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【その名は紅旗「H9」】日本初販売の純中国車 デザインに思い 「白銀比」とは

掲載 更新 89
【その名は紅旗「H9」】日本初販売の純中国車 デザインに思い 「白銀比」とは

中国の「紅旗」どんなブランド?

text:Kumiko Kato(加藤久美子)

【画像】H9は日本発売間近?【紅旗H9とS9を見る】 全55枚

editor:Taro Ueno(上野太朗)

紅旗(ホンチー)とは中国第一汽車集団公司(第一汽車:FAW)が生産する高級車ブランド。

第一汽車は1953年に中華人民共和国で最初に設立された国営自動車メーカーで、乗用車が登場したのは1958年。

「東風」と「紅旗」の2ブランドを同時発表しており、1958年に納車されたのが1号車「東風」(CA71)、翌1959年9月に2号車「紅旗」(CA72)が納車されている。

CA72発表時から使われているのが、現在も続く「紅旗」エンブレムである。独特の書体で書かれた「紅旗」の文字は、中国建国の父、毛沢東によるものだ。

現在、「紅旗」には大きくわけて2つのシリーズがある。

1つは「Lシリーズ」だ。これは1960年代に誕生した紅旗 CA770からデザインの着想を得ており、重厚で伝統的なスタイルが特徴。

Lシリーズにはホイールベースの異なるL5、L7、L9の3モデルが用意されており、CA7600Lという型番が与えられているL9は、2009年に戦勝パレードにて胡錦濤前国家主席が乗る閲兵車として初めて公の場に登場した。

ルーフは後部座席の位置にサンルーフと4本のマイクが備えつけられており、そこから胡錦濤前国家主席は立って挨拶をおこなった。

3800mmのホイールベースを持つL9に比べ、少し短めなホイールベースを持つのがL7やL5だ。

なかでも最も一般的なモデルがL5で、これは購入に際しての諸々の厳しい審査に通れば一般市民でも購入が可能となっている。ちなみにすべてのモデルに6.0L V型12気筒エンジンが搭載されている。

もう1つが今回、日本初上陸を果たしたH9をフラッグシップとする「Hシリーズ」だ。

こちらはよりモダンな見た目を持つシリーズで、セダンやSUVなどのバリエーションも豊富。

セダンはH5、H7、H9の3モデル。SUVはE-HS3、HS5、HS7、そしてE-HS9が存在する(E-がつくモデルは電気自動車)。

世界最速レベルのハイパーカーも発表

紅旗といえば歴史と伝統のある高級車というイメージが長かったが、2019年9月に開催されたフランクフルト・モーターショーにはハイパーEV「紅旗S9」を出展し世界を驚かせた。

見た目のインパクトも凄いが、最高出力1400ps超、0-100km/hわずか1.9秒で最高時速は約400km/hと世界最速レベル。

2021年2月上旬、中国/アメリカ/イタリアの3国の政府や企業によって生産開始の正式な契約が発表されている。

ちなみに、Sシリーズでデザインの総指揮を行うのは、アルファロメオ156やアウディTTなどのデザインを手がけたデ・シルバ氏だ。自動車デザインの世界的巨匠といえる人物である。

話をH9に戻そう。

今回、日本に上陸したH9は48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載する2L直列4気筒ターボと、3L V型6気筒スーパーチャージャー付の2種類のパワートレインが用意されている。

2Lモデルは3グレード、3Lは5座と4座の2グレードがあり、いずれも第一汽車オリジナルエンジンを搭載する。

中国での販売価格は2Lモデルが30万9800元(497万6000円)から、3Lモデルが45万9800元(738万4500円)から。

最上級の3.0Lは4人乗りで、53万9800元(878万6000円)である。

「H9」3台が日本上陸を果たす

この度日本で販売されることになった紅旗H9は紅旗シリーズの最上級車種。

一般販売される初めての純中国製乗用車となる。中国の紅旗ディーラーで購入して日本へ輸入する「並行輸入」ではなく、少数であってもメーカーである第一汽車からの正規輸入車という形になる。

輸入元の話によると、H9の輸入はすべて第一汽車が管理しており、並行輸入がおこなわれることはない(というよりも、メーカーが拒否の)様子。

2019年夏以降に中国で販売が開始されたH9は本国内で大人気となっており納車にも時間がかかっているそうだが、日本へは安定したデリバリーがおこなわれる予定。価格やグレードなどは間もなく発表されるだろう。

テレビ朝日のニュース番組「ワイドスクランブル」で30分にわたって特集されたこともあり、紅旗の知名度は一気にアップ。

筆者のもとにも、SNSや共通の知人を通じて個人や企業など10件以上の問い合わせがあって驚いている。

独特のデザインも注目を集めるH9。デザインしたのは中国人デザイナーの丁楊峰(てい・ようほう)氏である。

シリーズの最上級車種らしく、豪華で威風堂々としたスタイルが印象的で滑らかなルーフとCピラーのラインが美しい。

筆者が取材した車両は2Lモデルだったので、ボディカラーは単色だったが、3Lモデルの上位グレードは2トーンカラーを採用しており、さらに威厳と風格を兼ね備えたスタイルとなっている。

デザインに込められた深い思い

グリル周りをはじめ、黄金比が基準の欧米とは異なり、東洋デザインの基本となる「白銀比」(シルバーレシオ)を用いた設計となっている。

「白銀比」という言葉を聞いたことはあるだろうか?

白銀比という言葉にはなじみがなくても、「1:ルート2」という比率(正方形の1辺とその対角線の長さが1:ルート2となる)は、日本を含む東洋では古来よりなじみがある、というよりも染みついているといった方がいいだろう。

白銀比に基づいて正方形とそれに外接、内接する円を基調としたデザインはH9のフロントグリル周辺をはじめ、随所に採用されている。

エンジンフードからグリルに伸びる中心線は「地球の罫線」、14本のタテ線は流れる滝をイメージしており、白いラインのデイライトは「龍のひげ」を表しているという。

テールライト周りのデザインも非常にユニークだ。

こちらもフロントグリル同様、全体的な構造は「白銀比」をベースに外接円と正方形で構成されている。

そしてテールランプ周りは左右に4本ずつ合計8本の横の短いラインで彩られており、これらの短い横ライン、実は「紅旗」を表している。

紅旗エンブレムにも使われている「旗」を横にした形でデザインされているのだ。

毛沢東が中華人民共和国の建国宣言をおこなった場所でもある北京の天安門にも、同様に門の両端に4本ずつ紅旗が掲げられているが、紅旗H9のテールライト周りもそのイメージなのだろうか?

紅旗H9は内外含めすべての設計を第一汽車だけでおこなった初めてのモデルとなるフラッグシップカーである。

このモデルからは、その自信と誇りを強く感じることができる。

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