トヨタとスバルが共同開発した国産屈指のスポーツカー、新型GR 86とBRZがいよいよ登場。実はエンジンにさまざまな可能性があった!?
スバル版のBRZは7月29日に発表され、トヨタのGR 86も登場秒読みとなっている新型86/BRZ。スポーツカーの肝ともいえるエンジンが、従来の2Lから2.4Lへと排気量アップされたことでも話題だが、そのエンジンを巡ってはこれまで「ターボもあるのではないか?」とも取りざたされてきた。
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また、強まる燃費規制を受けて、将来的にはハイブリッドなど電動化を迫られるのは必至の情勢。
果たして、開発段階ではどのような選択肢があり、今後どのような可能性があるのか? 実際に新型モデルをすでに試乗・取材した自動車ジャーナリストの松田秀士氏が迫る。
文/松田秀士、写真/SUBARU、池之平昌信
【画像ギャラリー】ターボ化、HV化、EV化……国産屈指のスポーツカー 新型86/BRZの可能性
■新型GR 86とBRZがモアパワーの要望に応えた新エンジン
新型86/BRZに搭載される新開発の2.4Lボクサーエンジン
新型GR 86/BRZのエンジンは、これまでの水平対向4気筒2.0Lから同じ型式の2.4Lに進化し、最高出力と最大トルクはそれぞれ207ps/212Nm(6MT)から235ps/250Nm(MT&AT同値)へと進化した。
しかし、これまでにも新型のエンジンについてはさまざまな噂が囁かれていた。なかでも一番期待を込めて噂されていたのがターボ化だろう。現行モデルの発表試乗会時に今回の試乗会と同じ袖ヶ浦フォレストレースウェイを走って感じたのが「もっとパワーが欲しい!」だった。
現行トヨタ 86。試乗の際はパワー不足を感じた
ヘヤピンなど2速ギアを使用してコーナリングするタイトコーナーではパワーオーバーステアに持ち込みドリフトで振り回せる。
しかし、3速ギヤを使うピット裏コーナーではトラクション・コントロールをOFFにしていても途中でパワー不足によりリヤタイヤがグリップを取り戻してしまう、という中途半端なフラストレーションを経験したものだった。
ま、筆者はD1レーサーではないからそのあたりのテクニック不足は否めないのだが、当時のトヨタ側主査の多田氏は「ゴルフで100を切れる人なら誰でもドリフトが楽しめるクルマを目指した」と公言していたから、もっとパワーが欲しかった。
プリウス用のエコタイヤを標準装着し、コーナリング限界を下げていても雨の日以外振り回すにはトルク不足は否めなかった。久々にFRらしいハンドリングを楽しめるクルマの出現には沸いたものだったが、次期モデルにはモアパワーが待ち望まれていたのだ。
■搭載は難しかった? ターボ化を巡るさまざまな事情
新型86/BRZのカットモデル。これを見ても、エンジン回りのスペース的余地はほぼなく、ターボ化なども難しいであろうことが推察される
特に、同じ水平対向4気筒2.0LターボエンジンはすでにWRX STIに搭載されていて、プラットフォームも基本は同じ構造。すんなりキャリーオーバーできるのでは? と誰もが考えたものだったが、その希望は今回満たされなかったのだ。
もし、これが可能だったらターボを備えるEJ20型エンジンのそのパワーは308ps/422Nmと強力! しかし、2019年EJ20型は生産終了となり同時にWRX STIも販売を終了し、その夢は潰えた。とはいえS4に搭載されるFA20型も同じ2.0Lターボで300ps/400Nmと申し分ない出力。
しかし、熱の問題などスペース的にも難しいようだ。ボンネットに収まらないともいわれている。デザインもしかりだがコスト的にかなり上がってしまうこともネックとなったのだろう。
新型では今回新型レヴォーグで培ったインナーフレーム構造の製法を多く取り入れ、ハイテン鋼などの使用量を増やして高剛性化や衝突安全性も強化してきている。しかし、300psを超える大きなパワーアップともなれば、安全性のさらなる充実も視野に入れなくてはならない。
こうなるとセグメントを超えたモデルにもなりかねず、86/BRZというコンセプトから逸脱したモデルになりかねない。なるほど、考えれば考えるほど新型の自然吸気2.4L化はちょうど良いレベルといえなくもないのだ。
それを証明するかのように、タイヤもミシュラン・パイロットスポーツ4(18インチのみ)とハイグリップされ、ファイナルギヤ比もMT4.300→4.100/AT4.100→3.909に変更されていながらも、右足で振り回せるレベルのトルクを発生している。
■将来的なHV搭載は「あり得ない話ではない」
写真は先代XVハイブリッド。新型86/BRZでも、トヨタのシステムを流用したHV化はあり得る?
では、少し見方を変えてみよう。今回の試乗会ではスバル/トヨタの開発陣を交えたグループインタビューも実施され、上記のような質問も展開されたのだが、筆者はトヨタの直4エンジンが搭載できるのか? という質問もぶつけてみた。
直4にしてBMWのように多少角度をつけて寝かせればターボユニットを組み込むスペースも生み出せるのではないかと。
ただし、クランク軸高も変わるから背後に直結されるトランスミッションの高さも変わるだろうし、ボクサーエンジンを前提としたプラットフォームでは大幅な変更が必須となるだろう。
そこでターボよりもトヨタのハイブリッドシステムを使った86/BRZというのはできないのだろうか? 過去にスバルはXVでホンダと同じサプライヤーのハイブリッドシステムを流用していた実績がある。
これに関してはトヨタとの協業という見地からありえないことではないという主旨のコメントが返ってきた。
つまりは将来的に排ガス規制などのハードルが障害になり得ることはどのスポーツモデルにも共通した悩みなのだ。しかし86/BRZというモデルパーソナリティの立場から、やはりユーザーの胸を打つパワーであり、ハンドリングであり、続けることが最重要テーマ。
そのための電動化とはどのようなものなのだろうか? すぐに頭の中には浮かばないが、考えてみると面白い。
新型86/BRZは現在のところ、2.4Lエンジン一本だが、将来的にはハイブリッドも含めた電動化の新しい提案にも期待
ここからは想像ではあるが、日産のe-POWERのようなシリーズ式ハイブリッドで後輪の軸上にインバーター直結のモーターを設置。
エンジンはそのままボクサーエンジンをフロントにマウントし発電モーターを直結。プロペラシャフトがなくなるので床下をフラットに2kWhレベルのリチウムイオンバッテリーを搭載して低重心化。その横を電動モーターまでハーネスを這わせる。
インバーター&電動モーターの冷却用ラジエーターの設置場所が考え付かず……。
まぁこれは夢の夢ですが。つまり、電動化となるとバッテリーEVにするのが妥当だろう。それはそれで乗ってみたいと思う。
さて、夢の電動化はさておいて、やはりターボで武装したコンプリートモデルがSTIあたりからリリースされることを個人的には夢見よう。
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