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【陶酔させ満たしてくれる】ケーターハム・スーパーセブン1600へ試乗

掲載 更新 19
【陶酔させ満たしてくれる】ケーターハム・スーパーセブン1600へ試乗

英国ならキットカーとして購入も可能

text: Alan Taylor-Jones(アラン・テイラー-ジョーンズ)

【画像】ケーターハム・セブン・シーズ 全62枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


家の中から出られず、青い空と太陽を眺めている読者も多いはず。ひと目を気にせず思い切り運転したいと、ウズウズしているクルマ好きも少なくないだろう。

ネットショップで、プラモデルやレゴ・ブロックに手を出すのも悪くない。でも空いたガレージを持っていれば、英国ならキットカーを手に入れるという方法もある。ケーターハム・スーパーセブン1600だ。

英国ではケーターハムから、クルマのコンポーネント丸ごとを自宅へ送ってもらえる。375ポンド(5万円)を追加で払えば、必要なツールも送ってくれる。組み立てに要する時間は、通常80時間から100時間ほど。

自ら組み立てる自信がないのなら、2395ポンド(32万円)でケーターハムが組み立ててもくれる。クルマは登録済みとなり、すぐに乗れるカタチで最寄りのディーラーへ届けられる。

今回試乗するスーパーセブンをご紹介しよう。スズキ製3気筒を載せたスプリントとスーパースプリントに続いて登場した、レトロをテーマにしたケーターハム・セブンだ。

ベースとするのは、4気筒の270と呼ばれるモデル。フロントタイヤを隠すのはサイクルフェンダーではなく、トラディショナルなフレアタイプ。レトロ感を強めるため、スペアタイヤをリアに背負っている。価格は通常の270より、わずかに上乗せとなる。

ツイン・スロットルボディには、K&N社製のエアフィルターを装備。元気な吸気ノイズが耳に届く。

レトロ感を漂わせるレザーシートは黒が標準。他の色はオプションで選べる。ウッドリムのモトリタ製ステアリングホイールも、オプションではある。

これほど情報量の多いスポーツカーはない

シャシーのサイズは2種類。標準のものと、SVバージョンと呼ばれる、ひと回り長く広いタイプ。背の高いドライバーへ、若干の余裕を与えてくれる。

自然吸気1.6Lのフォード・シグマ・エンジンはわずかにチューニングが入り、136psを6800rpmで発生。0-96km/h加速は5.0秒と素早い。スーパースプリントに積まれた抑揚の少ないスズキ製の3気筒ターボより、操る楽しさでははるかに上だ。

ボンネットの中に収まるツイン・スロットルボディのエンジンは、低回転域でのアクセルレスポンスの柔らかい感触が、レトロな体験にぴったり。5速MTはストロークが短く、機械的な質感が味わえる。

アクセル操作でエンジンの回転数は鮮明に高まり、リミッターまで一気に吹け上がる。吸気ノイズを徐々に大きく響かせながら。

ステアリングやブレーキにはパワーアシストがつかない。満足感のある走りを楽しむには、ドライバーにも準備と心づもりが求められるタイプだ。

かなりクイックなステアリングは、手のひらへ路面の細かな状況を刻々と伝えてくれる。コーナリング時はフロントタイヤのグリップ状況も、すべてが掴める。どのクラスの、どの価格帯のクルマでも、これほどの情報量を持つスポーツカーはない。

もちろん、スーパーセブンはアルピーヌA110ほど安楽ではない。高速域で耐えるための筋力は不要でも、低速域での操舵には筋力が必要。

ブレーキは普通の減速時なら、強い力を必要としない。しかし本域で攻め込んでいる時は、強く蹴飛ばさなければならない。現代のクルマのように、ABSやトラクション・コントロールはない。

必要以上に恐れず、運転を楽しめばいい

必要以上の緊張はいらない。少なくとも路面が乾燥していれば、細身のタイヤはしっかりグリップしてくれる。かなりプッシュしなければ、グリップの限界は迎えない。

コーナリング中にアクセルを深く踏み込みすぎても、テールスライドの挙動は掴みやすい。恐れなくて大丈夫。低い着座姿勢で楽しめば良い。

ボディロールはほとんどない。サスペンション・ストロークはかなり短いが、舗装の荒れた郊外の道でも、充分な柔軟性がある。メーカーによれば車重は540kgと軽量だから、ほかのクルマには真似できない鋭さで向きを変える。

快適性は見てのとおり。オプションのサイドガラスを装備しても、頭部の風の巻き込みは小さくない。オプションのファブリック・ルーフを装備しても、隙間風が入ってくる。風切り音も大きい。

高速道路を110km/hで走行すれば、エンジンの叫び声に重なり、タイヤのロードノイズが届く。車内での会話は楽しめない。耳栓をした方が良いかもしれない。リラックスして走りたいのなら、マツダMX-5(ロードスター)を選ぼう。

試乗車のシャシーは標準サイズだが、一回り大きいSVサイズを選んでも、実用的になるわけではない。クルマへの乗り降りすら簡単ではない。ルーフを外せば楽になるが、閉じたたままでは難しい。身長にもよるけれど。

スーパーセブンの車内は居心地が良いとはいえないだろう。SV版でも。シートは長時間座っていても平気だし、ボディサイドの囲まれ感も少ないが、間違いなく小さくて狭い。

背の低いドライバーには、シートの前方へのスライド量が不足気味。位置調整自体にも、かなりの力がいる。

ドライバーを陶酔させ満たしてくれる

2000ポンド(27万円)のオプションとなるベージュ色のレザーは見栄えが良いが、装備は必要最低限。メーターパネルはなく、ウインカーはトグルスイッチ。ライトやワイパーなど、すべてがスイッチ。1970年代のままといった感じだ。

インフォテイメント・システムもない。ラジオすらない。

荷室はシート後ろにある、ビニールカバーがされた小さなボックスだけ。プレススタッドを外して、カバーを開ける。布製のカバンなら2個入るかもしれないが、ルーフをしまうと余地はさほど残らない。

事故を避けるには、ドライバー自らのスキルが何より求められる。事故にあった場合、ドライバーを守ってくれる装備はほとんどない。どんなスポーツカーの基準で見ても、うるさく、実用性に欠け、安全性も乏しい。

ケーターハム・スーパーセブンを購入するのに、分別のある理由はいらない。スポーツカーの運転を全身で楽しみ、強く体感するために買うクルマだ。すべての弱点とリスク、可能性を理解したうえで。

多くのドライバーにとって、マツダMX-5(ロードスター)の方が、選択肢としては適している。スピードや生々しさで及ばなくても、より手頃な価格で、楽しいドライブが味わえる。しかも、人間の乗り物らしい安全性と快適性が付いてくる。

マシンと完全に一体となり、息を合わせながらドライブしたい、熱烈なエンスージアストの選択肢がケーターハム・スーパーセブン1600。ドライバーを陶酔させ、満たしてくれる、ほかに類を見ないスポーツカーだ。

ケーターハム・スーパーセブン1600(英国仕様)のスペック

価格:3万9665ポンド(535万円)
全長:3180mm
全幅:1575mm
全高:1090mm
最高速度:196km/h
0-100km/h加速:5.0秒
燃費:-
CO2排出量:-
乾燥重量:540kg
パワートレイン:直列4気筒1595cc
使用燃料:ガソリン
最高出力:136ps/6800rpm
最大トルク:16.8kg-m/4100rpm
ギアボックス:5速マニュアル

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みんなのコメント

19件
  • ハチロクとかのコメントでメーカーは快適装備省いても良いから軽量なFR出せだとか言う人がいるけど、ちゃんとこれがあるじゃん。
  • そうそう、買いもしないのに◯◯を出して欲しいとかいうコメントが必ず出ますね。N-ワゴンの記事にマニュアルミッションを出して欲しいには笑いました。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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