■MTモード付きATのシフトパターンはなぜ各社で違う?
エンジン車に無くてはならない装置のひとつがトランスミッションです。トランスミッションの役割は、下限と上限のあるエンジンの回転数をギアやベルトによってさまざまな減速比に変え、クルマのスムーズな加速を実現するためのものです。
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現在クルマに使われているトランスミッションは、大きく分けるとマニュアルトランスミッション(以下、MT)とオートマチックトランスミッション(以下、AT)の2種類です。
MTタイプのクルマはアクセル、ブレーキ、クラッチの3つのペダルを備えており、それぞれのペダルとセンターコンソールにあるシフトレバーを操作しながら、クルマの加減速を手と足でコントロールします。
一方、AT車を運転する際のペダル操作は、アクセルとブレーキの2つだけで、シフトレバーは「P(パーキング)」「R(リバース)」「N(ニュートラル)」「D(ドライブ)」で主に構成されており、クルマを前進させる場合はDレンジに入れておけば基本的なシフト操作は不要です。
ある程度、誰にでも扱えて運転が楽なAT車は、現在の新車販売台数の98%を占めるほどに普及しています。
しかし、スポーツ走行をするときや、下り坂などでエンジンブレーキを使いたいときにはギアを任意で選択できるほうが都合が良いもの。そこで開発されたのが「MTモード付きAT」です。
MTモード付きATは、通常は自動でおこなわれる変速(ギアチェンジ)をドライバーの操作によって意図的に変えられるシステムです。
ステアリングの裏にあるパドルシフトや、センターコンソールやインパネにあるシフトレバーを「MTモードポジション」に入れ、前後に操作することでシフトのアップダウンをすることが可能です。
国産車の多くはシフトレバーを奥に倒すとシフトアップ(+)、手前に引くとシフトダウン(-)という設定になっていますが、国産車で唯一すべての車種が逆のシフトパターンになっているメーカーがあります。それがマツダです。
なぜマツダ車はシフトレバーのパターンを多くの国産車と逆にしているのでしょうか。マツダ広報部は以下のようにコメントしています。
「マツダ車が他社のシフトパターンと逆にし始めたのは、ブランドメッセージ『Zoom-Zoom』を展開した2002年ごろからです。その目的は、クルマを意のままに操れる『人馬一体』を実現するためです。
クルマは加速するときは後ろにG(重力)がかかり、減速するときは前にGがかかります。シフトアップ操作が奥に倒すタイプのシフトパターンでは、加速Gとは逆の方向にシフトを操作する必要があり、自然な操作とはいえません。
そのため、加速中は手前にシフトレバーを引きシフトアップ、減速中はレバーを奥に倒してシフトダウンすることで、違和感の少ないシフト操作が可能になります。なお、レーシングカーなどのIパターンシフトもマツダ車と同様のシフト操作になっています」
※ ※ ※
ちなみに、国産車だとスズキ「スイフトスポーツ」などのAGS車やトヨタ 新型スープラもマツダ車と同じ逆シフトパターンを採用しており、BMWやポルシェの一部車種など、走りにこだわりが強いメーカーのクルマにも同様の逆シフトパターンが採用されています。
それでは、国産車の多くがシフトレバーを手前に引くとシフトダウン、奥に倒すとシフトアップするようになっているのはなぜなのでしょうか。各社考え方に違いはあるかもしれませんが、今回は三菱自動車の広報部にその見解を聞いてみました。
「シフトレバーのポジションの並び方は、一般的には上からパーキング、リバース、ニュートラル、ドライブ、そしてローレンジになっています。
MTモード付きのATが登場する前は、下り坂などでエンジンブレーキを使うときは『L(ローレンジ)』を使う必要がありますから、ドライブのときよりもシフトレバーを手前に引く必要がありました。
そのため、エンジンブレーキを使うときはシフトレバーを手前に引くことが一般的であり、MTモード付きATでも『ー(シフトダウン)』を手前に操作することが自然だと考えたため、今のようなシフトパターンを採用しています」
※ ※ ※
マニュアルモード付きATのシフトパターンについては、各社さまざまな思想のもと設計されていることが分かりました。
なお、「手前に引くとシフトダウン」するタイプのマニュアルモード付きATでも、マツダ車やレーシングカーのように「手前に引くとシフトアップ」できるようにするパーツもアフターメーカーから販売されていることがあります。
その場合は、シフトパターンの表示も操作方法と同じように変更しないと車検には通らなくなりますが、法律にそって自分が操作しやすいようにカスタムすることで、自分のクルマをいつも以上に楽しい相棒にすることも可能です。
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