる時のノイズと振動が掻き消されて走り出していく。前述の通り、ノイズと振動が極めて少ないエンジンにモーター駆動によるアシストが加わるので、静かで滑らかな加速感が際立ってくる。マイルドハイブリッド化の効果は大きい。

 標準装着されたエアサスペンションも乗り心地と姿勢の制御に貢献している。まず、細かなショックや振動などを遮断し、大きな入力によっても乱れることなく姿勢変化を起こさず吸収していく。良好な舗装路では、レンジローバーよりも引き締まった乗り心地に終始していた。

商品として魅力的か?★★★★4.0(★5つが満点)

 エクステリアデザインは薄いヘッドライトやテールライト、段差や隙間などを極限まで小さくして、ミニマルな外見を実現している。現行の「レンジローバー」と見分けが付きにくいかもしれないが「レンジローバースポーツ」のほうがよりボクシーな印象が強い。

 インテリアもエクステリアに対応した抑制的なものだ。「レンジローバー・ヴェラール」で展開された“リダクショナリズム”ほど禁欲的ではないが、他社のクルマよりははるかにストイックで、チーフクリエイティブオフィサーのジェリー・マクガバン氏ならではのインテリアに仕上がっている。音声操作を積極的に使い、慣れてくれば従来型よりも使いやすいはずだ。



 オフロードでの走行性能は試せなかったが、6つの走行モードを切り替える「テレインレスポンス2」システムと最低地上高を上げることのできるエアサスペンションによって悪路走破性能が確保されている。

 さらに、試乗車にはオプションの副変速機(価格は6万円)も装着されていたから鬼に金棒だろう。過酷なオフロードでは副変速機でローレンジモードを選択することによって、極低速での踏破力を選ぶことができる。

オフロードを走る機会やロングツーリング(出先での天候や道路状況の変化が読めない)が多い場合は選択に値する。

「レンジローバースポーツ」は、初代から文字通りの“レンジローバーのスポーツ版”として仕立て上げられてきたが、3代目もそれは揺るがない。「レンジローバー」には、どんな速度域や状況下でも包み込まれるような極上の快適性が備わっている一方で、「レンジローバースポーツ」には快活な運動性がある。

 どちらも、共有している基本性能自体のレベルが高いので、特別な要求でも設定しない限り不満を感じることはほとんどないだろう。そして、そのレベル自体がフルモデルチェンジを経るたびごとに上がってきているので物足りなく感じること自体が少なくなってきているのと同時に「レンジローバー」と「レンジローバースポーツ」の差異そのものも以前ほどには感じにくくなってきていることも、また体感できた。

 もうひとつ実感できたのは、車名となっている「スポーツ」の所以は、オンロード性能の向上に充てられていることだった。タイトコーナーを曲がる際に4輪の駆動トルクを常に最適なバランスに調整して素早いレスポンスでハンドリング性能を高めるトルクベクタリングバイブレーキや、ギアシフト操作を最適化し、駆動トルクを最大化、直線加速性能を向上させる「レンジローバースポーツ」だけに備わったダイナミックローンチといったデバイスなどが秋吉台とその周辺のワインディングロードを駆け巡った時に、そのダイレクトなハンドリングと動力性能などに強く寄与していることを実感できた。大きなボディサイズを感じさせないぐらい俊敏な走りっぷりに驚かされた。



「レンジローバー」がすべての地表を極上の快適性で走り抜ける万能のクルマだとすれば、「レンジローバー・スポーツ」はオンロードでの動力性能を特化させている。オフロード走行も抜かりないだろうが、企画と開発の力点がオンロードに置かれているのだ。ライバルはポルシェ「カイエン」やBMW「X6」、アウディ「Q8」などのドイツ勢の大型高性能スポーツSUVになる。それをどう捉えるかで評価も分かれてくるだろう。

オンロード性能の代わりに万能性ならばレンジローバーだけでなく、ランドローバーにはボディの長さが3種類ある「ディフェンダー」もある。「ディスカバリー」や「レンジローバー・ヴェラール」なども選べるし、小型の「ディスカバリー・スポーツ」や「イヴォーク」まで揃っていることを眺め直してみれば、「レンジローバー・スポーツ」の存在意義も伝わってくることだろう。

■関連情報
https://www.landrover.co.jp/range-rover/new-range-rover-sport/index.html

文/金子浩久(モータージャーナリスト)

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