11月23日(土)にレース1の予選・決勝が行われた『AUTOBACS 45th Anniversary presents SUPER GT X DTM 特別交流戦』。22日(金)の公式練習から好調ぶりを発揮していたDTM側のアウディRS5 DTM陣営は、予選でロイック・デュバル(BMC Airfilter Audi RS5 DTM)が2番手を確保したものの、レース開始前のレコノサンスラップでクラッシュ。予選16番手と苦戦したブノワ・トレルイエ(Audi Sport Japan RS5 DTM)は決勝でDTM勢最上位となる6位でチェッカーを受けた。
■トレルイエ“復活”。3年ぶりの日本戦、初のDTMマシンで6位入賞
2006年のフォーミュラ・ニッポン(現スーパーフォーミュラ)チャンピオンで、GT500でもチャンピオン獲得経験のあるトレルイエは、2011年までスーパーGTに参戦。その後はアウディのワークスドライバーとしてWEC世界耐久選手権などを戦ってきたが2016年以降はイタリアGTチャンピオンシップなどへの参戦が主で、日本でレースを戦うことはなかった。
また、トレルイエはルーキーテストなどに参加した経験はあるものの、DTMでの実戦でアウディRS5 DTMをドライブするのは、この特別交流戦が初めて。予選は16番手と後方に沈み、決勝レース序盤はライバルとの接触などもあり、一度は大きくポジションを落としてしまう。
「エキサイトしすぎないように心掛けていたけれど、それでもレース序盤にプッシュしすぎたようでリヤタイヤが厳しくなり始めてしまったんだ。できるだけ長くタイヤをもたせるつもりだったんだけどね」
こう明かしたトレルイエは、結果的にはコース上でもっとも遅い20周目にピットイン。ピット作業にミスがあったというが、「とにかく第2スティントでは序盤に激しく攻めすぎないよう気をつけた」とレース終盤での巻き返しを狙っていた。
そして、そのトレルイエに味方するかのようにレース残り8分というタイミングでセーフティカーが導入された。
「これは『全力でいけ!』というサインだと思ったね」とトレルイエ。
「(セーフティカー退出直後の)ダンロップコーナーへは集団で飛び込むことになり、なにかが起きてもおかしくないと思って、イン側をキープするようにしていたんだ」
「僕自身はベストなタイミングでブレーキを踏んだと思ったけれど、前を走っているロッキー(マイク・ロッケンフェラー)は予想よりも早くブレーキを踏んできた。そのとき、僕はもうコーナーにアプローチし始めていて、ハードブレーキングしたけれどタイヤをロックさせてしまい、接触を避けられなかった」
「ロッキーをスピンさせることにはならないだろうと思っていたんだけどね……。彼には申し訳なかったが、レーシングアクシデントとの裁定も受けたし、レースではよくあることだ」
「そのあと最終的に、DTM勢のなかで最上位フィニッシュすることができた。レースを満喫できた1日だった。アウディRS5 DTMでの初レースを堪能したよ。特にセーフティカー明けは信じられないくらいの速さを発揮できた」
「3年ぶりとなる日本でのレースで、こんなリザルトを手にできるなんて思いもしなかったよ!」
トレルイエに追突される形となったロッケンフェラーは、それでもDTM勢3位となる13位でチェッカーを受けている。
■予選2番手のロイック・デュバルはレース開始直前にクラッシュの不運
スーパーGT参戦経験もあるデュバルは、ウエットコンディションの予選でポールシッターのキャシディ(KeePer TOM’S LC500)に0.331秒差の予選2番手を確保。決勝に向けて好位置につけてみせた。
しかし、そのデュバルにはスーパーGTの“ウォームアップ走行”にあたるレコノサンスラップ中にアクシデントが襲った。
タイヤの皮むきをするべくウィービングを繰り返していたデュバルは、ダンロップコーナーに向かう直線区間でバランスを崩しハーフスピン状態になってしまう。
デュバルは完全にスピンする前に体勢を立て直したかに思われたが、結局そのままダンロップコーナーアウト側に設置されたバリアに激突。マシンフロントに大きなダメージを負ってしまい、レース1不参加を余儀なくされた。
クラッシュする直前、デュバルが操るアウディRS5 DTMのフロントタイヤはステアリング操作に反応していないようにも見え、トラブルも疑われたが、レース後のミックスインタビューゾーンで集まった記者に対し、デュバルは「何があったんだって聞きたいんだろう?」と先手を打った。
「タイヤをスクラブするために周回していた。ただ2周目に入ったとき、少し雨量が多くなっていたんだ」
「コースインしてからターン10、ダンロップコーナーまではほとんどドライコンディションだった。だから、可能な限りタイヤにプレッシャーをかけようとしていた。しっかりスクラブできるように」
「そして……コントロールを失った。直線区間で普通にウィービングしていただけなんだ。それにもかかわらず、突如リヤ(のグリップ)を失った」
「ただ完全なスピンモーションに入るほどではなく、少し横滑りするような状況になったんだ。そして、グリップが回復して体勢を立て直したときにはコース外に飛び出していた。そこはライン上よりもっと滑りやすくてね……」
チームによればデュバルのマシンは24日(日)のレース2までには修復される見込み。
■2019年DTM王者ラストは予選不発も「クールなレースができた」と笑顔
前日に行われたウエットコンディションの公式練習2で、スーパーGT勢に約1秒差をつけてトップを奪ったレネ・ラスト(Audi Sport RS5 DTM)。明けた土曜日の予選でも好調ぶりを発揮するかと思われた。
しかし、そのラストはセッション終盤のアタック中、ダンロップコーナーへのブレーキングでタイヤをロックさせるなどミスがあり、22台中14番手と中団に沈んでしまった。
「難しい予選だった。トリッキーなコンディションのせいでミスがあり、完璧なアタックを決めることができなかった」とラスト。
迎えた55分+1周の決勝では、一時は7番手まで浮上したものの、、関口雄飛(au TOM’S LC500)や山下健太(WAKO’S 4CR LC500)、坪井翔(WedsSport ADVAN LC500)といったレクサス勢に対し、ホームストレートの加速で引き離され、オーバーテイクを許すなど、上位争いには食い込めず。
それでも最終的に8位、DTM勢としてはトップのトレルイエに次ぐ2位でチェッカーを受け、2019年DTM王者としての存在感を示した。
レース後、ラストは「僕たちはタイヤのデグラデーションに少し悩まされていたんだ」と苦戦の理由を明かす。
「レースペースに関して言えば、スーパーGTのマシンと戦えるだけのパフォーマンスを発揮できていない。彼らは驚異的なペースで、素晴らしいレースをしていたよね」
「明日に向けて、今日のデータからいろいろ学べればと思うけど、僕たち本来のパフォーマンスには程遠い状況で劇的に向上するとも思っていない。どのDTMマシンも同じようなポジションで戦っていたからね」
「それでも途中いいバトルができたし、冷静にレースを運ぶことができた。互いに尊重し合いながら、楽しみつつ、クールなバトルができたと思うよ」
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