西の名将が“ユーザー目線”で仕上げたハイチューンスペック!
オーナー的スタンスで魅力の引き出しを模索
「赤城レッドサンズ高橋啓介レプリカ仕様のFD3S登場」見た目だけかと思いきやブーストアップで筑波1分フラットの実力!【WEBホットマシン】
ストリートからサーキットまで多くの仕様を手がけ、西のS2000チューナーとして活躍するK1ラボラトリー。今回取材したのはサーキットでの速さへウエイトを置いたマシンではなく、板橋代表が「自分で乗って楽しい1台」を目指してオーナー目線で取り組んでいるストリート仕様だ。
ここで注目すべきは、速さに対する考え方。サーキットのワンアタックでコンマ1秒を削ぎ落とすような極限セットアップもK1ラボラトリーが得意とする部分だが、そうしたアプローチでは必然的にピーキーな仕上がりとなり、連続周回やギャップの多いストリートで扱いにくいマシンとなってしまう。
そこで板橋代表は、走りの楽しさに繋がる速さをしっかりと確保しつつ、扱いやすさのアップに注力。アタック仕様からはわずかにタイムダウンしてしまうかもしれないが、それと引き換えに安定した速さを発揮できるマシンへと仕上げてきたのだ。
そんな扱いやすさ引き出しのポイントは、ピーキーすぎないステアフィールにある。これは単に足回りをマイルドなものとすればOKというのではなく、最適化したジオメトリーで稼ぎ出すトラクションやコーナリング時の安定性高めるLSDセッティングなどフットワーク全体を総合的にバランスさせていくことが必要。バッチリとキマれば、ステージ問わずの速さと扱いやすさの両立が可能になるというわけだ。それでは、マシンをチェックしていこう。
エンジンはKテックのピストン、F22Cのクランク&コンロッドを用いて2.2L化したF20C。戸田レーシングのA2カムとマッチングし、低中速トルク強化と中高回転領域の伸びやかさに優れたエンジンへと導いた。フローベンチで流量測定して確実なモアパワーへと結びつけるフロー向上ポート研磨など、F型エンジンを知り尽くしたチューナーのノウハウが随所へ込められている。
ラジエターを大容量化しただけでは、外気温が高い季節の連続周回で水温が厳しくなる。そんな不安を解消するのがエアコンのコンデンサー下部をカットしてラジエターの冷却効率高めるショートコンデンサー。チューブを減らしすぎずにエアコンの効きと水温安定化をバランスさせた逸品だ。
EXマニの発する熱からマスターシリンダーやABSをガードする遮熱板には、オリジナルのドライカーボン仕様を採用。純正630gに対して188gと442gもの軽量化を図るだけでなく、ボンネットを開けた際にレーシーなアクセントとなる美しさも見逃せない。
アタックシーンやスーパー耐久で培ってきたセットアップノウハウをもとに、RS-Rへオーダーした専用減衰力でステージ問わず理想のフットワークを実現するオリジナルダンパーキット。ジオメトリーの最適化でトラクション高めたリヤメンバーとの相乗効果により、しなやかでありながらタイムアタックもこなせるスペックへと導いていく。
トラクション重視のジオメトリーへ最適化したリヤメンバーが、安定した速さ引き出しのキーポイントだ。また、LSDに関してもクスコ・タイプRSベースのオリジナルセッティングを用意。高速コーナーでは邪魔をせず、タイトコーナーではしっかりと効く仕様に加え、減速側も活用できる2ウェイでコーナリング時の安定感を発揮させる。
S2000で走りの要と位置づけているリヤは、強化スタビをブレードタイプとすることによってセッティング幅を拡大。路面コンディションや走行ステージに応じた最適化をフレキシブルに図っていく。
ボディ剛性と安全性能をダッシュ貫通6点式ロールケージで底上げしつつ、シームレス仕立てとしたロールバーパッドでインテリアへ見事溶け込ませる。クロモリ仕様で最小限の重量増としたアプローチも要チェックだ。
サーキットへウエイトを置くならフロントタイヤのキャパが高まる前後265サイズでも良いが、オールラウンダーを掲げるためにストリートでの扱いやすさへと拘り、18インチの245/45サイズ&リヤ265/40サイズ(ポテンザRE71R)をチョイスした。ホイールはボルクレーシングZE40(F8.5J-18+48 R9.5J-18+50)だ。
外装は、風洞実験のデータをもとに、リヤのダウンフォースを高めたハイフロートランクスポイラーとスワンネックGTウイングをインストール。ジオメトリー最適化やフットワークと併せて、S2000のポテンシャルを余すことなくトラクションへと変えていく注目の空力チューンだ。
K1ラボラトリー板橋啓一代表いわく「技術力アピールや速さ追求のデモカーではなく、これまでに培ってきたノウハウを結集して自分が乗って楽しい1台に仕上げたつもりです。2.2L化したエンジンはシングルスロットルの限界ともいえるポテンシャルを発揮しつつ、壊れない安心感と乗りやすさが味わえます。コントローラブルで頼もしいフットワークとの相性もバツグンですね」とのこと。
ワイドボディ化や空力チューンなどといった速さの上乗せ手段を多数残しつつ、多くのユーザーにとって参考になるナロー(ノーマル)フェンダーのままで一線級の速さへと導かれたオールラウンダー。愛車の楽しさ引き出しに行き詰まったなら、百戦錬磨のチューナーが、S2000を愛するひとりのオーナーとして考えた理想形を参考にしてみてはいかがだろうか。
●取材協力:K1ラボラトリー 大阪府摂津市鳥飼中2-1-99 TEL:072-650-3580
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